【 30秒で読める話:05】株は最高!
「君らの株は確保したから」と部長は言った。
タダで貰えると思い、ぼくらは軽い気持ちでサインした。それが間違いだった。
翌月、給与明細を見て社内がざわついた。
「天引きだと説明したろ。会社の株だ、処分はするなよ」と部長は平然と言い放った。
ぼくらは社畜の運命を嘆き、しこたま飲んだ。
いつしか株のことなど誰も話題にしなくなっていた。
ある日のことだった。
株価が連日のストップ高だと同僚が教えてくれた。
含み益は年収をはるかに超えていた。
「これなら……」と同僚は震えながら言った。
社内は株価の話題でもちきりだった。
誰もが仕事そっちのけで白昼夢のなかにいた。
「カンクンに行く」
「仕事辞めるわ」
ギスギスしていた社内には、南国のそよ風のような余裕すら漂った。
そして、破滅が来た。
今度は連日のストップ安。
資産は音を立てて崩れていった。
買い手がつかず、処分すらできない。
昼から泥酔する者、静かに縄を編み始める者――。
阿鼻叫喚のオフィスで、部長だけが頬をてらてらと光らせて笑っていた。
いつの間に買ったのか、高級車のキーが低い腰で揺れている。
翌朝、部長は厳しい顔でオフィスを一瞥した。
「お前ら、最近たるんでんじゃないか? 愛社精神はどうした! 仕事しろ、仕事」
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