死んでなかったけど死んでる

名探偵破滅派『硝子の塔の殺人』応募作品

曾根崎十三

エセー

911文字

名探偵破滅派「硝子の塔の殺人」応募作。
それにしてもあらゆるミステリー小説が登場するので、詳しい人はそれでヒントを得たりするのかもしれない。

犯行は元々神津島、老田、巴の共犯だったところに、加々見が入って乗っ取った。元々、殺人の演技を見せて出席者に謎を解かせようとしていたところを加々見が殺した。神津島的には「このショーこそが未公開の傑作だ!」的な発想の催し。

 

神津島は遊馬が盛った毒では死んでいない。ふぐ毒の効きが早すぎる。苦しんでいるのは演技である。展示品の毒は毒ではなかった。電話を取り上げようとした時の抵抗する力が強かったのもそのためである。また、神津島を遊馬が検死しようとした時に加々見が阻止している。刑事としては自然だが遺体を触らせるのを執拗に嫌がった。そして後で生きていた神津島を改めて殺し、部屋の中の鍵をとって鍵をかけた。そのため、三日目の終盤で現場検証をした際に鍵が落ちている描写がない。

 

老田殺害について。老田は倒れており顔が見えていない。さらに、老田の死体を運ぶのを遊馬が手伝おうとしたのも止めた。その時点では生きていたからだ。巴はそれを知っていた。なので巴と加々見で老田を運ぶ必要があった。二人が怪しいのはダイニングの扉を破った時もだ。ただ、室内の老田はスタンガンで気絶しているため、鍵はかけられない。なので鍵は締まっていなかった。鍵がかかっているのは巴の申告のみでしか分からない。その申告のみで加々見は扉を破った。元々鍵はかかっていなかった。

加々見は老田を部屋に戻した際に裏切って殺した。巴はそれを見たため、明らかに怯えていた。

 

巴の殺害について。

加々見が神津島が呼んでいると嘘をついてドアを開けさせた。あるいは、遊戯室から飛び出したのを追いかけた際に殺している。その後、巴の持っていた鍵で鍵をかけた。

死体発見時に鍵を見つけたのは加々見だ。わざわざ加々見は碧からブリムを奪って鍵を確認している。ブリムに鍵はなく、加々見は持っていた鍵をブリムに戻した。ミステリーに詳しくないふりをしているだけで本当は詳しいので、あの血文字を書くことができた。

 

加々見は蝶ヶ岳神隠し事件を実は真剣に調査しており、人体実験のために遭難者を拉致し、餓死させた事実に既にたどり着いていた。その制裁のために神津島たちを殺した。

2021年10月15日公開

© 2021 曾根崎十三

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"死んでなかったけど死んでる"へのコメント 3

  • 投稿者 | 2021-10-25 21:11

    大猫です。
    なんと締め切り日を間違えていて投稿の機会を逃してしまいました。
    結果的には予測は大外れだったので投稿してもしなくても同じでしたが。

    四名の皆さんの推理はどなたも冴えわたっていて、特にトリック系の種明かしの鮮やかさときたら、普段からミステリー書いてるんじゃないかと思いました。犯人へのアプローチも的を得ていて素晴らしいです。

    中でも靖彦さんの推理はほとんど当たっています。さすがの造形の深さです。私も月夜が犯人ではないかとはちらりと考えましたが、その恐るべき動機までは思い至りませんでした。今回の優勝は靖彦さんであろうと予測しつつ、以下、恥ずかしながら私の推理を開陳いたします。

    次々に起こる事件には複数の意思が働いているように見える。
    作中に何度か出てくるセリフ「私たち自身が密室ミステリー小説の登場人物なのかもしれない」
    神津島のミステリーへの異常な執着と名誉欲。
    実は神津島が発表しようとしていたのは彼自身の筋書きで仕組まれた連続殺人事件なのではないか。それをゲストに解かせて楽しむ趣向だったのではないか。

    なので一条遊馬が盛ったふぐ毒は偽物であり、神津島は死んだふりをしただけである。
    しかし「蝶が岳神隠し」の復讐を誓う加賀見により阻止されてしまった。
    摩周真珠の母親から頼まれて仕方なく捜査していると加賀見は言うが、実は彼は摩周の父親である。そして母親は夢読水晶なのではないか。役立たずのヒステリックおばちゃんと見せかけて、元亭主の加賀見の仕事を助けていたのではなかろうか。
    そして神津島は加賀見によってあえなく刺殺され、謎の暗号が残された(暗号の意味は分からん)

    巴の殺害について、夢読は巴の部屋のすぐ斜め上の部屋に籠っていた。加賀見が巴を殺害後、彼を部屋から出して鍵をかけ、螺旋状のガラス壁を伝って上に戻ることができたのではないか。痕がついていないということだが、彼女のぴらぴらドレスがワイパーの役を果たしたのであろう。

    老田の殺害の密室のトリックは分からぬが、血で書いた文字とそれを消そうとした働きが相反している。実は酒泉こそが殺人鬼冬樹大介であり、加賀見に殺された老田と血のメッセージを発見し、身の危険を感じてとっさに火災⇒スプリンクラーで消す工作に及んだのではなかろうか。

    復讐に燃える加賀見・夢読ペアと殺人鬼冬樹がいよいよ直接対決を迎える。それを壊れた名探偵・蒼月夜が暴き出す。そんな展開を期待したい。

    • 投稿者 | 2021-10-25 21:13

      なんと靖彦さんへコメントをつけるつもりで曽根崎さんのところへ付けてしまいました。これだから酔っ払いは困ります。
      曽根崎さんの推理がちょっとだけ私の予測と重なっていたので嬉しかったです。

      • 投稿者 | 2021-10-28 13:58

        大丈夫です! むしろ大猫さんの推理がこちらで読めて幸いです!

        著者
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