新居にて

山谷感人

エセー

2,275文字

 全国のルンペンに捧げる。

 二年三ヵ月。
 私はルンペンハウスと名付た所謂、無料定額施設的なトコロに住んでいた。無料とは名ばかりで毎月、五万円以上は搾取されていたが入った往時、そこしか行くトコロが無かった故、仕方ない。
 四畳の個室の日々。諸々な連中と共同スペースで出遭った。隣部屋の八十歳でも連日、アダルトビデオを大音量で轟かせる浦和出身の痴呆。いつも会う度に「煙草を呉れえ」とせがむ萩出身の自称、先祖は奇兵隊と語る七十五歳の爺ィ。半分は、こうした高齢者が居住していた。かの人達は人生で自業自得なれど躓き、身寄り頼りが無い老人だ。然し、そうした施設は喜んで彼奴を受け入れる。多少なりとも年金が有る故、金銭の取りっぱぐれがない故。
 残りは私と同年代か歳下。まあ何かしろのトラヴルを起こし流れ流れてハウスに居る連中。
 私は半分ヒモしていた女性と「育てていた猫の教育方針」での問答が悪化して部屋を追い出された。その時、私も金八先生や一つ屋根の下で、なるドラマをリバイバルで観ていたから、くどかった。だろう、じゃない、自認するほど理想論しか言わず、金銭を頼りながら馬鹿にして、くどかった。出てけ! となり路頭に迷った。
 そも々々、東京から地方都市に都落ちしたのは、母親が癌になり一人っ子だったからだ。無論、母親は最早、他界した。実家に頼ろうとしたが私は養子、所謂、連れ子な故、義父とは元来、疎遠であった。三菱重工で部長をしていた義父と実父の行方不明になった遊民の血が流れている私とは、会話が成り立つ訳ない。そうした果てに私はルンペンハウスに入ったが、他の連中よりは世俗的な観点から云えば異質であった。
 前記した私より同年代か歳下。
 彼奴は、殆どギャンブル依存症だ。何故なら、
そのハウスのオーナーが自称でこの地方都市にギャンブル依存症・ミーティングを造った人だと名乗っているからだ。
 私は東京に居る時、お馬ちゃん(競馬)は多少なりともしていたがパチンコやスロット等には興味がない。真逆に煩く狭いスペースは苦手な為、一万円を払っても行きたくない派である。然し、ギャンブル依存症は違う。金銭が入ったら、その日の内に全財産を投入! を当たり前に目の辺りにした。それ自体は否定しない、だが然し、それで生活に窮して窃盗した、賽銭箱などを無闇に、あさくったりして捕まった等が何人かいた。その後は脳病院か刑務所である。
 然し私もエアロスミスの六人目のメンバーと自負しているくらい、アルコール依存症が入っている故(スティーヴン・タイラーのアルコールを止めたと語りながらビアを呑み、ビアはアルコールじゃない! なる逸話は有名である)リハビリ代りに脳病院には入ったが。元来、自身で食事を取ろうとしないセルフ・ネグレクトとしては強制的にも一日三食、与えられるのは漠然と、生の功罪などを考えたモノだ。
 結句、ギリに踏みとどまった三人と私は仲良くなった。
 山形生まれの三十八歳、長崎生まれの三十三歳、広島生まれの三十九歳。彼奴も強迫的なギャンブラーだが、犯罪はしなかった。その内に、その中の誰かと毎夜の如く呑むようになった。無論、金銭は無いから近くの寂れた公園にて。
 やがて私の部屋に彼奴が入り浸るようになった。冬になり公園は寒いよ! が成り行きだったのだろう。連日、宴会となった。隣の部屋の八十歳はアダルトビデオ大音量なくらい、耳が遠いので気にせず騒いた。一瞬、ルンペンハウスの暮らしも良いな、と感じたが無論、そうした虚飾的なモノは綻びが来る。
 最初に三十三歳に、ちょくちょく金銭を貸していた訳だが、総額が八万円になった時、失踪、逃げた。結論としては他からも借財して山狩りされ現在は福岡の刑務所的な施設に入っているらしい。無論、私は一円も返済されてないし、これからも請求する事もない。
 次に三十九歳。彼は毎夜の如く自ら、私が寝ていても部屋に来て呑んでいた訳だが或る日、他のルンペンから「彼が毎夜、君に誘われていて困っているよ」と述べられた。詰問したら「俺はそうした人間だよ!」と開き直った故、出禁にした。笑って、えへへ、ならまだ良いが自身を卑下する捨て鉢な人間と私は楽しくエアロスミスごっこが出来ないからだ。
 最後に三十八歳。彼とは一等、仲良くしていて周囲から同性愛か? と疑われた程であるが、馬鹿三人の中では一等、常識があって軽い、お労務を始めたトコロ、毎夜々々、お岩さんの如く「キツイ、金銭がない……」としか病的に語らなくなり何度も諫言したが脳病院のクスリに頼るようになった故、破門した。結句、ハウスでルンペン同士、愉しい時間も有ったが、それは所詮、砂遊びみたいなモノで現実では非ず。
 やがて、私はギャンブラーではないのに、そのハウス・オーナーからギャンブルのミーティング(GAなるグループ)に来なければ出ていけ! となった。数合わせに人を呼びたいの脅しであろう。だが私は最早、そうした下手な詭弁と云うか、おためごかしに、ウンザリしていた。
 二週間後。私は、なんとかかんとか金銭を遣り繰りし引っ越しをした。ルンペンハウスから、出た。
 新居は坂が大変だけどロフトの窓からは海と山、マリア像が見える素敵なロケーションだ。近くに高校が有りエロビデオじゃない溌剌としたコエ、音も耳に優しい。
 ルンペン共よ。君達を部屋に呼ぶ事はないだろうが、一時期は時間を共有した履歴は有る。一言、捧げる。
 哀しみの、果てに伸びる、ペンペン草。
 太宰っぽくなった。何故なら転居祝いと称して場末のキャバクラで散財して朝、この駄文を勢いで羅列しているからだ。
 ルンペン達よ、サヨウナラ、アデュー。
 

2023年10月15日公開

© 2023 山谷感人

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