メニュー

踏 ミ 躙 ら れ た る 星 圖

無花果回

上ばかり見て生きてきた「おまえ」——つまり、わたし——への、林床からの呼びかけである。膝を折り、掌を土につけたとき、はじめて見えてくる光がある。可視化されないことの尊厳がある。踏まれてなお灯すことの、静かな抵抗がある。
どうか、頭を垂れて、読んでほしい。

タグ: #詩

706文字

おまえはいつも うへ ばかり 見る
塔を 頂を #トレンドを 「成功」とふ字面を
首の筋を 痛めるほどに 仰ぎ 仰ぎて
あ ん な ところに
ひかるものなど ひとつも 無いのに

 

——膝をつけ、おまえ。

 

——掌を 土に つけ。

 

そこに ほんものの 星座が ある

 

[ 林 床 星 圖 ・ 抄 ]

 

◇ 腐リウム座 fu R i u m
朽ちかけた ならのうでに
銀の粉が ふいて
「もう要らない」と 云はれた者らが
微かに 微かに ひかる
——死ぬことを 怠ってゐる、と
おまえは わらう か

 

◇ 光 ゴ 毛 座 hikari-ge-za
しめった 石の頬に
もつれる 繊毛
ひとすぢ ひとすぢが
誰もアカウントを 持たぬ プラネタリウム
フォロワー ゼ ロ の  明滅

 

◇ 守宮ノ心ノ臓座 yamori-no-shinnozou
落葉の下 息をひそめて 打つ
ピ コ 、 ピ コ 、 ピ コ
おまえの 携帯の 通知音より
ずつと 真剣に
名のなき者の 生存證

 

◇ 露 玉 珠 座 tsuyu-tama-juza
蜘蛛が編んだ ちひさき網に
ひとつぶ ふたつぶ
夜のひかりを 抱きこんだまま
朝には 消える
——美シ ノ 消費期限——

 

◇ 菌絲きんしの銀河
土の中 見えぬ場所に
気の遠くなる距離を つなぎ合ふ者ら
おまえが「孤独だ」と 呟いてゐる その間(あひだ)も
ずつと、 ずつと、
手を 握り合つてゐる

 

——

 

おまえは かうべを 垂れて
ほぞを 噛んだ
なんでも 踏みつけて 来てしまつた
何でもない と 思つて
何処にもない と 思ひて
踏 ミ 躙 リ テ 来て し ま つ た

 

——いいか、おまえ——
「 ひ か り 」 と は
たかみに 在るものの 名では ない
踏まれて 潰されて それでも
微かに 微かに ともすもの の こと だ

 

おまえの 足の裏が
かすかに あたたかい

 

それが
おまえ 自身の
星 座 の   は じ ま り

© 2026 無花果回 ( 2026年5月12日公開

読み終えたらレビューしてください

みんなの評価

0.0点(0件の評価)

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

  0
  0
  0
  0
  0
ログインするとレビュー感想をつけられるようになります。 ログインする

著者

この作者の他の作品

この作者の人気作

「踏 ミ 躙 ら れ た る 星 圖」をリストに追加

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 あなたのアンソロジーとして共有したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

"踏 ミ 躙 ら れ た る 星 圖"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る