今月発売された文芸誌4誌の目次をざっと確認して、誰が何を書いているかをお知らせする定点観測記事。どれを読めば良いかの指針にどうぞ。
今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。
新潮 2024年12月号
・【祝・ノーベル文学賞!】として、今年ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンをはじめ、韓国文学作品を数多く翻訳する斎藤真理子による愛に満ちた決定版作家紹介文「物語の中で木と鳥が人を見ている――ハン・ガンの世界を歩く」を掲載。
・東浩紀と先崎彰容による対談「本居宣長とルソー――文学の価値を再定義する」では、十八世紀に生き、共通点の多い二人の思想家を通して家族の概念や沈黙の意味を捉え直す。
・創作では、小池水音「あなたの名」、日比野コレコ「愛すのぢゃーにぃ」、高山羽根子「デヴァターとアープ」が掲載。
・【追悼・福田和也】として、島田雅彦「特異批評家、身罷る」、柳美里「隔たりと瘢痕」、大澤信亮「福田和也先生と私」とそれぞれ三人が追悼文を寄せる。
文學界 2024年12月号
・「2024年下半期同人雑誌優秀作」は、あまざき葉「掌編小説集 ゆれあうからだ」。
・【創作】では、辻原登「鋸山奇譚」、沼田真佑「白き使者」、王谷晶「かう人」、旗原理沙子「犯罪者と私」、岩城けい「フェアリー・ブレッド」が掲載。
・【新ノーベル賞作家論】として、ハン・ガンについて平野啓一郎による「今という時代に受賞すべき作家の受賞」。
・【特集 共鳴する小説と映画】として、平野啓一郎×石井裕也による対談「原作と映画の共同的ライバル関係」、金原ひとみ×山中瑶子「「わからない」と対峙しつづける」、児玉美月による批評「日本映画が問う命の分別」を一挙。
群像 2024年12月号
・乗代雄介による中篇「二十四五」が一挙掲載。
・大谷能生による新連載「音と言葉のデジタリティ」がスタート。
・【小特集・古典の愉しみ】として、いとうせいこう×古川日出男による対談「バトンを勝手に拾う 古典と相生する文学」、古川日出男による本の名刺「超うつほ創作秘話」、安田登「「うた」の世界を生き、「うた」の視点で見る」、毬矢まりえ×森山恵による創作能「らせん創作・夢幻能〈サフラン天女〉 ウェイリーの「謎の箱」から」。
・【『ショットとは何か 歴史編』刊行記念特別対談】として、映画監督の濱口竜介と蓮見重彦による対談「「見る」ことと「見逃す」こと」。
・岩内章太郎「星になっても」、釈徹宗×若松英輔「「宗教の本質」とは?」 、福尾匠「言葉と物」がそれぞれ最終回を迎える。
すばる 2024年12月号
・【小説】では、大谷朝子による「マイ・スイート・ホーム」、水原涼「筏までの距離」が掲載。
・【『あのころの僕は』刊行記念対談】として、小池水音×又吉直樹「世界と自分のずれを描く」。
・奥山裕介による新連載「トランスプランターズ――〈果樹園〉を継ぐ者たちのデンマーク文学」がスタート。
・青山七恵「記念日」、谷崎由依「百日と無限の夜」がそれぞれ最終回を迎える。
以上、2024年11月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。
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