今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2025年1月号

・谷川俊太郎+覚和歌子による【対詩】「いつかなじんだ靴を履いて」が掲載。今作は、先月亡くなった谷川俊太郎による遺作となる。

・蓮實重彦×千葉雅也による対談「驚きの連鎖を生きる」、平野啓一郎×九段理江による「現実を抉るパラレルワールド」が掲載。

・市川沙央による新連作「良心的兵役拒否(1)」は、くじ引きで徴兵される者と、断る者。「有事」のこの国をアイロニカルに描き出す、21世紀の戦記文学。同じく小山田浩子の新連作「からの旅(1)」も同時掲載。空の旅、日本からの旅。ドイツの都市K、大聖堂のステンドグラスが呼び起こす歴史と、幾層もの記憶。

・創作では、上田岳弘「扉」、角田光代「絶望退治」、桐野夏生「聞こえたり聞こえなかったり(第3回)」、滝口悠生「歯ごたえと喉ごし」、保坂和志「死んだ友達」、山田詠美「お小水とお通じ」が掲載。

・【追悼・谷川俊太郎】として、伊藤比呂美 「口承の谷川さん」、尾崎真理子「「詩」と「死」に就いて」、ブレイディみかこ「その世とこの世とあの世」、吉増剛造「谷川俊太郎、ひとりぽっち」、最果タヒ「あなたに好きな詩人がいること」とそれぞれが日本現代詩における巨人を追悼する。

文學界 2025年1月号

・【特集 文學界書店2025 ―こだわり店主の推す3冊】として、飯間浩明/今尾恵介/角幡唯介/斧屋/苅部直/磯達雄/ 金子由里奈/星野概念/岡﨑弘子/辛島デイヴィッド/佐藤圭一/ 朝比奈秋/姫乃たま/原武史/武塙麻衣子/丸山ゴンザレス/ 田中ゆかり/谷頭和希/藤村シシン/藤原辰史による、おすすめ本を一挙公開。

・【創作】では、吉本ばなな「ヨシモトオノ」、市川沙央「女の子の背骨」が掲載。

・【追悼 谷川俊太郎】として、俵万智「言葉を疑う人」、最果タヒ「詩人として存在すること」、久谷雉「「詩人のふり」をした者について」、高橋睦郎「同月同日生まれ―谷川俊太郎さんを悼む」。

・【モンゴメリ生誕百五十年】として、松本侑子による「『赤毛のアン』シリーズのケルトとキリスト教」を掲載。

群像 2025年1月号

・「第77回野間文芸賞」受賞作は、中村文則『列』。受賞のことばと選考委員の奥泉光、佐伯一麦、多和田葉子、町田康、三浦雅士による選評が掲載。「第46回野間文芸新人賞」受賞作は、豊永浩平『月ぬ走いや、馬ぬ走い』。受賞のことばと選考委員の小川洋子、川上弘美、川上未映子、高橋源一郎、長嶋有による選評も。

・柄谷行人による特別エッセイ「風景の再発見 柳田国男と新渡戸稲造」が掲載。

・【『無形』刊行記念小特集・井戸川射子】として、川上弘美×井戸川射子による対談
「発見の言葉がある小説」、阿部公彦による書評「毛細血管状の豊饒」、井戸川による本の名刺「私の見たことない形」。

・【小特集・MPC】として、上出遼平による冒頭抄録「MIDNIGHT PIZZA CLUB」、仲野太賀×阿部裕介、聞き手=伊賀大介による座談会「Re:上出遼平 旅の裏側、今度は僕らが語ります!」。

・創作では、奥泉光「江戸の錬金術師」、金原ひとみ「自己愛的な変質者のレクイエム」が掲載。

・長﨑健吾による「計画する先祖たちの神話」、原武史による「日吉アカデミア一九七六」がそれぞれ最終回を迎える。

すばる 2025年1月号

・【小説】では、桜木紫乃「兎に角」、石田夏穂「小人二十面相」、上村亮平「熾火」が掲載。

・【特集:読書計画2025】として、対談では、朝井リョウ×三宅香帆「読書に必要なのは三つの余白」、西村紗知×袴田渥美「自分ひとりの「読み」のために」、インタビューでは笹沼颯太「本を読む世界を譲り渡す」、エッセイでは小山田浩子「本棚」、奈倉有里「最初に読めなかった本」、斜線堂有紀「「一生やろうよ文学フリマ、そしたら一生書くからさ」」、大田ステファニー歓人「みんなの読書」、論考では、千木良悠子「橋本治を読んで「本の読み方」を考える」、宮崎智之「エッセイを批評する」を一挙掲載。

・赤坂憲雄による新連載「宮崎駿の詩学──アニメ的想像力を物質化するために」がスタート。

・【すばる海外作家シリーズ】では、索南才譲「辛哈那登にて」(趙子旋(※旋は正しくは王偏に旋)/訳・解説)が掲載。索南才譲のインタビューも併せて。

以上、2024年12月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。