一階の組員詰め所に、金髪モヒカンがいた。
一丁前にボディガード面している。
ステルスで姿を消したまま、一刀両断した。
金髪モヒカンの体が二つに裂けている間に、ブレーカーまで瞬間移動する。
組本部の電気系統を全て束ねる配電盤。
それに拳をめり込ませる。
瞬時に訪れる暗闇。
組本部に落ちる不自然な静寂。
二階への階段脇の部屋には「弾よけ兼鉄砲玉」のヤクザが二十人詰めている。
突然、二つに割れた金髪モヒカンの体。
そして暗闇。
戦闘訓練を積んでいないチンピラ連中は、我を見失って右往左往している。
いくら日本有数の暴力団組織の精鋭とはいえ、堅気への恐喝や、敵対組織への鉄砲玉しか実戦経験の無い連中だ。
破壊は容易。
闇に包まれた詰め所に戻る。
ステルスで姿を消したまま、五人程軽く斬る。
決して絶命・気絶しない程度に。
彼等が悲鳴を上げ、銃を乱射させるために。
効果は適面。
天慈会の時同様、壮絶な同士討ちが始まった。
暗闇に煌く無数のマズル・フラッシュ。
その鮮烈な数だけ散っていく命。
この烈しい光に奪われるなら、命など惜しくないだろう。
ズル賢く物陰に隠れた者だけを破壊。
銃声が止んだ。
虫の息の者が数人いた。
その害虫を駆除して、二階へ移動した。
停電の瞬間、若松は叫んだ。
「親父、上にあがるぞ!」
停電したということは、配電盤がやられたということ。
ということは、ワタシは一階にいる。
そう瞬時に判断した若松。
お見事。
視界が利かない暗闇の中、それでも若松は賢之助を的確に三階へと誘導する。
あらかじめ組本部の構造、逃走路を頭に叩き込んだからこそできる芸当。
抜かりなし。
三階には、十人の護衛が詰めていた。
彼達は、正確に言えばヤクザではない。
神政組と杯を交わしてはいるが、彼等は元々フリーのアサシン(殺し屋)だった。
元アサシンの彼等は、組のシノギは一切やらない。
連絡さえ取れれば、どこで何をしていようが自由。
そして組が極秘裏に暗殺・破壊工作を行う場合に限り、召集される。
この国の闇社会で名の通った彼達を、大金かけて囲っている理由は二つ。
まず、敵対する組に使われるのを防ぐため。
要は、敵に回したくない精鋭の囲い込み。
そして鉄砲玉程度では如何ともしがたい強敵・局面を一撃必殺で打開するため。
ワタシは暗闇の中、三階へと通じる階段を見上げていた。
異形のモノとの融合で得た能力。
それは遥かに人智を凌ぐ。
だが、物事に完璧は無い。
警官のリボルバーで被弾した如きで苦戦を強いられた時。
樹光の予想外の能力で窮地に陥った時。
嫌という程、それを実感した。
目前の階段の上にいる連中。
「彼達をナメてはいけない」
内からの警鐘。
この階段の向こうにいる連中もワタシと同じ。
人間を破壊することが、日常となっている連中。
それは最早、人間ではない。
彼達もワタシと同じ、人外の生き物。
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