茨城県大洗街は多くのサーファーが集まり、毎年夏近くになると海は多くの人々で賑わう。
それに、観光地ともあってか様々な宿泊宿があり、不景気の影響もあってか古く建てられた宿は何件か潰れており、その潰れた宿を買い取ってそこにベトナム人やフィルピル人やベトナム人を住まわせながら派遣事業みたいに使ってる所もある。大洗街は色んな顔を持っている街でもある。
豊かな自然に恵まれ、大きな海があるこの町に人々は魅了され、都会からやってくる。しかしこの大洗町には夏近くになると、不気味な現象が発生する。
それは、海の海水が太陽の熱に当たることによって海水の水が熱に反応して独自の霧を発生させる。辺り一面は霧だけになってしまい、何も見えなくなってしまう。
サーファー達はこの霧を恐れ、この霧の現象が起きた際には、早く浜辺にあがり海から離れないといけなく、町一帯は霧に囲まれてしまう。その現象はあの世とこの世を繋げる一つの架け橋のようにも思えてくる。
父白鳥圭司がサーフィンが好きで地元大洗町のサーフィンの大会に何度も出場していることもあってか、息子の白鳥拓実に小さい時からサーフィンを教え込み、サーフィンスクールにも通わせる程の熱の入れた教育を施していた。
白鳥拓実は小学生の頃からそんな父のサーフィン教育もあってか、ジュニアのサーフィン大会では何時も優勝を取るなど。輝かしい成績を残し、地元でも有名な程白鳥拓実はサーフィンで名を残していた。
高校生になってからも彼はサーフィンをやり続けていた。学校に行く前には必ず朝の五時頃には早起きして、飯も食わずに大洗町のビーチに行ってサーフィンの練習をするのである。
拓実は朝の五時頃にスマホの目覚ましが鳴り出すと、目を擦りながら起き出し、洗面台に向かって歯磨きをする。適当に自分の身嗜みを整えると、サーフィンスーツに着替えサンダルを履き、サーフボードを持って家を出た。
朝の五時ともあってか、人はちらほらいたが、殆ど人気は無かった。
大洗のビーチについてみると、そこにはまだ朝だというのに、色んな人達で賑わいながらサーフインを楽しんでいた。
「よし、今日もやるか」
サンダルを脱ぎ、海に向かって泳ぎだした拓実はボードを掴み平泳ぎをしながら、波のあるほうに体をあずけ、波が来るのを待っていた。
それから三十分位波乗りしていると、少しずつだが白い靄が目立ちはじめてくる。
拓実には、自分が小学校からやってきた泳よぎの自信があってか周りのサーファー達は浜辺に向かって泳ぎだし、逃げっていった。
「なさけないな」
拓実は余裕な顔をしながらまだ波乗りを続けている。だんだん靄が大きくなるにつれ霧が拓実を被いはじめる。
流石の拓実も方向が分からなくなるぐらいに、霧に囲まれると帰ることはできない。
「まずい、このままじゃ帰れない」
拓実が焦りはじめると、海の上に昔の日本兵が立っていたり、若い少女が海に立っていたりと、様々な人達が立っている。
みな何処か顔は青白く、生きている人ではない雰囲気を纏っていた。
「おい、なんだよこれ。俺変なものなんか見てねぞ」
と、必死に今の状況を否定するが、それでも現実からは目が離せなかった。
どうしていいか分からずただ海に浮いていると、一人の男性が泳いで近寄ってくる。
「おい、こっちだ小僧。早くしないともっと霧が濃くなってくるぞ」
「え、はい」
男性は六十代位の痩せ型で短髪の目が二重の男性で、見た感じこの人はあの世の人ではないと感じた拓実は、その男性に引っ張られる形で一緒に泳ぐのであった。
「こんなんで本当に浜辺まで着くのか」
不安が募りながらも、怖いものみたさの好奇心で一度振り返ろうとしたら、男性が大声で拓実に怒鳴った。
「絶対に後ろを振り返るな。あの世につれていかれるぞ」
と、強い口調で言われた。
「は、はい」
それから何分たったか分からないが男性と拓実は無事浜辺に着くことができた。拓実は安堵する一方、男性は自分の頭を掻きながら言う。
「お前。もう少しであの世に行くところだったぞ。いいかこれから霧が発生したらすぐさま浜辺に逃げろ。まだお前は若い、それともお前自身に自殺願望があるのか」
「ないです。自殺願望は」
男性は軽く頷くと、
「もし、自殺したいという気持ちがあるなら今度は止めない。海はきっとお前を導いてくれるからな」
そう男性は捨て台詞を拓実に吐くと、何処かに消えてしまった。
拓実は内心助けてもらったという感謝と、意味深なことを言われて複雑な感情になっていた。
「まあ、いいや。たぶん格好良くみせたかったんだろう。今日も学校だし、遅れるとまずいな」
気を取り戻し、濃い霧の中、なんとか薄く見える道を頼りに、拓実は自分の家に帰り学校に行く準備を始めるのであった。
"あの日、君は海えと消えた (1)"へのコメント 0件