拓実に助けてもらったみどりはより一層拓実に対する気持ちが強くなり、二人は帰ってからも電話する時間が多くなった。
それから半年がたった頃。みどりは急に持病もあってか学校に来なくなってしまった。原因は分からないが白血病が多いいことから、あんまり体調がよくなく、謎の咳と熱が下がらないらしく、拓実とクラスの生徒達がみな心配していた。
医者も分からない病気の為、みどりの親も困惑するしか他なかった。
その頃、拓実はみどりに会いたいという気持ちがより一層強くなっていたが、本人が具合が悪いということもあって、暫く電話だけのやり取りを続けた。
それが半年も続いたのが我慢できなくなり、みどりと電話している時に〈たまには顔みたいから会いに行ってもいい〉と、みどりに言ったところみどりは今会えない。と、断われてしまい、会いたい気持ちを募らせながら日々を過ごしていた。
しかし、サーフィンの練習をしている時でも、頭の隅では必ずみどりのことが頭に浮かび練習の妨げになっていたのである。
拓実は学校から帰ってくると、直ぐに私服に着替えてみどりの家に向かうのであった。
急な訪問に追い返されるかもしれないと、拓実は覚悟していた。それから、自転車で何分かしてみどりの家に着く。
拓実はインターホンを押す、そこから二三分位してインターホンからみどりのお母さんの声が聞こえてきた。
「どちら様ですか」
「自分、みどりちゃんの同級生の白鳥というもんなんですけど見舞いにやってきました」
お母さんは、「ちょと待ってて下さいね」と、言ってから暫く待っていると、
「みどり会いたいて言ってるから上がってちょうだい」
何処か、少し怪訝な口調で拓実に言ってるような気がした。
突然の訪問に少し申し訳ないと思いつつも、やはり彼女の事が気になってしかたがない拓実は、覚悟を決めて玄関の門を開けた。
みどりの母親が扉をあけて軽く頭を拓実に下げた。
「拓実君久しぶりね。みどりも随分外に出てなくて、毎日熱が下がらなのよ。もしかしたら拓実君の顔をみどりがみたら元気がでるかもしれないから、話してあげて」
みどりのお母さんは何処か涙目で今にも泣き出しそうな目で拓実を見ていた。
「あ、はい。すいません急に押しかけちゃて迷惑かけます」
「いいのいいの。上がって頂戴」
何処か母親潤んだ声で拓実を家にあげた。
何回かみどりの家に上がったことがあるので、昔の思い出がふっと蘇り、懐かしさがこみあげてくる
みどりの部屋は二階の熊の可愛いマスコットの絵に、〈みどり〉という名前の木製のプレイトが扉の前に飾ってある。
「みどり入るわよ」
お母さんが軽く扉の前で二度ノックしてから扉を開けると、そこには薬で少し太ったみどりの姿があった。
みどりは額に熱冷ましの湿布を貼っていて、布団の中に入っていた。
布団から出てくると、軽く咳をしながら、
「久し振り拓実君」
と、体をふらふらさせながら、勉強用の椅子にもたれかかりながら、にこやかに笑ってみせた。
「ごめん急にやってきて。どうしてもみどりに会いたくて」
「いいの。分かってる。心配かけてることぐらい」
「みどり……」
二人の会話を聞いて、母親は気をきかせたのか、
「まだやることあるから、二人仲良くね」
と、静かに扉を閉めて出ていった。拓実とみどりは暫く言葉が詰まる。
すると、沈黙を破るようにみどりから話しはじめた。
「拓実君。私、もう長いこと生きられないかもしれない」
「そんなこと言うなよ。なんでそんな事が分かるんだよ」
拓実の目元に涙の滴が零れる。それはみどりが本当にこのまま死んでしまうのではないかという悲しみと、今まで一緒に過ごしてきた思い出が走馬灯のようにおもいめぐらすと、これからも彼女と一緒に色んな思い出を作っていきたいという諦めきれない生きる希望と、無惨にも打ち砕かれてしまったという感覚が、より一層拓実の気持ちを苦しめる。
「俺、これからもみどりの側にいたいんだよ。そんな悲しいこと言うなよこれからだよ人生。まだこれからだって」
「ごめん暗い話ししちゃて……」
拓実がどうしていいか分からず泣いていると、みどりは拓実の体に飛びついて泣き出した。
「死にたくない。拓実君とずっと一緒にいたいよ。死にたくない。死にたくない」
拓実の服にみどりの涙が滴る。みどりが必死に生きたいと願う姿に、拓実は自分がなにもできない無力感に一緒に泣くことしかできず、ただ彼女を抱きしめることしかできなかった。
「ごめん俺なにもできなくて」
「いいの。今でも熱で頭もクラクラして目眩がしてる。これが拓実君と恋に落ちてる気持ちだと思いこむと、いくらか楽になる。だから逆に助かってるよ」
みどりは顔を涙で濡れて、息を荒くしながら、真っ直ぐに拓実を見詰めてる。
「ごめん……」
「もう謝らないで。私今、すごく幸せな気分だから」
「駄目だ。俺これ以上こんな気持ちなったら……」
二人は暫く抱擁していた。外の景色が薄暗くなり、鴉の声が消え町の街灯が付きはじめる。
時間は夜の七時を回っており、これ以上拓実は家にいては失礼だとおもい、ゆっくりとみどりを離した。
「帰るね。絶対元気になれるよ。大丈夫」
「ありがとう。またきてね」
拓実は扉のドアノブを握って部屋を出ようとした。すると、みどりが大声で拓実を止める。
「拓実君。好きて言って」
拓実は立ち止まった。涙を流しながら、
「ああ、好きだよ」
と、一言言って部屋を出た。
拓実はみどりの母親に、「色々話ができて良かったです。ありがとうございました」と、お礼を言うと家を出て自分の自宅に帰るのであった。
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