最後は自分で歌うダビレンジャー

応募作品

大猫

エセー

2,144文字

ミステリーって最後に鮮やかなどんでん返しをくらって自分の目の節穴ぶりを思い知らされるものと思っていたのに、この終わり方はあんまりだ。フラストレーション溜まりました。ない知恵を絞って考えてみたけどこれが限界です。合評会では皆さんの推理を聞かせてもらってスッキリしたいです。
名探偵破滅派「神様ゲーム」参加作品。

この終わり方? そりゃないよ。

冒頭から「ダビ」レンジャーだの、「ジェノサイド」ロボだの「ネクロフィリア」ロボだの仰天ワード連発だし、住んでいるのが「神降」市で隣の町は「常世」市とJuan.B氏が大喜びしそうな地名だし、その上、タルムードにバハムードにイェシバーにサラディンと中東チックなボキャブラリーを散りばめて、子供の物語とも思えぬ禍々しい雰囲気を醸し出している。「死」を中心にシンメトリックに配置された各章のタイトルも不吉だし、物語進行も期待を裏切らぬ面白さで、どうなるんだどうなるんだとワクワクさせられた挙句、この終わり方ってあんまりだ。余韻を残すと言うよりも最後の一曲を歌い忘れたコンサートみたいだ。後は自分で歌えと言うことか。

 

物語で提示された様々な事物について、未解決のもの(少なくとも私が納得していないもの)は以下の三つだと思う。
1)猫の虐殺事件と犯人の秋屋甲斐は何のために登場しているか。
2)芳雄が両親の本当の子供ではないことが物語と何の関係があるのか。
3)鈴木太郎は本当に神様なのか。

 

謎解きに当たり物語に対峙する姿勢は二通り。
A.物語で語られた神様の言葉や芳雄の心中の推理がすべて正しいものとして最後のシーンのみ解釈する。
B.神様を含めて書かれたことをすべて仮定として物語全体を再構築・再解釈する。

 

Aの立場からの解釈はわりと選択の余地がないように思える。
解釈① 母さんは生粋のレズビアンで、美少女のミチルと鬼婆屋敷で道ならぬ関係を続けていたところを英樹に目撃され、ミチルを手助けし殺人の隠蔽工作を実施した。その場に父さんが居合わせたかどうかは不明だ。あるいは妻の性癖に疑問を持った夫がこっそり尾行してたまたま殺害現場に居合わせた可能性もある。
解釈② 父さんは筋金入りのロリコンで美少女ミチルをもその毒牙にかけていた。夫の不貞を疑った妻がこっそり尾行してたまたま殺人現場に居合わせた。殺害の隠蔽を主導したのは世間体を恐れたため。

 

両論とも1)の疑問を解決していない。2)については夫婦どちらかの性癖により子供を持てなかったため養子を迎えたと説明できなくもない。3)については鈴木君が神様だと言う前提に立っている時点で思考を放棄している。最大の問題点は両論ともあまり面白くないことだ。自分で歌うならもっと面白く歌わねば。

 

ここでAの立場を捨てて「神様」の解釈をしてみたい。

全知全能のわりにはどこか不安定な印象の「神様」。私が思い出したのは、筒井康隆の『エディプスの恋人』に登場する交代制の神様だ。平凡な女性が突然スカウトされて宇宙の絶対神に就任するものの、宇宙の秩序よりも残した一人息子を気に掛け続ける。本作に登場する鈴木君は宇宙の神羅万象あらゆる存在の創造者であるのに、製造責任は負わぬといういささかお気楽な神様だ。その神様が神降市の小学生に化けて便所掃除を楽しんでいるのはただの気まぐれかもしれない。でも筒井作品の神様同様に鈴木君もまた最近就任したばかりの神様で、人間の頃の記憶を少なからず残しているとしたら?

実は鈴木太郎君は芳雄の両親の本当の子供だったが何かの理由で神様になった。人間としては死んだことになり、悲嘆に暮れた両親は芳雄を養子に迎えた。鈴木君は前任の神様の記憶や所業をことごとく継承しているから、当然、人類も含めた三万七千種余りの知的生命体は彼の創造物なのだ。けれども神様業は退屈なので、人間であった頃の世界を見にやってくる。少しばかりゲームを仕掛けて芳雄を狂言回しにして楽しむためだ。両親の愛を一身に受けている芳雄への妬みがあったかもしれない。あるいは亡くした子供を忘れ果てている両親への恨みもあったかもしれない。親友は殺されるし好きな女の子は惨死するし母親は目の前で文字通り荼毘に附されるしで、芳雄への仕打ちはゲームにしてはひどすぎる。

ここまで書いて鈴木君が神様である前提からもはや逃れられなくなっていることに気が付いた。他の仮定も考察したいところだが枚数が足りない。

神様は秋屋甲斐に猫殺しをさせて少年探偵団の活動を活発化させ、芳雄と英樹の友情に亀裂を入れる。神様が直接手を下したのはここだけだったかもしれない。後は人間が繰り広げる騒動を眺めて楽しんでいたのだろう。
それではなぜ英樹は殺されミチルは串刺しにされたのか。
母さんが小柄であることは物語中何度も描写されており、裏庭の井戸の蓋の中に潜んでいた可能性が強く示唆されている。母さんが殺人現場に居合わせたとすれば、結局のところ解釈①あるいは②に戻って行く。全くの感覚だけど私は解釈②を採用したい。だから父さんも居合わせた。英樹殺しの共犯者は実は芳雄の両親である。「天誅」を下されたのは母さんの方だが、父さんの人生もこの先に幸福は訪れないだろう。
ところでミチルの口を塞いだのは父さんと母さんである方が蓋然性が高い。けれどもミチルの死に方があまりにも神がかっていて人間業では成し遂げられそうもない。給食で毒に当たって死んだとか、用水路に落ちて死んだとかなら良かったのに。

結局、あまり面白く歌えなかったな。ダビレンジャーのテーマ音楽でも流しといてもらおうか。

2021年2月13日公開

© 2021 大猫

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