【 30秒で読める話:09 】心の中の関西人
人は皆、心の中に関西人がいるという。
これはネットで知った、純度100%の真実だ。
「それはほんとで、おまんがな」とぼくの中の関西人はいった。
仕事を失って三か月目。
ぼくはこれからのことを、彼と話し合うことが増えた。
彼は、イライラしたように足踏みをする。
「自分、何がしたいねん」
そんなことを聞いてくるくせに、返事をすると決まって、
「おもんない」なんていう。
ふいに、襖の染みが広がる。
そこに、うずまきのような奥行きが現れて、目がくらむ。
「あかんで。それはあかん」
何もかも見透かしたように彼はいう。
「もう十分、がんばったよ」とぼくはいう。
彼は大げさにため息をつく。
「ほな、わてが行こか」
「どこへ?」
「応募とか面接とか、そんなん」
時間は希釈されて、しだいに透き通っていく。
「勝手にしなよ」
そういった瞬間、襖のうずまきに、ぼくは吸い込まれていた。
体が勝手に動いて運ばれていく。串カツのソースに二度づけされたみたいだ。
鏡の前に立つ。他人のような自分の顔が映る。
その目はぎらついていた。
「ほな、いこか」
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