今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。
新潮 2025年2月号
・【特集 生誕一〇〇周年 よみがえる三島由紀夫】として、生誕百周年を迎える三島由紀夫を特集。平野啓一郎による講演録「三島由紀夫の絶望の先へ」、井上隆史の論考「『金閣寺』担当編集者の葛藤――菅原國隆宛書簡を読む」のほか、「特別企画1:三島由紀夫への手紙」で川本直「拝啓、三島由紀夫」、九段理江「私へ」、佐藤究「残された〈結び目〉の謎」、島田雅彦「「文化の不満」をどう解消するか」、田中慎弥「陳腐な死に方の陳腐でないあなたへ」、中村文則「別の「生を」」を掲載。
「特別企画2:三島由紀夫の文」では、石井遊佳/石沢麻依/市川沙央/伊良刹那/上田岳弘/宇垣美里/大田ステファニー歓人/角幡唯介/黒田夏子/佐伯一麦/向坂くじら/杉本博司/鈴木涼美/先崎彰容/辻原登/豊永浩平/永井みみ/長野まゆみ/乗代雄介/蓮實重彦/東出昌大/古川日出男/宮内悠介/村田沙耶香/森村泰昌/山田詠美/吉田大八と総勢27人が寄稿。また、随筆ゴア・ヴィダル「三島の死」(川本直訳)、横尾忠則「創造と礼節」も併せて。
・【創作】では、アキール・シャルマ「ナラヤン家の人々」(小野正嗣訳)、小野正嗣「中野家の人々」、高山羽根子「アンザイレン」。
・平野紗季子×吉本ばななによる対談「食のフィールドワーカー」、津村記久子×島田潤一郎の対談「悲しみを乗り越えるために書く」が掲載。
文學界 2025年2月号
・【創作】では、小川洋子による『小箱』以来、実に6年振りの長編「サイレントシンガー」が掲載。
・鈴木涼美による新連載「小さなひと」がスタート。かつて母の娘だった私も、出産して娘の「ママ」となった。妊娠・出産を経て綴る、子育てのいま。
・【批評】では、昨年夏に始まった、2000~2015年の小説批評プロジェクトである町屋良平「小説の死後――(にも書かれる散文のために)―― 鹿島田真希の強靱、過剰、独創性と普遍性の輪郭線」が掲載。
・【詩歌】では、藤本玲未「静/電/気」が掲載。
群像 2025年2月号
・平田オリザによる「ことばと演劇」、百瀬文「くぼみにふれる マイ・マウンテン」、三木那由他「可愛い哲学」と新連載のエッセイがそれぞれスタート。
・【創作】では、くどうれいん「いくつもの窓」が掲載。円城塔による新連載「鳥のいない国」がスタート。
・【小特集・脱原発】として、村田喜代子による講演「『新古事記』創作秘話」、村田喜代子×川村湊による対談「3・11後に書かれた、あらたな「原爆文学」の誕生」が掲載。
・【ルポ】では、いとうせいこう「「国境なき医師団」をそれでも見に行く 戦争とバングラデシュ編・最終章」」。
・【批評】では、片岡大右「主婦的なるものの曖昧な存在論」と富岡幸一郎「保守のコスモロジー」。
・鹿島茂「第ゼロ次世界大戦」、宮内悠介「デビュー前の日記たち」がそれぞれ最終回を迎える。
すばる 2025年2月号
・金原ひとみによる新連載「アディショナルライフ」と高山羽根子による新連載「2022 Twenty twenty two」がそれぞれスタート。
・【特集:追悼 谷川俊太郎 踊る詩人、空へ帰る】として、池澤夏樹×尾崎真理子による対談「(おおいそぎの)谷川俊太郎総覧」、池澤夏樹の詩「トロムソ・モンタージュ」、田原のエッセイ「出逢い──谷川俊太郎を偲ぶ」、若松英輔のエッセイ「詩人の彼方、彼方の詩人」を一挙。
・【小説】では、昨年『メメントラブドール』で太宰治賞を受賞した市街地ギャオによる中篇「君が夢から醒めないように」が掲載。
・江國香織の「外の世界の話を聞かせて」が最終回を迎える。
文藝 2025年春季号
・【特集1 日記 記憶と記録】として、滝口悠生の論考「日付を書けばいい」、小指による漫画「日記と私」、創作では、いしいしんじ「音のかけら」、シルヴィア・プラス 小澤身和子訳「日記 一九五〇年~一九六二年」、リディア・デイヴィス岸本佐知子訳「カフカ、料理する」、李龍徳「私の叔父の航海日誌」。
さらに、特別企画として石岡丈昇・蟹の親子・五所純子・中村佑子「記録するという抵抗 日々を書き留める12冊」、日記では、岸本佐知子「尻 on fire 日記」、柚木麻子「どんな場所にも小説とカラオケはある イギリス滞在記2024年10月4~12日」、エッセイでは、くどうれいん「松ぼっくりの波紋」、梶谷いこ「積み石を崩す」、山本浩貴(いぬのせなか座)による論考「フィクションと日記帳 日記(本)から往復書簡、書く宛先をつくること」を一挙。
・【特集2 犬を書く、犬と生きる】として、小川洋子×千早茜による対談「まぼろしの犬、言葉なき存在を描く」を掲載。エッセイでは、松浦理英子「いつも心に犬を」、岸政彦「犬は自転車」、河﨑秋子「犬の名は」。
・【ノーベル賞受賞記念特別企画 ハン・ガン・日本・中上健次】として、ハン・ガン×中上紀×中沢けい(通訳 きむふな)による鼎談「人間の生きる痛みを描く 二〇一三年、日韓文学のこれまでとこれから」、斎藤真理子「尹興吉と中上健次」も併せて。
・【中原昌也 is Back!】として、2023年に糖尿病の合併症で脳梗塞を患う重症から生還し昨年12月にエッセイ集『偉大な作家生活には入院生活が必要だ』を上梓した中原昌也によるエッセイ「糖尿ワッショイ」、インタビュー「偉大な作家生活には雑談が必要だ」を掲載。
・創作では、向坂くじら「踊れ、愛より痛いほうへ」、水沢なお「こんこん」、山崎ナオコーラ「すべてが友情」(前篇)が掲載。
以上、2025年1月発売の5誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。
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