バスタオル

いじめられっ子の俺が異世界転生したら美少女とムフフな件

合評会2022年09月応募作品

曾根崎十三

小説

4,168文字

元気いっぱいの最低なライトノベルを書いてみました! これってR18とかになります?

「ほら勃起! 勃起!」

楽しそうな手拍子に合わせて俺のチンコが起き上がる。手拍子の中には悪意に満ちた顔をした男子だけでなく、蔑んだ顔で目をそらしつつも、横目でチラチラこちらを見ている女子もいる。女子に見られている、と思うとこんなに恥辱に塗れた場面であってもなぜかムラムラしてしまう、いやむしろ恥辱が興奮になる。「汚いもん見せないでよ」と話す声が聞こえる。汚いチンコがさらに高く隆起する。チンコに注目して俯くこの集団の誰よりも頭が高い。

「こいつマジで興奮してんじゃん。キモっ」

残念ながら女子ではなく男子がiPhoneで撮影を始めた。動画推奨です。止まらないので。一人が写メり始めると次々と撮影が始まった。女子はその中に参加しない。しかし、きっと後で見る。そう思うと乗りかかった船、しぼみかけたチンコ。会釈したチンコが再び鎌首をもたげた。林のiPhone13Proのシネマティックモードが火を噴いている。カメラを止めるな!

「おい射精しろよ。ほらほら。見られて興奮してんだろ。ほら、お前来いよ」

輪から外れたところにいたらしい東條さんが俺の目の前に引きずりこまれた。

「嫌! おねがいやめて」

俺と同じいじめられっ子の東條さんは涙声だ。泣きそうだ。というか、完全に泣いている。必死に顔を覆って見ないようにしているが、力づくで腕を取り払われた。目を瞑って回避しようとするも顔面を容赦なく平手打ちされた。

「おい、見ろよ。じゃなきゃ脱がすぞ。おっぱいも出すか?」

その言葉に繊細な俺のチンコの血管が浮き立つ。もうこれでオナニー十七回目だ。いや、これはオナニーに入らない。中学生なので反語が使いたい。そう、皆の協力がある。一人ではできない。これはそういうプレイなのだ。相手がいるということはもはやセックスでは? 童貞卒業だ。俺は新しい世界に足を踏み入れた。

「うっ」

今日の十六回のどれよりもすごい波が来た。目の前が真っ白になる。

そして、そのまま真っ白な世界に俺はいた。音もしない。静まり返った真っ白な世界。最初は快感で頭が真っ白になっただけだと思ったが、あまりにも長すぎる。賢者になった俺(本体の方)はとりあえず立ち上がる。ティッシュが欲しい。

「おーい」

呼びかけても反応がない。人っ子一人いない。地面には立っているようだが、床との境目も分からない白さ。何だここは。死後の世界か? まさか、俺はテクノブレイクで死んだのか。ああ、どうせなら東條さんにおっぱいも出してもらえば良かった。どうせなら腹上死で死にたかった。それにしても、腹上死は腹の上と書くので上になってる方しか死なないのだろうか。女が腹上死した場合は騎乗位していたことになるよな。

「とりあえずチンコしまえ」

いきなり声がした。知らない声だ。神的な何かだろうか。響くような物もないはずなのに天の声的な響き方もしているのできっとそうだろう。俺に能力を授けよう、とかそういう系のやつか。

「ティッシュください」

あ、今のは能力の要望ではない。ティッシュが天から授かった装備ではあまりにも心もとない。慌てて訂正するよりも早く返事があった。

「ない」

たしかに神様がティッシュを使っているイメージがない。神の世界にはティッシュは存在しないのだろう。食べ物こぼした時とかどうしてるんだろう。神は食べ物をこぼさないのか。神だし。

「じゃあ自然乾燥します」

できればそうしたくはないが、ティッシュがないならやむを得ない。ガビガビになりそうだ。

「私は世界と世界の扉の番人。セーラームーンで例えるとプルート的存在だ。それでもってやや神っぽい存在だ」

急に雑すぎる自己紹介が始まった。

「姿が見えませんけど」

「チンコまるだしの奴に姿を見せたくない」

また喰い気味に返事があった。声が異様に反響していて聞き取りにくいので、声の主の性別ははっきり分からないがこんなにも嫌がるということは女の子なんだろうか。やばい。興奮してきた。汚れたガビガビチンコが再び鎌首をもたげようとしたその時

「お前は異世界の魔導士に召還されている。しかし、召還内容があまりにもアレなので強力な固有スキルを授け、救済しようと思ったが、やめておくことにした。さぁ、ゆけ」

オタクもびっくりのめちゃめちゃ早口で門番とやらは言い放ち、俺はまばゆい光に包まれた。再び静かになり、立っているのか寝ているのか分からないような不思議な感覚の中、木目の天井が見えた。ログハウスのようなRPGによくある村の民家さながらの作りだ。もっと首を動かしてきょろきょろと辺りを見回そうとしたが、できない。なんだこれは。ガビガビチンコの存在感もない。しぼんだだけかとも思ったがチンコそのものの存在がない。女になったのならそれはそれでアリかと思ったけれど、胸の存在もない。そもそも体の存在を感じられないのだ。まさか俺は魂だけの存在になってしまったのだろうか? あるいは何かしらの物体になったのか。その場合、異世界転生と言えるのだろうか。無機物って生物じゃないよね?

