【 30秒で読める話:04 】パイプの言い分
建設現場で、とび職をしたことがある。
建物の周囲に足場を作る仕事だ。
4メートルのパイプは1本で約11キロ。
それを何本も肩に担いで人力で運ぶのだから、大変な仕事だった。
ベテランの山口さんは元やくざだった。 職人気質で口数は少なかった。
その日、現場は大型クレーンや重機の轟音で、絶え間ない騒音に包まれていた。
足場板の上から山口さんが大声で指示を出しても、まったく聞こえない。
ぼくは地上から材料を用意して上へ渡す係だった。
山口さんが指を立て、必要なパイプの長さを指示した。
ぼくは、OKとサインをしてパイプを渡した。
山口さんは無言でそれを受け取り、
人間の関節のようなクランプをインパクトドライバーで締め付ける。
しかし、何か様子が変だ。
山口さんは何やら悪態をついて天を仰いでいる。
ぼくは、お腹がすいてお昼のことを考え始めている。
休憩時間はまだ先の話だ。
それなのに、山口さんが足場から降りてくる。
彼はぼくの前にのしかかるように立つと、
ヘルメットの頭をぽかりと叩いた。
「指の数もわかんねえのか! 4本だろ!」
そういって目の前で山口さんは指を立てて見せる。
指は3.5本だったが、そのことはいわないことにした。
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