天使裁きは日本の死刑制度を皮肉っているのだろうか。一人殺すのはセーフで二人ならアウト。殺人の実行犯のみが罪に問われ、殺人計画や教唆は対象外だ。実行犯と殺人教唆との組み合わせなのだろうと見当はついたものの推理がとても難しい。
一見、常木、政崎、天澤、報島、争場の「同盟」グループ内の内輪揉めのようであるが、そこに青岸探偵事務所の四人の助手の惨死の復讐が絡んでいるように思われる。赤城昴という青年は他人と友情を結ぶのが大変に上手く、医師の宇和島も「正義実現」の一点で志を共にしていた。赤城の死後、宇和島は記者の檜森と協力して地道な調査を続け、常木の主治医になることに成功している。檜森は「同盟」の差し金でフェンネルに焼かれて死亡するが、檜森の後輩の伏見が志を継ぐ。また、料理人の大槻はホワイトハッカーの真矢に感謝と尊敬の念を抱いている。この流れから行けば他にもそういう人物がいて「常世島」に入り込んでいたのではないか。そしてそれは誰よりも冷静で有能なメイドの倉早だと思う。「同盟」グループの内紛を宇和島-倉早の「正義」グループ(伏見、大槻は実際には参画していないと思う)がたくみに操る構図の中、天使裁きのルールが話をややこしくしている。
<推理>
常木王凱:
「同盟」グループのメンバーが殺人を計画。実行犯は政崎。この計画を「正義」グループは察知していた。
政崎:
報島がICレコーダーの内容について脅迫することを恐れ、先手を打って殺そうとするも、それを察知した倉早がそれとなく報島と争場に知らせる。争場が小間井からスタンガンを入手して護身用にと報島に渡す。スタンガンで政崎を気絶させた後、報島は左利き用ワインオープナーで政崎の喉を右回しに掻き切って殺害。その後、争場が天使の槍を持ちだし、政崎の喉をぶっ刺しておく。傷跡の証拠隠滅のためだが、天澤を揶揄する意図もあった。
報島:
ICレコーダーで政崎を脅迫しようとして政崎に殺されそうになる。スタンガンのおかげで返り討ちにしたものの、争場の入れ知恵で島内に身を隠す。倉早が密かに世話をするふりをして睡眠薬を飲ませ動けなくなっているところを、天澤が何らかの手段で殺す。殺害動機は脅迫を恐れたため。
天澤:
天澤の懇願に負けるふりをして、倉早はモーターボートがあることや、倉庫にガソリンがあることをおしえてしまう。同時に争場にも天澤が逃走しようとしていることを伝える。争場はスタンガンを持ちだして天澤を無力化し、自分がモーターボートで逃走しようとするも失敗。争場がモーターボートに向かっている間、倉早がロープの殺害装置を仕組んでおいた。その結果、争場は意図せずして天澤を殺害することになった。殺害のトリックは解明できなかった。遺体を井戸に投げ込んだのは誰か?宇和島?
争場:
小間井にスタンガン持ち出しを見咎められ殺害する。意図せずに殺してしまった天澤と合わせて二人殺人となり、結果地獄に落ちた。
小間井:
常木の悪行を止められなかったことに心やましく感じており、常木殺害の犯人の見当がついていたが知らぬ顔をしていた。争場のスタンガン持ち出しも知らぬ顔をしていたものの、殺人が相次ぐに及んで危機感を強め、争場に問いただしたところ殺されてしまった。
他にいくつかの事項が未解明で、考えてみたけれどよく分からなかった。おのれのポンコツ頭を恨むばかりだ。
・青岸の居眠り:談話室の砂糖には睡眠薬が入っていた。青岸が眠り込んでいる一時間の間に何が起こったか?
・伏見を呼んだのは誰か:犯人に仕立て上げるための「同盟」グループの差し金と思われる。「正義」グループもそれを察・知して利用した。少なくとも倉早は伏見が来ていることを知っていた。
・探偵事務所の助手四人は殺されたのか:「同盟」グループ、特に争場の調査力により殺されたと思う。
・常木殺害の夜、政崎の部屋だけが灯りが消えていた意味。政崎単独実行犯だという証拠とするにはちょっと弱い。灯りが点いていればそこに人がいるという証拠にはならない。照明はホテルのようにカードキーによる自動点灯だった?
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