そのとき時計は3時30分を示していて、会社に戻りたくない僕はネットカフェで時間を潰すことにした
「当店の会員証はお持ちですか?」
「あ、いえ」
「今日、身分を証明出来るもの、何かお持ちですか?」
「 … 」
「…お持ちではないですか?」
「いや…」
財布の中に運転免許証が入っているから、す
ぐに提示すればいいことなのだが
「 … 」
年齢がバレるのが嫌だった
「では、この用紙に記入してください」
「はい」
ネットカフェの店員にとっては僕の年齢なん
て関係ないし、さほど興味もないだろう
しかし僕は最近非常に自分の年齢が気になる
「 … 」
あの女性従業員の顔がニヤついているように
みえる。きっとあのおじさんエロ画像でも見
るんだわって顔つきだ
非常に気になる、非常に気になるのだ
そんな女性従業員の目線を気にしながら、受
付で手続きを済まし、指定された個室へ向か
う
途中、雑誌コーナーで何冊か雑誌をセレクト
して、個室に入る
「 … 」
まずはパソコンの電源を入れて、最近気にな
っている掲示板にアクセスしてみた
・
最近、インターネットの掲示板に私のことが
よく書き込まれるようになった
私はそのことでひどく落ち込んでいて、お店
を辞めてしまおうかって考えていた
「そんなに気にしない方がいいですよ」
「でも…店長、私もう嫌です」
「深く考えすぎですよ、さぁ元気出して!」
「…考えすぎって言われても、私…」
「みんなあなたのことが気になるんですよ」
「気にして欲しくないな」
「大丈夫、気にしない気にしない」
「 … 」
店長、あれって言葉の暴力だよ…って言いた
かったけど、きっとまた大丈夫って言われて
終わっちゃうんだろうなって思ったら、店長
に何も言えなくなった
お店の仲良い女の子たちも店長と同じような
ことを私に言う
誰に何を言っても、この状況は変わらなくて
誰だかわからない誰かに、私はひどく怯えて
いた
『全体的にカラダが大きい』
『あそこ毛深い』
『義務的で自分は面白み無かった』
『プレイも至って普通』
『また遊ぼうとは思わない』
『物足りなさを感じた』
何度もソコに書き込まれている言葉をくり返
し見てしまう
風俗の仕事を私もそれ程キッチリやってるワ
ケでもないし、この仕事にプライドを持って
やっているワケでもない
でも悔しい、すごく腹立たしい
お金をもらってサービスしているということ
を常に頭において接客しているつもりなのに
って…切なくなってくる
なんだか本当にひとりぼっちのような気がし
ちゃって…最近よく涙が出てくる
「 … 」
そんな時指名が入った
「もうすぐいらっしゃいますから準備しておいて下さい」
「店長、私…」
「大丈夫ですよ、頑張って」
疑心暗鬼になっている私がお客様を喜ばせら
れるのだろうか?
「 … 」
怖い
・
僕が最近気になっている掲示板は風俗店の噂
の掲示板だ
中でも今最も気にしているのが立川の人妻店
のスレッド
「また書き込まれてるな」
1人の女の子のことをよってたかっていろい
ろ言い合っているのが面白くて、ついつい見
てしまうのだ
「 … 」
彼女には逢ったことがない、しかし僕の中に
最近いつも彼女がいる…
「 … 」
僕は実際に、彼女に逢ってみたくなった
・
僕は想い続けていた女に逢えたような嬉しさ
で、気分が高揚していた
私はこの男も掲示板に書き込んでるんじゃな
いかって…ビクビクしていた
2人の肌が重なったとき、それはどうでもよ
くなって…ただ男の指が女の愛液まみれになっていた
end
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