バカとバカンスの調整とまったりしたアフタヌーン

平成八王子事変*ストラタジャム2018*戦略レポート(第8話)

波野發作

ルポ

2,360文字

2日目午前中でデザイナーとしてのぼくの仕事は大方終わった。あとはキャッチコピーを待つだけなのだが。

景虎先生が、即断できなかったのは「いらすとやかー」という逡巡によるものだったのだが、じゃあ代案としてより良いものが要求できるかというと、他のものではピンとこないという思考に流れたようで、結局「じわじわくる」ということで採用とあいなった。

 

その英断を最大限に尊重すべく、仕上げに入りたいと思う。

 

だいぶいろいろ試行錯誤はしたのだが、結果ベースで手短に行こう。

 

背景の2人と神に感しては第6回でのレポートの通り。透過率の調整ぐらいしかしていない。

AI化された管理職に関しても、まあ配置をちょっと調整したぐらいである。

 

その足元のボタンを押す連中の配置については、相当いろいろ調節している。

数や角度などを1時間以上はいじくりまくったと思う。

そして遠近感を出すために1つのアイディアを盛ってみた。

 

昨年ぼくはガンプラ本の仕事をライターとしてやっていたのだが(おかげさまで大ヒット御礼)、そこで監修のモデラー氏に教わったことがある。

大型の艦船のキットを制作するくだりでの雑学だったのだが、「遠くのものは白っぽく見える」ということだった。

近影に配置されるモビルスーツに対し、母艦のたぐいは全体に淡い色彩にトーンやコントラストを落としておくと、あたかも遠景にあるように見えるということだった。もちろんこれは大気の影響によるものなので、宇宙空間では関係ないが、そういえば何かのSF作品で、宇宙では巨大なものが遠くにあってもくっきり見えるので、遠近感が失われるというようなことが書かれていたが、これも同じネタだろう。

本作の足元のボタン野郎たちについては、後ろの方の小さい方が「ローコントラスト」になればそれっぽくなるのだろう。

まずは白っぽくしてみた。しかしこれはダメだ。白く浮いてしまう。暗くする方向にしても、単に暗がりになるだけで効果が薄い。

色を変えずに薄くする。というところで、透過に気がついた。結局は、60%ぐらいまで、遠くなるほどに透過率が上がるように調整を繰り返した。というのがタネ明かしである。

この辺のことはとくに目新しくはないのかもしれないが、自力で発想したのでまあまあぼくもがんばった方だろう。

 

タイトルの配置に感しては上端に置くパターンも試してみたが、作者氏の真ん中にババーンとキンアカ縁取りで、というリクエストがあったので、そこはオーダーに従った。作者名の配置には苦慮したが、帯上左下に落ち着いた。

 

メインのデザインに関してはそんなところだろうか。

 

あとで、夕方あたりにヒマができた頃、他チームの進捗を見ていたら、数チームが帯デザインを採用していた。どこもスタンダードに文字を並べているだけだったので、ちょっとテコ入れをすることにした。

 

REcycleKiDsの方は、ビジュアル要素としてリサイクルマークを追加した。これは元々野崎チーフのアイディアだったのだが、メインビジュアルの方で盛り込めず棚上げになっていたものだ。無事に収まって、帯も賑やかになって非常によかった。

 

バカとバカンスの方は、キャッチコピーとリードを上下逆にしてみた。それだけだが、印象はぐっと変わってきた。重心を下側にしたので、メインビジュアルとのバランスもよくなった気がする。気がする〜。

 

午後は夕暮れまでのんびり過ごす。

ランチの後、軽く昼寝をし、破滅派に投稿した裏ジャム原稿を理事長からの無言の圧力で裏ノベルジャム(公式)に移植したりして過ごしたが、エブリスタのアカウント作成でめっちゃ手こずった。結果的にはとりあえずアップできたのでよしとする。

 

https://estar.jp/_novel_view?w=24971426

 

フラウンダーとはヒラメのこと(カレイも含むらしい)。ヒラメは「鮃」だ。

デイスはウグイのことだ。ウグイは変換すると「鯏」と出るが、ちゃんと調べると「鯎」こちらの文字も使われる。

「鮃」と「鯎」。お題の消化は完璧だ。

他の方々はどストレートにひたすら平成を連呼している。修行が足らんよキミタチ。

ストレートで勝つには豪速球が必要だ。しかし変化球なら遅い球でも三振が取れたりするのだぜベイビーちゃん。

 

まったりした午後をだらだら過ごしていると、いつしか日は暮れ、夜の帳が下がってきた。

夕食を済ませてから、高橋文樹先生と澤画伯とともにコンビニにクルマで買い出しに。機動力大事。

夕食時に他のプレイヤーから頼まれたものも買い込んで戻る。

 

日が暮れてからの会場はまた雰囲気が違う。なんとなく文化祭の前夜という風情が、若返った気分にしてくれるし、頭を抱えた作家がもくもくとノートPCに向き合っているのも愉快な光景だ。

ぼくの方はと言えば、すでに背表紙も裏表紙もできあがっているので、あとはキャッチコピー待ちという感じになっていた。

 

会場を抜け出したぼくは、風呂を探してさまよい、結局見つからずに部屋に戻った。

シャワーが温水になるまで待ち続けてから体を清め、着替える。

最終日用のTシャツは「もっとよくばりましょう」だ。ラストスパートへのエールを込めて。

 

会場に戻ると少し人数がまばらになっていた。しかしまだ執筆が佳境というチームも多いようだ。

んー。去年のペースからすると、21時頃には全編書き上がって、朝までにのんびり推敲とか校正とかする感じだと思っていたんだが、全然そういう感じじゃないなー。文字数も去年より少ないよね?

 

午後22時。ぼくはまだ、このあとどなるのかまではまったく想像していなかった。丑三刻には酒でも飲んで寝るつもりでいたのだ。

 

つづく

2018年3月13日公開

作品集『平成八王子事変*ストラタジャム2018*戦略レポート』第8話 (全9話)

© 2018 波野發作

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