今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2024年9月号

・野田秀樹による長編戯曲「正三角関係」、円城塔「偶像」、島田雅彦「Ifの総て」(新連載第三回)が掲載。また、五月に逝去したノーベル賞作家アリス・マンロー、唯一の長篇とも呼ばれる連作短篇集から「女の子と女たちの生きかた」「エピローグ フォトグラファー」二篇を初邦訳。小竹由美子「追悼 アリス・マンロー/これからマンローをどう読むか」も併せて。

・【論考】では、國分功一郎「天皇への敗北――戦後日本の民主主義における憲法の物語について」、綿野恵太による実体験の批評ドキュメント「ひろゆきに論破されてみた件」。

・【対談】では、細野晴臣×中沢新一「精神の音楽を追い求めて」、飴屋法水×岡田利規「『個』と『種』を束ねる想像力」が掲載。

文學界 2024年9月号

・【特集 短歌と批評】として、歌会「短歌を詠み、短歌を読む―十三名による大歌会」が掲載。さらに、丸山るい、丸田洋渡、山中千瀬、工藤吹、山本まとも、永井亘、橙田千尋、安田茜8人による短歌7首連作も。

・【創作】では、川上弘美「くぐる」、村田沙耶香「残雪」、戌井昭人「紙飛行機」が掲載。

・先日発表された「第171回芥川賞」は、朝比奈秋『オオサンショウウオの四十九日』と松永K三蔵『バリ山行』が同時受賞となった。恒例の受賞者による特別エッセイ、朝比奈秋「業と徳にまみれて」、松永K三蔵「妹よ」が掲載。また、江南亜美子による朝比奈の作家論『「わたし」はひとつのポータル 第6回』と吉田大助による松永の作家論がそれぞれ掲載。 さらに、川上未映子による新選考委員インタビューも。

・頭木弘樹による新連載「痛いところから見えるもの」がスタート。

・音楽誌『MUSICA』との共同インタビュー、尾崎世界観「書き続けるための愛と憎」。

群像 2024年9月号

・【特集・日/戦争/常】として、永井玲衣×八木咲による新連載「せんそうって」、石井美保「茶碗と骨」、いとうせいこう「「国境なき医師団」をそれでも見に行く 戦争とバングラデシュ編」、前田啓介「「同郷二人」の「沖縄決戦」――八原博通と岡本喜八における「事実」と「戦後」」とノンフィクション三本、大山顕による論考「平和記念資料館は“カメラ”である――広島を貫く光軸と祈りの方角」、石沢麻依「透明化される現在を前にして」、酒井啓子「「私の命は大事だけど、あなたの命は死の近くにある」」とエッセイ二本を一挙。

 さらに、島田雅彦×奈倉有里「エッセイのたくらみ、詩という祈り」、保坂和志×山本浩貴「小説が生き延びるために」と特別対談も。

・【創作】では、井戸川射子「島の成り立ち」、小野絵里華「夜のこども」、グレゴリー・ケズナジャット「痼り」、牧田真有子「水くぐりの夜」。

・全卓樹による新連載「わたしたちの世界の数理」、竹田ダニエルの新連載「リアルなインターネット」、三宅香帆の新連載「夫婦はどこへ?」がそれぞれスタート。

・丸山俊一「ハザマの思考」が最終回を迎える。

・【芥川賞受賞記念】として「松永K三蔵への15の問い」が掲載。

すばる 2024年9月号

・【小説】では、井上荒野「きらいじゃないけど飽きたんだ」、中西智佐乃「長くなった夜を、」、川野芽生「ゴーストとお茶を」、佐倉ユミ「蛹の家」、辛島デイヴィッド「デハイドレーション」(連作 断識芸人)が掲載。

・姜尚中による新連載「岸信介の思想と行動」がスタート。

・「第48回すばる文学賞」予選通過作が発表。

・今年4月に同志社大学で行われた綿矢りさによる講演の様子を「自分の声を聞くこと」として掲載。

・最果タヒ「きみを愛ちゃん」が最終回を迎える。

以上、2024年8月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。