超短編小説「猫角家の人々」その42

moonkaguya

小説

1,216文字

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無法松先生をシャブの世界に引き込んだ功労者、指圧師、霊図美杏は、朝鮮悪組織のメイン・プレーヤーのひとりである。手技を駆使して、女性ターゲットを篭絡する役割だが、それだけではない。「カモ」を物色し現地調査で、「カモ度」を測る重要な役割を演じている。その手口が「お迎えに参ります」という宣伝文句だ。指圧を希望する顧客には、自宅まで迎えに行くサービスを提供するという。そんなことをしていたら、採算が合わなくなるように思えるが。随分と親切に聞こえるが、実は、その行為には悪意が付随する。

顧客の「金持ち度」は、自宅を見ればわかる。迎えに行って、言葉巧みに上がり込み、家の内部を観察して上等な「カモ」なのかどうか判断する材料とするのだ。「美味しい客だ」と推測できれば、仲間内の四つの葉弁護士法人が、資産の内容を調べる。処分できそうな資産があると分かれば、強奪大作戦の開始だ。

カモは、必ずしも、痴呆老人でなくてもいい。「病気を心配する老人」でもいい。「あのね、足裏を揉んでいると、人の持っている病気って、大体わかるのよ。」霊図美杏は、ターゲットと定めた72歳のカモ婆さんに囁く。「もしかしたら、大病かもしれないから、お医者さんに診てもらった方がいいわ。」と心配そうに、憂い顔で伝える。お婆ちゃんは、心配になって、霊図美杏に紹介されたクリニックに行ってみることにする。霊図美杏は、親切にもクリニックまで車で連れていってくる。しかも、診察に同席までしてくれる。簡単な血液検査、レントゲンの後、医師はシンプルにつげる。「子宮癌ですね。末期です。手術はできないでしょう。ウチでは、従来の癌治療とは違う最新の治療法をやっています。試してみませんか?まだまだ、なおるチャンスはありますよ。但し、保険は効きませんが。」医師は、お婆ちゃんの手を握って、笑顔を浮かべながら優しそうに伝える。

霊図美杏は芹沢鴨お婆ちゃん、72歳に囁く。「ねえ、このお医者さんの判断だけじゃ、わからないわよ。誤診かもしれないし。別のお医者さんにも聞いてみましょうよ。」落胆したお婆ちゃんを励まし、翌日、別のクリニックに連れていく。まるで、この資産家のお婆ちゃんの専属のようだ。別の医師は、面倒くさそうに告げる。「子宮がん。末期。手術はできない。どうしますか?」ぶっきらぼうにそう伝える医師の目は冷たく光っている。嫌な奴だ。勿論、この医師も昨日の医師も、朝鮮悪組織のメンバーだ。傷心のお婆ちゃんは、「昨日のお医者さんは信用出来るわ。あそこで、治療を受けるわ。」そう思わせるために、わざわざ、冷血医師Bは起用されたのだ。

医師Aの謳い文句は、「従来の癌治療ではない新たな独自の免疫療法」だ。「ナントカ酵素」の類を患者に飲ませる。ただし、保険が効かない。だから、高額治療となる。つまり、保険外治療の費用を払える資産家だけを「癌」にするのだ。実際は、癌でも何でもない、健康体の患者さんを。(続く)

2023年8月2日公開

© 2023 moonkaguya

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