黒猫は今でこそ不吉なイメージが付きまとうが、近代以前には幸福の象徴であったという。わたしは一仕事を終え、一軒の「くろねこ」という居酒屋で一杯ひっかけることにしたが、そこで出る飲食物は少し変わっていた。
二〇一九年四月一五日、ノートルダム大聖堂は大規模な火災に見舞われた。同じころ、日本では政府による氷河期世代支援策を行うことが発表され、彼らはその世代を新たに「人生再設計第一世代」と名付けていた。政権の経済政策で貧富の格差は広がり暴動が起こり始めたフランスとは対照的に、日本ではただただ閉塞感だけが社会を覆っていた。
電気とは恐ろしいものである。電気椅子を想像してもらえればそれは容易に分かるだろう。今作はアルゼンチンのバンドKrebsのボーカルを襲った悲劇を基に書いた。
満月の夜に海底人が地上の人間をさらうという言い伝えがある小さな漁村で起こった、一夜の出来事。
日本で唯一の渡り蝶「アサギマダラ」の羽は青と黒の斑紋を持ち、その全長は一〇センチにも及ぶ。彼らは最長で約二〇〇〇キロという長旅を日本列島を股にかけて行うという。
老後の趣味として油絵を始めたものの、妻には家に一日中いる邪魔者として嫌味を言われる。エドヴァルド・ムンクの《叫び》の模写をやりながら、遠い青春時代に親友だった神田に聞いた《叫び》のエピソードを思い出す。
講談師に憧れて上京したマミと、高校の親友だったミサト。初舞台を踏むマミを観てミサトは何者にもなりきれていない、受験に臨む自分の状況に焦る。青春の日々を講談を交えて語った実験的掌編。
子悪魔を見つけた子どもがその世話をする話。それは眠れぬ夜の悪い夢なのか、幼い彼には分からない。
関東大震災直後の朝鮮人虐殺を怒りの詩で表現した萩原朔太郎。ドイツにおけるホロコーストの歴史と食卓の上の名産ワイン。百年の時を経て、歴史と現在を繋ぐゆるやかな思考の先。
鳴門海峡の渦を見ながら渦巻く思考はどこまでも回り続ける。筋のない話の極北に挑んだ意欲作。
亡くなった祖父が生前最後に選んだ旅行先は米国ニューヨークだった。特攻隊にも志願した彼がなぜ敵国だった米国を旅行先に選んだのか。語り手は病床の祖母にその理由を尋ねる。知られざる祖父の想い。
嵐の夜の灯台守は鯨が空を飛ぶのを見た。幻想的な光景を方言を用いて表現した掌編。
千年間、ありとあらゆる果実を実らせる千年果樹の恵みをもとに運営されるジュース工場。工場長は今日も朝から工員たちを見守る。
切れた電灯を取り換えるために向かった家電量販店で切れたはずの電灯が不思議な光を放つ。店員はその秘密について語り始める。
戦後、ソ連崩壊時にモダニズム建築家・灰井によってウラジオストクに建てられた記念碑。老朽化により取り壊しが決まったそれをVRで再現し残す計画を持ち掛けられた弟子は、灰井の真意を知ることとなる。
地底と地上で階級の違う人々が暮らしていた。地底人であることを偽って地上で成功した音楽プロデューサーの男は、地底で新しい音楽を奏でる若者たちを発見する。
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