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チンパンレス

秋山優一

この作品はある心霊ライターが廃虚の病院に一つのタンバリンが置いてあり、謎の怪奇現象を追跡していくというホラー下ネタコメディある。

タグ: ##ユーモア #あやかし #サスペンス #ホラー #ミステリー #哲学 #純文学

小説

5,311文字

あるインターネットの有名な掲示板に心霊現象が多発する廃墟があると、ネットで騒がれていた。
有名な動画配信者もその廃虚に訪れた時に、その廃虚に置いてあるタンバリンを持ち帰ろうとして、車に乗り込んで運転していた途中で、交通事故にあってしまい、入院するはめになってしまうという怪奇事件が起きた。
そこである霊媒師が、「あのタンバリンは呪われたタンバリンで持ち帰たら必ず不幸なめに会う」と、注意したところ、その霊媒師の注意を守るどころか、そのタンバリンを持ち帰っては、不幸な事に会う野次馬が出てくる始末となっていた。
噂は瞬く間に心霊マニアや怪奇マニアと、面白半分でくる若者達に人気になり、タンバリン見たさに来る者が後を絶たなかった。
このタンバリンには深夜二時頃になると空中に浮き、激しくタンバリンが鳴るのである。そのタンバリンの動きはなぜか小刻み上下動かし、なにかを打ち付けてるような動作をする。
この奇妙な動きには、若い女性達は逃げ出してしまい、勇気のある男性は逃げずにスマホで動画撮影しながら生配信をする。
時折この廃虚に美人で若い女性がやってくると、深夜の一時くらいから怪奇現象が起きることがある。心持ちかタンバリンを打ち付けるスピードは二倍か三倍早くなっていて、さらには美人な女性を追いかけまわすという怖い一面もあってか、それを見たインターネットユーザーは〈今日もタンバリン様は喜んでいらしゃる〉と、一部の信者は喜んでいた。
なぜ、美人で若い女性がくると、タンバリンの叩く速度が早くなり、追いかけてくるのか謎であった。
一体この廃虚で昔なにが起きていたのか、又なぜタンバリンが空中に浮き激しく上下叩き、美人で若い女性が現れると、襲ってくるのか色んなオカルト雑誌の編集部達が注目していた。
某所、オカルト雑誌「ガンガン心霊スピリッツ」という雑誌会社があり、オカルトライターの三島成吉が、心霊廃虚と美女を襲うタンバリンの謎をガンガン心霊スピリッツから仕事の依頼があって、受けることとなった。
三島は最初この仕事の依頼がきた時にタンバリンの都市伝説がどうも怪しいと思った。
なぜ、タンバリンは男性ではなく女性に、さらに美女の場合のみ襲ってくるのかと疑問を感じつつ、もしかするとこの幽霊は男性の死霊ではないのかと疑った。
なにか、性的な悩みでここで自殺してしまい、それが怨霊となってタンバリンを使って自分の存在を廃虚に来た人々に、苦しみを理解して欲しく怪奇現象を起こして、アピールをしているのではないのかと考えた。
そしてあの廃虚にはなにか事件性のある出来事があって、なんらかの形で事件が闇に葬り去られてしまい、幽霊自身が訴えてポルターガイストを起こしては、タンバリンを叩いているのではないか、そう捉えることもできる。
とにかく考えれば考える程に、三島の頭の中では謎が残り、まずはここの廃虚に関する地元の聞き込み調査をすることに決めた。

