Bコマが始まると同時に、俺は勇樹くんを談話室に通した。我々は向かい合って座った。
「最近、どう。」
と俺は訊いた。勇樹くんは、「普通です。」といかにもつまらなそうに言った。俺は、汗で落ちて来た眼鏡を指で直した。不登校の生徒との会話方法について修行中に指導を受けたことは一度もなかった。
俺は、机の上にくだんの水筒を置いた。
「これなんだけどね。……入っているのはお茶ではないね。」
「はい。」
「ポカリでもないね。」
「はい。」
勇樹くんの視線は、俺のネクタイのあたりを漂った。
「……いや、ごめんね。別に尋問しようとしているわけではないんだ。ただぼくは、君の口からこの水筒に入っているものが何であるのか聞きたい。」
「それは何故ですか。」
勇樹くんの視線が、瞬時に俺の目をとらえた。俺は顎を撫でて、次のように言った。
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