誇り高きカニバリズム。西の拷問官たちは決まって、その勢力に嫌気を感じている。それを信仰している人間は病気を怖がらない。なので、もしも拷問をする時は、精神ではなく肉体に問いかける必要がある。
「皮膚はどこまで切りつけても、しっかりと答えてくれる。息切れをしない」
血液は本人の苦労を表す。臓物が、その日の調子を示している……。
死体性愛の青年が散歩をし始める。すると人間の背後に立ち、目の前の肉塊の最期を必死に予測する。駅でも同じことをする。病院でも同じことをする。他人の背中を勢いよく押したくてしょうがない。だから想像で全てを補う。これは健全な青年の発想だった。しかし青年は、自分が実際に山羊であることを理解していない。
評議会のライアは急ぎ足で廊下のプラスチックを弾く……。彼らは老若男女であり、どの世代も鉄臭さを好む。カビているバイオリンを持った銀色のトランペット演奏者たちの真似事ですら、難なくこなしてしまうほどの技術者揃い。彼、彼女らは椅子に座り円を作り、やがて椅子から立ち上がる……。
「ぼくはずっと、ここに来るべき人間だったんだと思う。昼食のカレーライスはいつでも半分しか飲み込めなかったし、みんなが言う、ロボトミー手術のようなごっこ遊びにも関心がなかった。細胞分裂みたいな日常の中で、どうしても長方形を作り出して、それを胃の中に閉じ込めておくことでしか正式な色彩を認めることがきなかったんだ……。だから、こんなふうに白い服を着たり、同士と呼べる仲間たちと、正当な理由で言葉を交わすことがとても楽しいんだ。
大理石の丸テーブル。参加者は嘲笑だらけだった。
『そういえば、みんなは下着を履くとき、どうして新品タイヤのような臭いを漂わせているの?』ぼくは、いいや……ライアはずっと荷物持ちの任務を行っている。今日だって、持参の紙パックを会長に手渡して、そのまま会長のシワと垢だらけの耳を舐め回した。それでもサバンナのような音楽は見えてこなくて、いつでも黒いアンプがぼくの……ああ、いいや、ライアの耳鳴りになっているんだ。コンクールにだって、もう間に合わないかもしれない。そうやって落胆をしていると、いつの間にか会議室で、どうすれば良いかもわからなくて、地面にある蟲を摘まむ。だからぼくは、こうして全員に香水についても質問をしている……。
『え、もしかして、嫌いなの?』右隣人の葬式屋の女が眉毛を引き上げて挟む……。ぼくにはそれが行きつけのスナックのママの顔を施した衣服に見える。『ああ! 大丈夫だよ、まま……』
酒飲みに詳しい男には、いつもの調子で話しをしてほしい。『まあ、お前だけがガソリンスタンドの出身じゃないってことだ』
蛇みたいな声を持っている左隣人。明らかにこの国の人間ではない顔つきは、いつでも象牙色のハットを被っている。落ちてきた枯葉でさえもスルリと滑ってしまうほどの布の下に隠された頭髪がどうなっているのかを知る人間は、この世に五匹しか居ない。
『もちろん毒蛇に噛まれることはあるかもしれないけど、どうせなら、いつでも地表の騒動に巻き込まれていたほうが良いだろう?』
『その通りだ!』会長が馬券を持ってヤジを入れてくる……。
『良し。例えばアナタが、ピクニックにたどり着いたとしよう。天気の良い日で、持ち物は蛙の素焼き、それに隣人の手首。ほら、アナタも下着を脱ぎたくなったでしょう?』
『でも! ぼくに胃潰瘍の才能はないよ……』
『まあ待て。誰でも最初はそう言うんだ』ハット被りはいつの間にか煙草を吸っている。『でも、一度だけ試してみないか? そうすることで全てがわかるし、何よりスッキリするんだ! まるでスッキリ!!』
そうして大団円をまとめ上げた経験を散らかすと、最後の言い訳としての歓声が全てを包む。『そうだ、そうだ!』ぼくはどうしても、そういう雰囲気の中に居ることができない。まるでヤカンの中に入れられた、黄ばんだペットボトルみたいだから」
ライアが顔を上げると、同時に空間には学校のチャイムのような鐘の音が鳴る。まるで授業終わりの休み時間のような空気感の中で、右隣人はライアの肩をつついた。
「ライア、アンタの脳はトマトになりかけているわ。どうしても木工用の釘が必要なら、いますぐにでもロボトミー手術を受けて、酸味の強いサルサソースに仕立て上げる必要がある……」そこで大理石に御幣を叩きつけた。「はやく! トマトに帰する前に!」
原則として、この超常的な会議に参加している四角形の人々は、トマトを脅威だと思っている。「充電の次に苦手だからね」会長はいつでもレコードのことを気にかけている。……馬券はどこへ行った?
「わ、わかったよ。……じゃあ、ゆっくり脱いでみるよ……」
ライアはそれから唸り声を出しながら、下半身の皮膚を剥がし始めた。まるでセロハンテープをはがすように簡単な作業を、会議参加者の全員の熱い目線を感じながら続ける。「ああ、赤色がケッチャプみたいだ!」
「あっはは。お前はケッチャプか。おれはイチゴジャムを塗りたくった食パンだって叫んだぜ!」大理石が焦げ汚れに侵されている……。しかし室内はどうにもサルサの臭いがする。
ライアの皮膚剥きは太ももから始まり、やがて足首にまで到達した。ライアはすでに痛みを己の体の一部として解釈していた。剥がれた皮膚が足首にまで到達すると、横から差し出されたナイフで皮膚を切り離した。
「おお! これが大吟醸酒……」ライアは大きな皮膚をすばやく丸め、円柱となったそれを口に咥える。血液の鉄の味と、噛みきれない皮膚の触感を舌で楽しむと、それから一気に喉で食道に落とし込んだ。
「ほほほ。素晴らしいですね。まるで未来の守護者のようです。ええ、アンタはもう、大人ですよ」
「あああ、ありがとうございます……」
嬉しそうに会長に両肩をたたかれる。
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