今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2025年4月号

・【創作】では、千葉雅也による新連載「マイネームイズフューチャー」がスタート。著者初の長篇エンターテインメント作品。筒井康隆「普通の生活」、三国美千子「ズッキーニ病」、市川沙央「良心的兵役拒否」(連載第二回)、小山田浩子「からの旅」(連載第二回)、高山羽根子「レインボー・バレー」。

・【批評】では、『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』(河出書房新社)で「紀伊國屋じんぶん大賞2025」を受賞した気鋭の哲学者=批評家・福尾匠が綴る、水の都での五日間「現代美術不案内――ヴェネチア・ビエンナーレ2024訪問記」。

・レイチェル・アヴィヴによる長篇評論「アリス・マンローのパッシヴ・ヴォイス」(小竹由美子訳)が掲載。ノーベル賞作家マンローは、パートナーによる娘への性的虐待を知りながら、まるで対応してこなかった――綿密な周辺取材と著作の精読によって「短篇の女王」の隠された実人生に光を当てる、第一級の文芸ジャーナリズム。

文學界 2025年4月号

・【創作】では、大濱普美子「軒下の祈り」が掲載。

・【名手の短編】として、筒井康隆「偽眼」、町田康「猫平の話」、吉村萬壱「臍」、沼田真佑「いつでも、誰とでも」、高橋弘希「空き家」、高瀬隼子「妖精の羽ばたき」の六篇を一挙。

 さらに、奥泉光×高山羽根子の対談「短編はアイディアと音色」でカフカ、乱歩から安部公房、SF、翻訳ミステリーまで多彩な短編の魅力を語る。

・小林信彦×小林泰彦による新連載「和菓子屋の兄弟」がスタート。「第1回 江戸川乱歩さんのこと」作家の兄とイラストレーターの弟。原点は「ヒッチコック・マガジン」だった。

・「第55回九州芸術祭文学賞」が発表。最優秀作はきのみやはる「雨粒のゆくえ」。村田喜代子、小による選評も併せて。

群像 2025年4月号

・【『磯崎新論』刊行記念特集】として、浅田彰×田中純による対談「磯崎新と「日本近代建築史の終わり」」。聞き手を田中純自ら務める、岡﨑乾二郎のインタビュー「シン・イソザキがヨミがえる」。

・片瀬チヲルによる中篇「そこで火を焚く」。【掌篇シリーズ】では、筒井康隆の「冬」、【創作】では、くどうれいん「A701」と長野まゆみ「C&L」が掲載。

・【震災後の世界14】として、古川日出男「太陽、月、キカイダーその後」、川内有緒「ロッコク・キッチン 浜通りでメシを食う」。

・新田啓子による「セキュリティの共和国――戦略文化とアメリカ文学」が最終回を迎える。

・神野藍による随筆「一分間の悪事」。

・小川公代による新連載「ジャッジメンタルな時代 ネガティヴ・ケイパビリティ考」と野崎歓による新連載「あのころの面影 仏文回想記」がそれぞれスタート。

すばる 2025年4月号

・【すばるクリティーク】では、奥憲介「「新しい人」の世界文学――大江健三郎・アレクシエーヴィチ・尹東柱」。

・【村田沙耶香『世界99』刊行記念エッセイ】として、ジャンルーカ・コーチ「村田沙耶香の銀河の空飛ぶ円盤」、竹森ジニー「「本当の本当」を探す旅」、アストギク・ホワニシャン「この世界をアルメニア読者も知っている」が掲載。

・【小説】では、小山内恵美子「人心地」、辛島デイヴィッド「トウキョウ・ユニバース・シティ!」(連作 断識芸人)が掲載。

・池澤夏樹による新連載「天路歴程」、角幡唯介による新連載「裸の大地 第三部 エルズミア」、渡邉裕規の新連載「ナベのくちから」がそれぞれスタート。

以上、2025年3月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。