「あー、できてる! いいじゃん」

かわいらしい女の子の声がする。石鹸のような何かこうフローラルでさわやかな匂いがする。体育終わりの制汗剤を浴びた女子の匂いに近い気もするが、石鹸の匂いが強い気がする。これはもしや、風呂上り? 風呂上がりの女子! もしも俺のチンコが健在なら跳ね上がっていただろう。しかし悲しいかな。俺はどうやら人間ではないらしく全くその感覚はなかった。しかしこの興奮は健在だった。少なくとも嗅覚と視覚はあるらしい。もし無機物であれば自我を失ってもおかしくないとは思うが、残っているということはこれはこれで転生の一種なのだろう。

匂いの主がふわり、と俺を持ち上げた。持ち上げたことが分かった、ということは俺はどうやら触覚もあるらしい。自分の意思で動けないだけで。顔の輪郭に沿って俺が変形する。目のくぼみや鼻の高さ、柔らかい唇や頬を感じて、もし体があったら俺はもう一度テクノブレイクしていたと思う。何をされた? キ、キス?

「ふぅ~、やっぱ召還魔法の生贄で作ったバスタオルは吸水力が違うわ」

濡れた髪の毛がまとわりつく。これはヤバい。というか俺はバスタオルなのか。生贄にされたというか、バスタオルそのものである。このままではもっとヤバいことになる。ヤバいというか天国というか。あんなところもこんなところも俺で拭かれるのだ。人間だったら既に三回はテクノブレイクしている。

「マリー! また人間でバスタオル作ったのか?」

さらに別の幼い女の子の声がする。俺をバスタオルにした女の子はマリーというらしい。マリーは俺を頭から離した。水のしたたる耳の尖った小さな女の子が視界に飛び込んでくる。エルフだ! あっ! これアニメで見たやつだ! もうあからさまに『怒ってます』みたいな顔で腰に手をあててプンプンとやっている。これがぶりっ子ではなく様になるのは美しく幼げなエルフだからであり、人間ならなかなかキツイものがある。これはもう至極の「ぷんぷん」である。その上、髪に水が滴っているようなので風呂上りだ。角度的に見えないが多分全裸だ。異世界に来てからというものサービスショットがすぎる。

「いいじゃーん。ステーリアも使う? この世界のタオルマジで使い物にならないんだもん。しかも何か最近めちゃくちゃ召還失敗するんだよね……。何かに妨害されてるのかなぁ」

たぶんあの門番のせいだろう。

「いらないのじゃ」

エルフのステーリアとやらが頬をふくらませてそっぽを向いた。変な言葉遣いだ。あ、そうか。これはきっと、ロリババアというやつだ。エルフでロリババアとは属性てんこ盛りな気もするがエルフは長生きらしいので妥当なのかもしれない。

「ねぇ、本当に吸い心地抜群だよ」

俺は吸い心地抜群なのか……。確かに彼女についている水分なら喜んで吸い取る。飲む。ひょっとするとこれには俺の意思が反映しているのだろうか。となると、彼女は知らずのうちにエロジジイやエロ男子ばかりを召還しているから夢中で彼女の水分を吸い込んでいるのではないか。この家にあるバスタオルは皆俺のような奴なのだろうか。コミュニケーションをとる術がないので永久の謎になるかもしれないが。

「えー。特にこのタオルは本当にいいよ」

そんなに褒められると照れくさい。そしてマリーは俺でまた体をごしごしと拭き始めた。腕を、脇を、そしてそう、おっぱいを。多分マリーは大きい方だ。下乳をわざわざ持ち上げて拭っているので、持ち上げられるほどの乳がある。ああ、これは、なんだ、これは。中が詰まった水風船というか固いマシュマロというか柔らかいバランスボールというか何とも言い表せないすばらしい柔らかさをしていた。赤ちゃんの頃は俺はこれを吸って生きていたのか。何と言う贅沢。何と言う至福。たとえ、人々の異言、天使たちの異言を語ろうとも、おっぱいがなければ、私は騒がしい銅鑼、やかましいシンバル。学校がキリスト教系だったので、チャペルアワーでそんな感じの話を聞いた気がする。少し違った気がするがこれはもう神の領域なので致し方ない。変な声が出そうになるが、声帯がないので出ない。一日十五回の自慰マスターの俺でも自分の声で萎えることはあったのでこれはこれで好都合かもしれない。

