この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第22話)

実琴

小説

1,123文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

彼は職場では所長、私の女性上司、事務のおばさんとしか話してるとこを見たことしかなかった。私と同世代の女性達も居たけど、話してるとこは見ていなかった。

だからなのか、この時の私は自分の恋人が他の異性と話す事に嫉妬する事がわからなかった。彼が何故嫉妬するのか理解出来ていなかったが、それを理解する事になるとは思ってもいなかった。

 

付き合ってから数日、彼から

『明日休みだよね?』

とメールが来た。

『うん、そうだよ』

『明日、俺午後休みだからどっか行かない?』

と誘われた。

『いいよ。でもどこに?』

『行きたい場所ない?』

と聞かれ、行きたい場所…と考え巡らせていると

『動物園!』

私は動物が好きだった。子供の頃、獣医さんになる事を夢見たこともある。

そして、家では猫を飼っていた。ネコ科の動物が何故か凄い好きだった。

近くに動物園があるのでそこを思い出したのだ

『いいよ、行こう。明日仕事終わったら連絡するから』

『わかった。準備して待ってる』

と私は送った。

 

次の日、午後になると

『今終わったから、迎えに行く』

と彼からメールが来た。

『了解』

と送って、私達は動物園へと向かった。

 

「動物園!」

動物園に着いた事で私のテンションは上がっていた。でも、どうやら傍から見るとあまりテンションが上がってるようには見えないらしい。

「何から見る?」

と聞かれたので、パンフレットを見て

「猫が触れるって、ここに行こう!」

「いいよ」

と彼は言って、私の手を握った。

初めて異性と手を繋いだ。暖かいと思った。前の子とは手を繋いでない。繋ぎたいとも思わなかった。でも、彼と手を繋ぐのは幸せに感じた。これが好きになると言うことか…

猫を触った後、お昼を食べにレストランに入った。それぞれ食べたい物を注文した。

すると彼が

「所長に付き合ってる事言った」

と言われた

「えっ!なんで?」

「所長にはお世話になってるし報告しておこうかなと思って」

「いや、私言わないでって言ったよね?」

「ごめん。でも言っておきたかったんだ」

「てか、何も相談せずに言うなんて…なんで言ってくれなかったの?」

「嫌がると思って」

「そりゃそうだよ!あの所長だよ?私はあの人信用できない」

そう所長はお調子者だったのだ。

あの人の事だから絶対誰かに言う。それが心配だった。

「大丈夫だよ」

「全然大丈夫じゃない」

私は自分の女性上司にもまだ言っていなかった。言おうとは思っていたけど、彼に相談してからと思っていたからだ。

なぜ彼は勝手に報告したのか。その事は未だにわからない。

やっぱり牽制だったのだろうか…

私は今でも思う。絶対言わないで欲しかったと。彼の勝手な行動により私はとても辛い思いをする事になるとは全く思っていなかった。

2022年3月8日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第22話 (全28話)

© 2022 実琴

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