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【 30秒で読める話:09 】心の中の関西人

taro-nagahamada

ほんまにほんまやから、ほんまに、ほんまなんやと思います。

小説

528文字

【 30秒で読める話:09 】心の中の関西人

 

人は皆、心の中に関西人がいるという。

これはネットで知った、純度100%の真実だ。

 

「それはほんとで、おまんがな」とぼくの中の関西人はいった。

 

仕事を失って三か月目。

ぼくはこれからのことを、彼と話し合うことが増えた。

 

彼は、イライラしたように足踏みをする。

「自分、何がしたいねん」

そんなことを聞いてくるくせに、返事をすると決まって、

「おもんない」なんていう。

 

ふいに、襖の染みが広がる。

そこに、うずまきのような奥行きが現れて、目がくらむ。

 

「あかんで。それはあかん」

 

何もかも見透かしたように彼はいう。

「もう十分、がんばったよ」とぼくはいう。

 

彼は大げさにため息をつく。

「ほな、わてが行こか」

「どこへ?」

「応募とか面接とか、そんなん」

 

時間は希釈されて、しだいに透き通っていく。

 

「勝手にしなよ」

 

そういった瞬間、襖のうずまきに、ぼくは吸い込まれていた。

体が勝手に動いて運ばれていく。串カツのソースに二度づけされたみたいだ。

鏡の前に立つ。他人のような自分の顔が映る。

その目はぎらついていた。

「ほな、いこか」

© 2026 taro-nagahamada ( 2026年10月27日公開 )

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