「ほんといいよー。ステーリアもガサガサタオルから卒業しなよ」

自分のタオルを頭から被るステーリアに、マリーが抱き着いた。俺はその間に挟まれた。リアル百合に挟まる男だ。重罪だ。でも俺は今ただのバスタオルにすぎない。なので百合に挟まるバスタオルなので問題ない。おねロリに挟まれた男。柔らかな弾力のあるおっぱいと柔らかいすべすべとした背中に挟まれる。意識がふっとびそうになるがふっとぶことはない。俺はタオルなので。

人間の世界の俺はどういう扱いになっているのだろうか。いじめで羞恥プレイを強要されたらテクノブレイクで死んだという伝説になっているかもしれない。なかなかパンチが効いた死に方だ。末代までの恥である。両親には何の恨みもないので少し申し訳なく思う。でも、二人とも俺のことを愛してくれていたし、俺が幸せなら問題ないだろう。

お父さんお母さん俺は今異世界で幸せに生きてます。神よ、俺はティッシュなんかなくたって平気です。

2022年9月17日公開

© 2022 曾根崎十三

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"いじめられっ子の俺が異世界転生したら美少女とムフフな件"へのコメント 13

  • 投稿者 | 2022-09-22 20:03

    境界線にいたっぽい神様が、自分をセーラームーンのプルートって言ったところが、阿鼻叫喚で素敵でした。あと神様もちんこ見たくないんだと思って感嘆しました。

  • ゲスト | 2022-09-22 21:21

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  • 投稿者 | 2022-09-23 00:03

    現英国王チャールズ三世がいまの王妃とまだ不倫関係にあったとき、電話での会話で「ああ、もし僕が君のズボンの中に住めたなら……」と嘆いていたと盗聴したタブロイドにすっぱ抜かれてましたが、子供ながらに「しかし、本当にそうなったら臭いのでは?」と戸惑ったことを思い出しました。

  • 投稿者 | 2022-09-23 02:04

    いやーさすがに十七回オナニーしたら、テクノブレイクして死んじゃいますよ(笑)
    いやーわらっちゃいました。

  • 投稿者 | 2022-09-24 00:17

    いつもの凄惨ないじめ描写から、シュールな世界へのギャップがよかった。意識を持った元人間であると知りながらタオルを使うこの世界の女たちも変態的でよろしい。あと、テクノブレイクという新しい用語を勉強できてよかった。機会があったらどこかで使うことにする。

    • 投稿者 | 2022-09-24 10:50

      これがマンガなら、ネット広告にでも出てきそうゲスな展開で良いです。エロマンガの原案作者としての活躍が期待されます。(これが褒め言葉になるのも破滅派だけでしょうか)

      • 投稿者 | 2022-09-24 10:52

        失礼しました。またコメントへの返信をしてしまいました。気をつけます。

  • 投稿者 | 2022-09-24 14:20

    性器を露出させるとは最悪に陰惨ないじめで、自分の子がやられたらいじめた奴を殺しに行くレベルなのですが、主人公はそれを上回る変態のチンコ少年だった。こんなひどい話を違和感なしで読ませるとはさすがです。いや、もしかしたら主人公の両親が復讐していじめた奴らも雑巾とかに転生しているかもしれませんが。

    昔、『ど根性ガエル』という漫画で、ぴょん吉のTシャツを裸の女の子が着るシーンがあって、ぴょん吉が恍惚として「もうダメー」とか言っていたのを思い出しました。タオルになる方が変態度では上回っていると思います。想像力の見事さに脱帽です。
    そういう私も、大相撲が好きなのですが、好きな力士の化粧回しになりたいと本気で願ったことがあります。

  • 投稿者 | 2022-09-24 23:42

    確かに最低なライトノベルです(誉め言葉です)。酷いいじめを受けているのに、それが本人にとってはご褒美で、双方ウィンウィンなのが良いです。かなしいかな、下乳を持ち上げて拭くほどの巨乳だとGカップはありそうだなあと考えてしまう俗物な自分を見つけてしまいました。

  • 編集者 | 2022-09-25 13:37

    毎回、曾根崎さんのいじめ描写が凄惨でおののいております。ニュースなんかでたまに読むと本当にそうでリアリズムやばいなと感じます。タオルへの転生はいいですね。ふわふわのバスタオル、憧れます。

  • 編集者 | 2022-09-26 14:38

    いじめ、かっこわるい…けど、バスタオルか……。いつもながら描写に力があり、生々しく活かされている。文フリ大阪ではありがとうございました。

  • 投稿者 | 2022-09-26 14:50

    中二男子の妄想をそのままスケールアップしたみたいで良いですね。剣に転生する話もあるみたいなので無機物も十分アリではないでしょうか。

  • 投稿者 | 2022-09-26 16:41

    流行のネットミームを効果的に盛り込んだ逸品。あなたの家のバスタオルも、誰かが転生した姿なのかもしれない。

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