なぜならママからユリやパパに伝わったら俺の計画が漏れちまうからじゃん。あの豚女おしゃべりなんだよな。どうでも良い話を口から連射しまくる性質のクソ女中のクソ女にはうんざりしちまうよ。試しにママの姿を想像してみる。何の感慨もわかないどうでもいいメスの一匹だ。俺は指を拳銃の形にすると想像上のママに向けて架空の銃弾を発射した。もちろん口から発射音を出すのを忘れない。目をつぶってる俺ちゃんの目蓋の裏側でママは額に空いた穴から血しぶきを噴出させてゆっくりと倒れる。こんな子供の遊びをしても俺の怒りは微塵も解消されねぇでやがる。ユリを相手にこのお遊戯に興じるのは何だかとってもとっても心が痛む。俺ちゃんってあんな冷淡な態度を取られてもまだ妹のことを愛してるんだろうか。そりゃ当たり前か、だってたった一人の掛けがえのない代用のきかない最愛の妹だもんね。そんな愛する妹を絶望の淵に追いやって教育してやらなきゃならねぇ。従順な俺の俺だけのペットにしてやらなきゃならねぇ。俺のペットはママとバロ、そこにユリが加わるってわけだ。ママはまったく愛しちゃいねぇがバロのことは愛してる。もし愛猫が寿命で死んだ日にゃ俺は涙を流して嘆き悲しむことだろう。俺ちゃんって奴はやっぱり優しくて繊細は良い男だ。動物を愛する人間がサイコパスなハズねぇ。小心者のゴミカスは猫を殺して楽しむ悪癖があるのさ、俺はそんなカスとは違う。男のなかの男、天才のなかの天才、王だ、神だ、俺こそがこの世界の創造主なんだ、って考えると全能感が全身に満ちてくる。やっぱ俺ちゃんって奴は最高の男だぜ。んでもって次の日、仕事から帰ってきてパソコンを点ける。クソが、夜勤なんて寝ても寝ても眠気が取れねぇんだよ、クソ眠いぜ畜生。やっぱさ、人間ってのはお日様が昇ったら起きてお月様が出てら寝る生活が理想的なのさ。こんな下らねぇ仕事そのうち絶対に止めてやろうと強く思っちゃったね。いや、これは誓いに類する儀式的な何かだ、って大げさに考えてみたところで仕事を続けてる限り現状はまったく変わらねぇ。でもでも考えてるだけじゃ変わらねぇけど行動に移したら変わるのさ、って事実を知ってるとっても賢い僕ちゃん。今日はその現状を変えるために行動に移そうと思う。パソコンのモニターのスイッチを入れると液晶画面がカーテンを閉め切った薄暗い室内に浮かび上がる。広大過ぎる宇宙空間で惑星が光ってるって感じだ。あれーもしかして俺ちゃんの部屋って宇宙だったのー? じゃあ部屋の中心にいる俺ちゃんこそがこの宇宙の神に近い存在なんだ、ってか神そのものだ。なんて唯物論者の俺ちゃんは神の存在なんて微塵も信じてねぇからこんなどうでも良いことに思考を費やしてもまったく意味ないんだけどねん。マウスを操作して隠しカメラで捉えてるパパの部屋の映像を映し出す。ああ、いたいた出勤前にスーツに着替えてやがる。スーツを着用する前に食事すれば服が汚れないのに何故かあの男は着替えてから食事するっていう大バカ者なんだ。次にユリの部屋を映し出し、もう起きてることを確認する。どうやらスマホを弄ってラインでもしてるらしい。仲のいいお友達とコミュニケーションを取ってるんだろう。あのメスガキでも学校では群れて行動してるって考えると笑えてくるぜ。寂しがり屋なのかな、ウサちゃんなのかな、群れねぇと何も出来ねぇか弱い生き物なのかな。俺の愛猫であるバロですら何時も一人で行動してるってのに、人間ってのは何で群れたがるんだろうね、不思議な生き物だな。学生時代の俺は常に一人で行動してて、同級生とは最低限の会話しかしなかった記憶があるんだけどな。孤高の俺ちゃんを見習って欲しいもんだね。あんなメスガキをちょっとでも恐れるなんて俺ちゃんどうかしてたらしい。あんなガキを絶望の淵に落とすことなんて簡単すぎてあくびが出てくるぜ、ってこれ夜勤明けで眠いからだな。