即興小説で書いたものです テーマ:最強の村 小道具:鍋
若い頃・・・25歳だったかなぁ?池袋西武百貨店の販売員を辞めてマスコミで働きたいと思って、いくつかの業界紙(誌)編集部の面接を受けたが、採用してくれる会社はなかった。 そんなときに…
一昨昨日は、船橋職安に行って“職探し”をした。一応スーツを着込んでいるが実は本気で職を見つける気はない。今のところはね。独立したいからさ。適当にやって自由を謳歌して身体壊すってのがいいじゃんかね…
僕とナマコを乗せたバスは15分ほどで現地に到着した。「源泉境バス停」は小さな橋を渡ってすぐだった。バスから降りて橋の上から渓流を見ると、川面にくっつくように垂れ下がったモミジや楓の葉は見事に紅葉…
乳がんで左乳房を失ったナマコを温泉に連れて行きたいと思った。 手術前にはふたりで温泉旅行をすることも多かったのだが、4年前に手術をした後、ナマコを温泉旅行に誘っても「温泉に行っても…
朝、洗濯機が動いて「ウン~ウ~ンウン・・・」と機械的な唸り声をあげている。 僕は、鏡を見ながら歯を磨いている。 鏡の中で歯を磨く自分の姿がブレて二重に見える。子供の頃から乱視なので「いつものこと…
ロシアのロマノフ王朝を退けたロシア革命の余波は、日本にも大きく影響しました。昭和の初期には恐慌、失業増加の不穏な世相の中に共産国家を理想郷として夢を追った若者の中には、本来ならば共産主義に対抗し…
「穴」 朝、歯を磨いていると、鼻の穴がムズムズする。「鼻毛が伸びたか?」と思って鏡に顔を近づけて鼻腔を広げて覗き込む。 鼻毛が長く伸びている様子はないが、鼻の奥から何かが僕を覗いているような気が…
一昨日の金曜日、役場前広場の古傷がとうとう裂けて血を吐いたという。 それが僕らにはとても信じられなくて、隣の静紀ちゃんと申し合わすと(っていうか静紀ちゃんにそそのかされて)、自分たちの眼で確かめ…
本来セットであるべきものなのかもしれないが、今の私にとっては必ずしもそうではないのだ
少し未来のお話
アパートの手前の公園を曲がった時には、そのまま冷蔵庫のない、六畳の、牧夫の廃棄物で雑然とする自分の部屋に帰る気がしなくなっていた。公園の明かりは点いていたが、人影はない。佐々木晴男はアスファルト…
夕闇を過ぎ、暗くなった部屋の中で、ビデオデッキにテープを入れる。古いアニメシリーズの再放送を録画したビデオテープも、牧夫の置いていったモノだった。けれど佐々木晴男は、このテープだけは繰り返し何度…
ゾウガメの想うところのお話です
「言っとくけど、復讐とかじゃないから」 理香は思い出したように付け加えた。それから、佐々木晴男の目をまっすぐ見る。再び視線から逃げようとした佐々木晴男であったが、理香の瞳を見るのは初めてのような…
どこまでその夢と現実の差を受け止められるのだろうか
部屋のドアを開けると、冷蔵庫がなくなったせいか少し広く感じる。 冷蔵庫の置かれていた畳は、他の場所より青い。しかし受け皿から滴った水のせいで、一部が黒ずんでいた。佐々木晴男は冷蔵庫を拭いた雑巾で…
かたんと揺れると、しらすは音楽をとめた。 でもそれは一瞬のことで、すぐにまた音楽は流れ始めた。 かたんと揺れると、しらすは音楽をとめた。 音楽はすぐにまた流れ始めた。揺れる度にしらすは息苦しそう…