タンバリンが怪奇現象を起こすという場所は某埼玉県の廃病院で、何等かの理由で経営不振に陥り、病院は潰れてしまった。
三島はまずこの廃病院の事について調べるべく、近所のコンビニやスーパーの店員に聞き込みをするも、「さあ、わからないね」と、話そうとしないのか、将又本当に知らないのかもしれない。
さらには近所の図書館でこの当たりの歴史に関する本や資料を読んでも、廃病院の事についての記載は少なく、あまり書かれていなかった。
そこで三島はここの地元の夜の店に行くことで、ディープな地元民から聞き込みをすることに決めた。
夜の八時頃田舎の繁華街に一軒二件と数は少ないが、お店の明かりが灯る。地元の元ヤンキーとかヤクザ風な男達が次々とお店に入って行くのを見て、三島はヤクザ風な男達が入って行くスナック楓に入ることにした。
扉を三島が開けると、カランコロンと大きな鈴が鳴る。すると強面風の五十代のチンピラ風な男が三島を睨みつけ、その連れも三島を異端視するような目付きで三島を睨んでいる。
「あら、いらしゃい。ここじゃみない顔ね」
と、四十代後半の女性が煙草を吸いながら酒を飲んでいる。
「そっちのカウンターテーブルが空いているから、そこに座って」
三島は居心地の悪さから早く帰りたいという気持ちにさせられたが、しかしこのまま手ぶらで帰りたくもないので、ビール一本と適当なつまみを注文する。お店のママが、「はいビールとピーナッツ」と、三島のテーブルに置くと、三島は一口二口と飲みはじめ、軽くピーナッツをつまむ。飲んでいると次第に酔ってきて、完璧に出来上がった状態で、例の廃病院のことについて聞く心の準備ができた。
「あの、すいません。聞きたいことがあるんですが、ここの近くに有名な心霊スポットがあるじゃないですか。昔あそこでなにか事件があったり、ここでの地元だけの噂があったら聞かせてほしいですけど」
三島の言葉に辺りは妙な緊張感が走った。なにか聞いてはいけない事を聞いてしまった、そんな邪悪な雰囲気が辺りを包み込む。
「おい兄ちゃん。一緒に飲もうや」
五十代のチンピラ風の男が自分の席から離れて三島の席に座った。
「ママ、この若いあんちゃんにウイスキーロックで一杯。俺のおごりで」
「はい、分かったわ」
三島のテーブルにウイスキーのロックが置かれ戸惑いながらも、
「ありがとうございます。いただきます」
と、ビールを飲み干した後、チンピラ風の男性から貰ったウイスキーのロックを少し口に付ける。三島はあまり酒に強くないため、直ぐに顔が赤くなってしまい、暫く酒には口を付けられなかった。
「このウイスキー体に染みますね」
と、赤ら顔で言うと、チンピラ風の男性が三島の耳元で呟いた。
「あんたここの地元の人じゃないだろ。なにを聞きに来た。何を探りにきたんだ」
サングラスの奥の目は鋭く光ていて、獲物を狩るような目付きをしていた。
三島は冷や汗を掻きながら、ぼんやりした頭で答える。
「自分はここの有名な心霊スポットに取材に来てまして、廃病院はなぜ潰れたのかという謎と、タンバリンの怪奇現象の事について調べているんです。なにか、差支えない範囲で教えて貰えないでしょうか」
チンピラ風の男は三島を睨らんでいたが、話を聞いた途端に、笑顔で答えた。
「そうか。まあいい。あの廃病院の事か。あの廃病院はヤクザ達がホームレスを無理矢理攫って強制的に手術をして国から高額な保険料を取ってたんだよ。まあ、そこで数々のホームレス達が死んでしまったけどよ。それに摘発が入り医院長は逮捕されてから廃虚になっちまったんだけどよ。今度は暴走族の溜まり場になっちまって、敵対チームのヤツを拉致して集団暴行をしていたという噂を聞いたこともあるな。まあ、ろくな場所じゃねえのは間違いねえな」
「へえ、そうなんですか。物騒なところなんですね」
「まあ、あそこに行くのは物好きしかいねえよ」
「貴重な話ありがとうございました」
「お前が俺らの敵じゃなくて良かったよ」
「敵とは」
「なんでもねえよ。楽しく飲もうや」
それから二時間くらい三島とチンピラ風の男性とママで、三島の取材の経緯で盛り上がり、すっかり出来上がった三島はフラフラになりながら、会計を済ませるとお店を出た。
三島は酔った頭でお店で話したやり取りについて考えていた。こんな田舎の外れでも、闇の力が働いていることをおもい知った。