あーマジで仕事辞めてしばらく引きこもって遊ぶかね。低学歴だけど有能な僕ちゃんの才能を見抜いて採用してくれる会社はたくさんあるだろうし、そもそも仕事するってこと自体が面倒クセェし、パパが働いてる限り家は裕福だしで、どうでも良くなってきたな。マジでマジでマジでマジですべてがどうでも良い、って投げやりな気持ちになっちゃう時がこの俺にもあるのさ。まぁ俺はそこらの凡人とは違うから、そんな感情すぐに消失しちゃうんだけどねん。砂漠で突如姿を消すみてぇにして、俺の胸のなかにある感情は雲散霧消した。感情なんてまやかしに過ぎねぇ、ただの脳の機能に過ぎねぇ。んでもって超絶に思考が加速し始めてこれから起きる、いや俺の手で起こすであろう行動を想像すると眼球が裏返りそうになって脳内トリップ。薬物なんかに手を出すなんて絶対にダメダメダメダメダメだけど、俺ちゃんはドーパミンやセロトニンなどの脳内麻薬で脳内宇宙旅行が出来ちゃうんだ。なんてなんてなんてなんて便利な脳みそをしてるんだ、これならあの世にいる偉人達も俺を絶賛してくれるに違いねぇ。まぁ偉人になんて興味がないのよねん、ってご機嫌に鼻歌をうたいながらクローゼットを開けて着替え始める。まず魔法少女物のフリルのたくさん付いたファンシーな柄の上着とスカートと女児が穿くようなおパンツを取りだし、全裸になってからそれらを着用する。そして金色でツインテールのかつらを被って準備完了。これは今から行う計画のために俺がネット通販で買ったもんだ。そして妹の部屋から拝借した姿見の前で回転してから自分の頬を指さすってポーズを取ってみる。なかなか似合ってんじゃねぇか、女みてぇな顔立ちをしてっからカツラも違和感なく俺の頭部に収まってるじゃねぇか、肌に張りついた衣装はちょっと窮屈だけどそれが逆に官能的じゃねぇか。んでもって俺ちゃんはドアを開けると廊下に誰もいないことを確認して忍び足で歩いてく。んで目的地に行く前で途中下車して妹の部屋のドアに耳をつけて内部の様子を探ろうとすると物音が聞こえてくる。いかんいかん好奇心は俺ちゃんをも殺すってか、今はこんな事してる場合じゃねぇよ、実際のとこ。それからそれから妹の部屋を通過し、その隣にある、つまりは俺の部屋の隣の隣にあたる部屋に入った。ノックもせず突如部屋にあらわれた俺ちゃんの姿を見てパパは驚く。「お、お前その格好……」突然の俺ちゃんの来襲に驚いてるわけじゃくて、華やかなこの一輪の花を想起させえる可憐な姿に驚愕してるんだろう、って手に取るように分かっちゃう。分かっちゃうんだ。俺は自分の指先を弄りまわしながら眉をへの字にして潤んだ瞳でパパを見上げるっていう仕草をする。「アキラッ!」このクソ中のクソ男はいきなり俺に抱きついてくる。加齢臭がキツくて吐き気を催しそうになるもののそれを堪えながら耳を舐めてやると突然キスをしてきた。俺ちゃんの姿にわずか数秒で悩殺されちまったんだろう。んでもって舌を入れてこようとしたけど、上唇と下唇を硬く閉じてそれだけは阻止しようとしちゃう。こんな中年男とディープキスするなんて死んでも嫌だね、ってもうガキの頃にこいつには色々されてんだけどさ。「アキラッ、アキラッ」俺の名前を連呼しながらチンポコを太ももにこすり付けてくる会社じゃ人望のある変態バイセクシャル。んでもってドアは意図的に開け放ってはるから自分の部屋のドアを開けて出て来たユリにこの状況を目撃されちゃう。ここまでは計算通りだ。ユリはその場に立ちすくんだままじっとこっちを見てる。けどけどけどけど、その端麗なお顔が怒りに歪んでる事実が可視できる。そう俺ちゃんの第三の眼でね。女装した俺ちゃんていう魅力的な好人物に夢中でユリがいることに気づいてないらしく、パパは俺を抱きしめながらチンポコを擦りつけた状態で愛の言葉を囁く。