この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第20話)

実琴

小説

1,902文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

「はぁー美味しい!」

コンビニで買ったビールを飲んで思わず声が出てしまった。

「本当好きだね、ビール」

と彼が言った。

「休みの日に昼間から飲めるなんて最高!このために仕事頑張ってるようなもんよ」

と言うと彼がまた笑った。

「ビール飲んでる時が一番幸せそうな顔するね」

と彼に言われた。

「え!そう?」

「うん、そうだよ。前に所長に焼肉奢ってもらった時も肉食べるよりビール飲んでる時の方が幸せって感じしたよ」

「えー!そうかな…てかよく見てたね」

「目の前だったしね。本当は隣に座りたかったんだけど、俺あの時トイレ行っちゃったから…でもあいつが隣に座るとは思わなかった。仲良さそうだったし」

あいつとは私とは別の棟で管理者をしている男性社員だ。

「まぁ、いつも打ち合わせ一緒だしね。それなりには交流してるよ」

「ふーん」

と彼はなんだか拗ねた様に言った。

一瞬空気が変わった様な気がしたので私は、

「で、話って何?」

と話題を切り替えた。

「ああ、彼女と別れたよ」

「大丈夫だった?」

彼の彼女は精神を病んでいる。それが引っかかっていた。

「何となくわかってたって言われたよ。好きな人が出来たんでしょ?って」

「そっか…」

「メールでも良かったんだけど、やっぱ直接言いたくて今日誘ったんだ」

そういうと彼は立ち上がり、私を後ろから抱きしめた。

「これで俺達付き合えるね、さくら」

ん?あたしは違和感を覚えた。

付き合う事が決まったら、即呼び捨て?

そんな簡単に出来るものなの?

さん付けから呼び捨て?世の恋人同士とはそういうものなのだろうか…

まともな恋愛経験の私には凄い衝撃的だった。

私が黙っていると

「さくら?」

「え?ああ、そうだね」

その言葉を絞り出すことが精一杯だった。

「そっちはどうだったの?メールきてたけど大丈夫だった?」

「うん、まあ。凄い泣かれたけど大丈夫だと思う」

「何、思うって?」

と彼は笑った。

「いや~私、恋愛経験ないから別れとかよくわからなくて…傷つける事しか出来なかった」

「これからは2人の事考えよ?」

「うん、そうだね」

「で、提案なんだけど」

「提案?」

彼の言葉に私は首を傾げた。

「俺達、休み違うじゃん?」

「うん」

「出来たら土日休みとか出来ない?」

「ああ、出来なくはないけど毎週は無理よ。同僚に相談して休み変わってもらうけど」

「そしたら泊まりで家に来てよ」

と彼に言われた。

「泊まり!?」

「うん、泊まり。その方が長く一緒に居れるでしょ?」

「そうだけど…」

「だけど?」

「その前に難関がある」

「難関?」

「ママに付き合う事話したんだけど、挨拶に来てくれって…そこでママの許しもらえないと泊まりは無理だと思う」

「そっか、じゃ挨拶に行くよ」

「え!いいの?」

彼があまりにもあっさりと承諾したので驚いた。前の子は私との将来を考えていてママに挨拶をした。でも彼は違う。泊まりという目先の事しか考えていない。何故かそう思った。

「挨拶終わったら泊まりに来れる?」

「たぶん?これはママ次第だし…」

「大人なのに?」

「うちは独裁国家なのよ。ママが全て正しい。まぁ、今まで外泊した事はあるから理由があれば大丈夫だと思う」

25歳になって何を言ってるんだろうと自分でも思う。でも、そういう環境で生きてきて身体に染み付いているのだ。逆らうなと。

「じゃ、挨拶早くしないとね」

と彼は笑った。

「うん。次の土日休みいつだったかな…」

と携帯電話でスケジュールを見た。

「あっ、この日、土日休みだ」

「じゃ、その時挨拶してそのままお泊まりだね」

と彼は軽く言ったけど、スムーズにいくと思っているんだろうか…

「それまでは仕事終わり会える時会おう」

「うん、わかった」

「ああ、会社で自慢したいなー」

「何を?」

「さくらと付き合ってるって」

「はぁ?何言ってんの!言わないでよ」

「なんで?」

「なんでって付き合ってるなんて知られたら気まづいでしょ」

「牽制になっていいと思うんだけど」

「牽制?」

「さくらの彼氏は俺だってわかれば他の男寄って来ないでしょ?あいつもあいつもあいつも、さくらに気があるんだよ?わかってる?」

「わかってるよ。でも私は好きにならない。その自信は絶対あるし、気持ちがないのもちゃんと言ってる。だから会社では秘密にしてよね」

「それならいいけど」

職場で男性社員と仲良くしてる。その中には私に好意をもってくれている人がいるのも知ってる。でも私はその人達に恋愛感情は一切わかない。ただふざけて会話をしてるだけ。

私はどうも女性と仲良くなる事が苦手だ。

年代的にも喫煙する女性が少なく、結局男性陣に混ざってしまっていた。これが厄介な事になるとは思っていなかった。

 

2022年3月5日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第20話 (全28話)

© 2022 実琴

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