ある程調べがつき、三島はガンガン心霊スピリッツの編集者の平岡悠一に記事の原稿を送ったら、今度は有名霊能者の工藤愛理と三島と平岡との三人で、心霊探訪をしようという企画が立案された。
三島は最初あのチンピラ風の男性から聞いた話もあってか、あまり行く気にはなれなかった。それでも、仕事をやらなくては干されてしまうので、渋々心霊スポットに行くことにするのであった。
深夜零時にガンガン心霊スピリッツの会社に、三島と工藤と平岡が集合すると、三人は黒いワンボックスカーに乗って、某心霊スポットに行く。
着いたのは深夜一時半頃。暗い夜道を歩きながら、鬱蒼とした竹藪の中に廃病院はあった。
平日ともあってか訪れている若者はいなく、三人だけの足音だけが廃虚に鳴り響く。
霊能者の工藤が鋭い目付きで辺りを見渡す。
「色んな人達がここで死んでますね。しかも惨い殺されかたをしてます」
どんな風に工藤が幽霊を見ているのか分からないが、やはりあの話は本当ばと、三島は納得してしまう。又平岡はいい心霊写真が取れるのではないのかと、嬉しそうな顔でカメラを構えている。
三人は噂のタンバリンが置いてある部屋を探した。
噂のタンバリンが置いてある部屋に着くと、真っ白い壁に建物の劣化で皹が入っていて、今でも崩れそうな外壁に、さらに辺りには枕ぽいクッションが散乱している。綿から緑の苔が生えていて、部屋全体が湿っぽかった。
クッションが散乱している部屋の真ん中に一個のタンバリンが置いてあって、これが噂の呪のタンバリンかと実物を見ると三人は固まってしまった。
「これが心霊現象を起こすタンバリンですね」と、三島が言うと、震えた声で平岡が怖がりつつも、
「いいか。ビビったら負けだ。これは俺達と幽霊との勝負なんだ。いいところを必ず撮ってやるぞ」
三人は暫くタンバリンを見詰めていたが、深夜二時頃になると急にタンバリンが空中に動き出し、激しくタンバリンを叩きはじめた。
「今だシャッターチャンス。よし動画も撮れているぞ。これはいいネタだ」
子供のように燥ぐ平岡に対して、三島と工藤は怪奇現象を目の当たりにしてどうしたらいいのか固まっている。そこで工藤が鞄から御札を出し、霊と対話することを試みることにした。
「あなたは何が未練でここに地縛霊として住み着いてる。話してみなさい」
暫く工藤は黙って霊の話を聞いているのか何回か頷いている。すると、タンバリンの動きは止まり、空中にタンバリンが浮いた状態で霊が何かを理解したのか、工藤は三島と平岡に話はじめた。
「ここにいる地縛霊は十代後半の少年の幽霊で、俺はタンバリンを犯すことで自分を慰めているみたいなの。チンパンチンパン音が鳴る度に、俺はもう童貞じゃねえ。と優越感に浸るものの、生身の女性と性交渉できなかったことを、未練におもっていて成仏できなかったみたいね」
「え、童貞の幽霊ですか。はあ、それは辛いですね」
三島は何だか複雑な気持ちになった。つまりタンバリンを女性として見立てて、腰を一生懸命振ってタンバリンを鳴らしていたのであろう、要は欲情地縛霊ということであった。
チンパンチンパンチンパンチンパンチンパンチンパン。
又激しくタンバリンが動きはじめ、高速で上下に揺れている。
「このままだと悪霊になって逝ってしまうわ。早くなんとかしないと」
工藤は大汗をかきながら考えていた。ふと閃いたのか手を打つ仕草をした。
「今すぐコンビニで蒟蒻を買ってきてください。それとナイフはありますか。もうこれしかおもいつかない」
三島ナイフは持っていないが、ペーパーナイフならもっていることを思い出し、リュックからペーパーナイフ工藤に手渡す。
「ペーパーナイフならあるんですけど」
「もうなんでもいい。早く。彼が逝く前に早く蒟蒻を。なるべく早く」
三島は慌てて車のある場所まで戻り、コンビニを探した。田舎ということもあり、二十分くらいでコンビニを見つけ、店内で太くて板状の蒟蒻を一個買い、直ぐに心霊スポットに向かった。
行って帰ってくるのに四十分もかかってしまい三島は暗闇の中、懐中電灯の明かりを頼りに工藤と平岡のいる部屋まで走った。
工藤達の居る部屋に着くと、平岡は興奮しながら、
「ほお、ほおお。いいぞいいぞ。これが心霊スポットだ」と、狂喜じみた喜びを体で表現し、工藤は心配そうに地縛霊を宥めている。
まったくの混沌の最中、三島は蒟蒻を工藤に急いで渡した。
「買ってきました。今からなにやるんですか」
「見てなさい。こういうことよ」
工藤はパックに包まれたビニールう剥がし、ペーパーナイフで蒟蒻の真ん中に切れ目を入れた。その切れ目を入れた蒟蒻をタンバリンの近くに置いた。
「タンバリンじゃなく、これを使ってみなさい。きっといいから」
するとタンバリンの動きは止まり落下すると、蒟蒻が空中に浮遊する。そして上下に蒟蒻が動き出し、暫く激しく動き出すが、急に動きが止まり浮遊していた蒟蒻が急に地面に落ちた。
「い、逝くううううううううううう。気持ちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
と、若い少年の声が廃虚に響き渡る。
「今の声は」
「きっと少年の地縛霊よ。成仏したんだわ」
「そうですか。それは良かった」
三島が一安心していると、平岡は嬉しそうに本のタイトルを言う。
「童貞幽霊、蒟蒻で成仏。よしこれで行こう」
「ふざけてる場合じゃないんですよ」
「もう夜明けね二人とも帰りましょう」
「はい」
三人は朝日を浴びながら、車に乗り込むと帰って行くのであった。
それからこの心霊スポットではタンバリンの怪奇現象はなくなり、ただの廃虚マニアしか来ない場所になったとか。

この物語はフィクションです。団体、固有の名称や場所は一切作品とは関係ありません。

© 2026 秋山優一 ( 2026年4月16日公開

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