この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第23話)

実琴

小説

1,334文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

今日は土曜日、そして仕事は休み。

そう今日は彼がママに挨拶に来る日だ。

上手く行けば、ちょうど土日休みなので泊まりで一緒に居られる。

私は少し緊張をしていた。ママが気に入るかどうか…それが心配だった。前の子は気に入らず必ず門限には家に帰っていた。

 

『着いたよ』

と彼からメールが来たので

「着いたって、迎えに行ってくる」

とママに行って外に出た。

家は4階だ。降りる時に彼の車が見える。

さらに緊張してきた。

彼がどこに車を停めるか迷ってる感じだったので

「ここに停めて大丈夫だよ」

と教えてあげた。

「了解」

彼が車を停めて降りた。

「大丈夫?」

と思わず聞いてしまった。

「大丈夫だよ。さくらと一緒に居られる為なら」

と彼は意気込んでいた。

「1つ、注意事項あるの」

「何?」

「まず、家に入ったらママの前に座ってフルネームで自己紹介して」

「うむ、なんで?」

「前の子、苗字しか言わなくて気に入らないって言ってたから絶対フルネーム!これは忘れないでね」

「わかった」

何となくだけど彼に軽い感じを覚えた。

 

家に案内すると

「お邪魔します」

と彼が家の中に入った。

しかし私はつい癖で彼が脱いだ靴を見てしまった…揃えないタイプか。

「いらっしゃい」

とママが言った。

「どうもはじめまして」

と言いながら彼はママの目の前に座り

「大田晴と言います。さくらさんとお付き合いさせていただいてます」

と彼は頭を下げた。

「なかなかいい男じゃない」

ママの感触はいいと思う。

「ご相談があるのですが…」

と彼は口を開いた。いよいよ本題だ。

「俺達、休みが違うので出来たら自分の家に泊まりで会いたいのですが、許可してもらえませんか?」

少し沈黙が流れた。これはどっち?

「良いわよ」

え、今なんと?

「いいの⁉️」

「うん、良いわよ」

あのママがあっさり承諾してくれた。

なんか怖い気もするけど、いい事だ。

これで彼と一緒に居れる時間が増える。

私の胸は完全にときめいていた。

「それと…」

と彼は言葉を切り出した。

「今回同じ土日休みなので今日から泊まりいいですか?」

「全然良いわよー行ってきなさい、さくら」

あまりに拍子抜けで

「本当のいいの?」

「うん、行ってきな」

とママが言った。25歳でも門限あって余程の事がないと許してくれた。

「じゃあ、あたし準備するね」

私はお泊まりセットを準備して

「ママ行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

と家を出て駐車場に停めてある車に乗った。

「凄い、凄い!あのママが許してくれるなんて」

「俺も一応営業もやってるし、結構おばさんに人気あるんだよ?」

と言って彼は笑った。

「え、人気あるように見えないけど…」

「あるの!ってこれからどうする夕飯とか」

「あ、夕飯なら私作る!ママが離婚して料理してたから得意よ」

「え、本当?!楽しみだなー何作ってもらおうって俺ん家あんま調理器具ないけど?」

「フライパンや深めの鍋とかある?」

「それなら大丈夫、なんとかするから任せって」

「わかった。じゃあその前に食器とか日用品買いに行こうか。自炊もしないから食材ないし」

「うん、何食べたい?」

「さくらの得意料理!」

「だいたい作れるけど、でも決めた!」

「え、何?教えて」

「出来きるまでないしょー

「何でだよー」

と彼は少しひねくれていた。

そして私たちは買い出った。

2022年3月12日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第23話 (全28話)

© 2022 実琴

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