「アキラ、やっぱりお前じゃないとダメだ。ユリなんてどうでもいいからお前に入れたい」そんなにも俺ちゃんの周囲に毛の生えたアナルちゃんが魅力的なのかねぇ、男色家の性的嗜好ってのはよく分からねぇな。「何それ、私はこいつの代用品ってことだったの?」冷めた声、この部屋を凍てつかせるような先の尖った氷の刃物みてぇな声質。ようやくユリの存在に気づいたパパはユリがそこにいても大して驚かなかった。「何だ……ユリか、早く学校に行きなさい」パパのセリフからは娘の存在が心底からどうでもよさそうな雰囲気が滲みでてる。「最低、今までのこと全部遊びだったんだ……」三流ドラマを思わせるユリのセリフが滑稽で爆笑しちゃいそうになっちゃった。そんなセリフ今の日本じゃまったく流行らねぇぞ、我が妹よ。賢さの欠片もない言葉を発した平凡な女子校生に成り下がったユリを華麗にスルーしてパパの手を取るとベッドに向かう。そして俺ちゃんは四つん這いになると尻を突きだした左右に振っちゃう。興奮したパパがまだユリがいるのもお構いなしに俺の身体にのしかかってくる。んでもって一連の行為は行われた。パパが獣になってる間、ユリはずっとドアの前に立ってた。その綺麗な眼球からは涙がこぼれ落ちてたけど、ちっとも同情の念はわき起こらねぇ。専業主婦のママはまだ寝てるハズだけど、もうそろそろ会社に行く時間だろう。「これ以上はダメね、続きはパパが帰ってきてから」わざと声を高めて女みてぇな声質にする俺ちゃん。策士な俺ちゃん。この一家はすべて俺ちゃんの手のひらの上で踊る運命だったんだね。「今日は会社休むか」「こんな事で仕事休むなんておかしいよ」ユリはしぼり出すような震え声で何とかその言葉を発したみてぇだった。「まだいたのか、遅刻するなんて絶対に許さんぞ。さぁ早く行きなさい」ユリが涙を拭いながらその場を去ったら本当に大昔の三流ドラマの一場面だ。あの気丈なユリともあろう人間が、もう化石となった下らなくてつまらない三流ドラマの登場人物を演じる気か。でもでもでもでも現実はドラマとは違いらしい、ってこれ当たり前ね。「ママに言うから」妹よ、それは愚策だ。隠しカメラの映像をママに見せればお前だって無事じゃいられねぇんだぞ。ってことを言ったらユリは俺を睨みつけて来た。来ちゃったんだ。「構わない。パパが私にしたことも全部話してやるっ!」「おいおい、ユリ。あれは秘密だって約束したじゃないか」パパは冷静を装ってるけど、俺とパパが致したこと、自分とユリとの関係がママにバレるのが怖いんだろう。アニメだったら冷や汗を掻いてるみてぇな口調だ。これ以上三流ドラマを観るのが飽きた俺はパンティーをパパのベッドに残して自室に戻った。んでもって自分の布団の上に寝転がって天井をながめる。あーパパとユリの取り乱しかたと言ったら滑稽この上なかったな。あの映像を思い浮かべてるだけでカフェオレが進みそうだぜ。バロが俺の腹の上に乗ってきてノドを鳴らしながら眠る。愛する猫ちゃん、俺の味方はお前だけだよ。んでもって俺ちゃんが眠りこけるまでに大した時間は掛からなかった。長時間眠ってたらしく、目を覚ますと外には星クズが散りばめられた夜空が空を覆ってた。夜は優しい毛布みてぇに地球を包みこみ、人間共に眠る時間だと知らせてくる。あいつらどうなったかな、ユリは本当にママに全部しゃべったのかな、今ごろパパはママに責められてる最中なのかな。どっちに転んだとしてもユリの心はめちゃくちゃだろう、そう、俺ちゃんの鉤爪によってね。あの無表情なユリの顔面に怒りと悲しみが混ざり合った表情が浮かんでたのが俺の笑いを誘う。パパなんてどうでも良いけど、これでユリは俺の物になるかもしれねぇ、計画が完遂すればの話だけどね。でもでもでもでもまだ俺の企みが完成したわけじゃねぇから、ユリが次にどういう態度に出てくるのか、それは期待して待ってるか。