超短編小説「猫角家の人々」その43

moonkaguya

小説

1,250文字

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芹沢鴨おばちゃんの娘は、従来の癌治療を受けないと言い張る母親のことを心配して、久留米の大学病院に連れていこうと必死に説得する。お婆ちゃんは、3年前に、娘の連れ合いが「自宅の新築資金1000万円を融通してくれ。」と打診してきたのを覚えている。それ以来、娘夫婦は、自分の財産を狙っているとひどく警戒している。自分では気づいていないが、老人性痴ほう症の典型的な症状の被害妄想を発病しているのだ。自分に最も近い肉親に敵意を抱いてしまうのが、この病気の特徴なのだ。もう、娘の言うことなど、聞く耳を持たない。

医師Aと霊図美杏に絶大な信頼を置くお婆ちゃんは、医師Aのクリニックにある29床の入院施設のうちの特別室に入院する。医師Aによるあり難い保険外治療が始まる。もともと癌ではないので、特に治療は必要ないのだが、仰々しく、儀式のように「スーパー・スペシャル・ハイクオリティー・スプレンディッド酵素VX3改」を服用させられる。ラベルの剥がされたペットボトルに入っている。なんだか、スポーツドリンクそっくりの味なのだが…..。これを、毎食後飲まされる。ありがたーい、神薬だ。そういえば、看護師は、市販のポッカレ・スエットをラベルを剥がして、お婆ちゃんに飲ませておけと医師Aから指示されていたのだが。勿論、看護師は朝鮮悪の準構成員の一人なので、医師Aのおかしな指示にいちいち反応などしない。悪事に慣れ切っているのだ。

このスペシャルドリンクは、非常に高価なものだ。一回の処方で14万円掛かる。それが一日3回だ。一か月クールで1200万円以上かかる。病状次第では、もう一月続けなければいけないという。鴨お婆ちゃんは、郵貯の定期を解約して支払うという。霊図美杏は、親切にも郵便局まで行って定期の解約をしてきてくれるという。おばあちゃんの委任状を持った霊図美杏は、鳥栖の郵便局で、定期を解約して1000万円を引き出し、ついでに普通預金1000万円も全額引き出した。つまり、800万円を着服したのだ。「お婆ちゃんの送迎代だわ。」高い送迎代である。そして、朝鮮悪組織には報告しない臨時収入として、秘密裏に処理したのだった。そして、お婆ちゃんには、偽造屋に作らせた銀行の偽通帳を見せた。「やっぱり、この人は騙したりしない、信用のおける人なのよー。」霊図美杏は、鴨お婆ちゃんのさらなる信頼を手にしたのである。

1200万円の薬の原価は、約9000円だ。A医師のクリニックの5メートル先に設置されている自販機は110円均一なので、ポッカレ・スエットも他より安いのだ。自販機の業者のドライバーは、この自販機だけ、ポッカレ・スエットの売り上げが飛びぬけて高いのに首を傾げていたが。ポッカレ・スエットがたまたま品切れになった時があった。看護師は、別の自販機で代わりにアクアリウスを買ってきておばあちゃんに飲ませた。お婆ちゃんは微妙な味の違いに気付き、「これは違う!」と騒ぎだした。何しろ、一本、14万円だ。不良品をつかまされては大変だ。(続く)

2023年8月2日公開

© 2023 moonkaguya

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