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アボカド

多宇加世詩集(第1話)

多宇加世

詩ですが自分の詩は自分の生でないことを書く。同じ詩を迎えるとしても。

タグ: #自由詩

555文字

ヌードモデルの男の人の

首に掛かったBluetoothのイヤフォンが

私の絵にだけ描かれていない

 

その彼が脱いだ服の上に

鎮座ましますiPhoneは

彼にしか聞こえない音楽を流す

 

私たちは一緒に住むようになって私たちは

アボカドを食べるたび種につまようじを三本

刺して私たちはコップにひっかけてお尻が水につくようにした

 

そしてじき発芽したのは暖かかったからだ

でも時間をかけても発芽しないものもいた

ずっと輸送中 冷やされすぎたのだ

 

観測船そう名付けたのはアボカドの種

いつかは宇宙デブリだ

それまではどうか健康でいてね

 

病気でも宇宙デブリの肌が

つるつるで

カルテの整理の邪魔にならぬならば

 

勉強ができずとも

運動が出来ずとも

アボカドの種 楽しいときに

優しくなれるようであって

だけどそんなことも私たち願わないから

育って

 

なんども私たちはつながった

もう一度 いう

アボカドの種のお尻を水につけておけば

はんぶんに割れて芽と根がでてきます

 

私たちは私たちから始まってたくさんの人に

あなたには会ってほしいと願う 殺したりなどしない

発芽などさせてすまぬと詫びる声も

じっと聞き取る双葉もあるのに そうでしょ

 

彼はやせてヌードモデルをやめた

私のお腹に三人目の宇宙デブリだ

© 2019 多宇加世 ( 2019年8月11日公開

作品集『多宇加世詩集』第1話 (全18話)

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