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【 30秒で読める話:07】解釈と介錯

taro-nagahamada

タトゥーのおかげで今日も生きてる!

小説

646文字

【 30秒で読める話:07】解釈と介錯

 

狭い団地の部屋がしゅるると軋んだ。

 

姉は赤ん坊を抱いている。

赤ん坊が蛹のように静かなのは、姉が小さく揺れ続けているからかもしれない。

 

ぼくの頭の中で、陳列する商品の段ボールだけがどこまでも、どこまでも積み上げられていく。

クビを切られたあとも、ぼくは夢の中で仕事をしていることがあった。

目が覚めると、手ごたえのある疲労感が残っているのに、稼ぎはなかった。

無職なだけで、肩身が狭い。居心地が悪いのは、銃口のような目をした姉のせいかもしれない。

 

「まったく、何考えてんのよ。タトゥーなんて、『ぼくはバカです』って宣伝してるようなもんよ」

 

姉は、シャベルでも眺めるようにぼくを見ている。 ぼくは首元に手をやる。

 

「いっとくけど、ぼくのは『タトゥー』じゃなくて『入れ墨』だから。一緒にしないでくれる?」

「あっそ。じゃあ『バカ』じゃなくて、『アホ』とか『トンマ』ってこと?」

そのとき、赤ん坊が泣き出す。

姉があやすと、すぐに泣き止んだ。

「いい子ね。本当にいい子。あんなふうになっちゃだめですからね」

 

赤ん坊はぼくを見ている。

つるんとした顔が、見る見る老けていく。

そこには、もう中年になった赤ん坊がいる。

中年の男は、訳知り顔でニヤリと笑っていた。

老けた赤ん坊の首元に、ぼくと同じ入れ墨があった。

それは首全体を覆ったあと、顔へと広がっていく。

 

「もう全部、起きちまったから」と中年の男が言った。

© 2026 taro-nagahamada ( 2026年10月15日公開 )

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