基地外詩 「ドラムが鳴る中で」 2015.3.10

Juan.B

1,033文字

※自作品の転載であるが、元のブログに記事は存在しない。
http://yaplog.jp/littlejohn/

1776年のドラムが鳴る中でで
アメリカ独立の闘士たちがライフルを抱き
黒人と先住民を置き去りにしつつも声を上げ

 

1792年のドラムが鳴る中で
パリの市民たちが鎌や包丁を掲げ
血生臭い中でも自由を築き上げ

 

1839年のドラムが鳴る中で
チャーティスト達は選挙と同志の奪還を叫び
ウェールズのニューポートに英軍の銃声が響いた

 

ドラムが鳴る中で
それが乱れた音だとしても
自由を期待せざるを得ない

 

タララララと鳴るドラムが
市民に許された数少ない楽器が
多くの血と共に自由を招いてきたのだ

 

1848年のドラムが鳴る中で
ヨーロッパ中の市民たちが自分達の未来を
反動と妥協の揺れ動く最中で占い

 

1871年のドラムが鳴る中で
パリコミューンの戦士たちは
ドイツと反動体制ティエールの狭間で自分達の声を上げ

 

1886年のドラムが鳴る中で
シカゴのヘイマーケットの労働者達は
警察も権力も恐れない九人の英雄を筆頭に戦った

 

ドラムが鳴る中で
それが原始的な音であればあるほど
人間の自由と躍動を感じていく

 

軍隊のドラムの音より
か細くても貧弱でも
それは人民の心の中で高く響く

 

1905年のドラムが鳴る中で
イコンと祈りに包まれたロシアの市民は
最期まで皇帝の良心なんて物を信じながら撃ち殺され

 

1916年のドラムが鳴る中で
アイルランドの独立の闘士たちは
ダブリンと大英帝国を一度に震わせて

 

1917年のドラムが鳴る中で
ロシアの人民は再び皇帝の前に立ち
今度こそ自分達の怒りで大地に皇帝を倒した

 

市民の躍動の様な蜂起が19世紀に
社会主義や無政府主義の怒りの蜂起が20世紀前半に
植民地の被支配者達の蜂起が20世紀後半に
それぞれ終わったなどと思ったなら
それは大間違いなのだ

 

ドラムはいつでもどこでも響いている
それを聞く耳を持たなければならない

 

警官や軍人
神父や僧侶
保守主義者
自称リアリスト
王侯貴族王党派
これら全てをなぎ倒す音
そして流し去る我々の血

 

生きても死んでも殺されても
我々に残るものは何一つ無い
この一万年の人間の文明の中で
支配者達の持ち物は無限に増えてきたが
虐げられた者達の持ち物は何一つ増えていない

 

そんな世界で唯一響き続けていた
ドラム
太鼓
銅鑼
タム
手拍子

 

すぐに我々に返事をしてくれる相棒の楽器
鳴らして進め
我々の未来か死体が照らされるその時まで

2015年12月4日公開

© 2015 Juan.B

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