この世界で、あなたがたったひとりであるなら、
外灯の温かな光を追って、じきに見えてきた街の
街道やビル窓に映る人影のような過去の姿を求めて、
さ迷い歩くだろうか。
環状八号線に乗って、工場の横を抜け
交差する街道、また街道に目が眩みながら、やがて
空港の灯りを眺めているのかもしれない。
あれだけ嫌で仕方がなかった人らが
いなくなってしまった理想の中で、こうして
自由気ままに放浪しているはずなのに
どうしてあの人らのことばかりを思い出しながら、
次の灯りを探しているのだろうか。
人に描けるものは、人の見るものだけなのか
艶のある弦の、弾かれた乾いた音が、月夜に響いた。
古人はこうして琵琶に身を預け、
その身ひとつで渡り歩いた者もいたという。
物悲しい声は、寂れた恫喝を含み、
聴き手を語りの中へ引き込んでいく。
やはり人は、どこかで人の影を追っている。
それは幾千年の連鎖を絶やさなかった、
たしかな感触で、その喉から発せられる。
あなたはひとりで、街に残された最後の人として
ひとつひとつの灯りを消していくだろう。
その温かな灯りに映し出された、眩い記憶に
心を奪われながら。
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