んでもって今日は仕事休みだからゆっくりとカフェオレを飲みながらゲームでもしちゃうか。と、ノックの音がしたからドアを開けるとそこにユリが立ってた。「ママに全部話した」開口一番その芸術的な形状をした唇のあいだから発したセリフがそれだ。「あっそ」ワザと素っ気ない返事をする俺ちゃん。何て演技派なんだ。名俳優にだってなれちゃうんじゃねぇの? まぁ芸能人になんて絶対に絶対に絶対に絶対になりたくねぇのさ。あいつら芸能人っていう輩は承認欲求の塊なんだって手に取るように分かるぜ。テレビに出ても出ても出ても出まくっても一時的にその欲求が解消されるだけで、承認欲求ってのは次から次に際限なく湧いてくるもんなのさ。幼児期に親や周りの人間に褒められた経験が無いと大人になってから承認欲求って言う枷を嵌めたまま生きなきゃならねぇってハンデを背負うことになるんだよねん。それに比べりゃ俺ちゃんと言えば事あるごとに他愛無いことをするだけでママとパパが絶賛してくれた。子育て関しては褒められるべき人間だな、あの二人は。毒親に育てられるとどっちが子守してんのか分かんねぇ状況になるってネットで見たことあったっけかな。でもでもでもでも俺とユリの育て方は違うのか、ママとパパはユリをあんまし褒めねぇ。俺がその場面に出くわさなかっただけなのかもしれねぇし、真実は分かんねぇけど、俺がこんな大人になったからユリには厳しく接してるのかもしれねぇ。それじゃ大人になってからも打たれ弱いままの少女から成長できなくなっちまうぞ、マイマザー&マイファザー。もし俺ちゃんがユリの親だったらもっと優しくしてやるのになぁ、なぁなぁなぁなぁ、って感じ。「で、ママは何て言ったんだ?」俺の質問には答えずに顔をうつむけてるユリちゃん。んでその顔をよく観察するために俺は少し上体を倒して表情を覗きこもうと思ったところ、妹は顔を上げて俺ちゃんを見つめる。「ユリ、あんな依存心の強い男は止めて俺と付き合おう」弱ってる所にトドメのセリフをぶちこむ俺ちゃんって奴はなんて容赦のない男なんだろう、って自覚してもいるのよねん。するとユリの顔面から表情が消失して、意志のこもった強烈な二つの瞳でこちらを睨みつけてくる。「依存されるのは嫌じゃない。ただ、依存される相手くらい自分で選ぶ」吐き捨てるみてぇにしてそんな言葉をのたまっちゃうユリちゃんに対する返答はあらかじめ容易されてた気がする。だけどだけどだけどだけど俺はこの時点でなにか言ってもすべて愚策になっちまうと直感で悟って口をつぐんでた。あんな男の何処が良いんだか、一瞬でお前を捨てたクズ男だぞ。俺ちゃんだったらお前を大切に愛用の道具として使って手入れを欠かさねぇぞ。理性で物事を判断したらパパより俺ちゃんの方がずっとずっとずっとずっと優しくしてくれる恋人になるって分かるだろう。「今いま族会議の最中だから、お前も来て」お前って呼ぶんじゃねぇよ、なんてガキ相手に言い返す俺ちゃんじゃないのさ、ってここは余裕を見せておくべきだと思った俺は黙ってユリ付いて行った。リビングのドアを開けるとママとパパがテーブルを挟んで座ってた。パパは堂々と腕を組んで、ママは微笑みながら。すべてが知られた状況なのに二人はやけに冷静じゃね? 「アキラとユリも座って」俺らに気づいたママが手招きするから仕方なく俺はママの横、ユリはパパの横に座った。んでもって開口一番発射したパパのセリフがこれだった。「アキラ、お前ママと寝てたらしいな」「そうだけど、何か文句あんのか?」平然とそう答える俺に対して唖然とするパパの反応を内心で面白がる俺は脳の回路がぶっ飛んでんだろうか。「アキラって何時も激しいのよ。パパとユリもそういう関係だったなんて早く言ってくれればいいのに……」いや、この俺ちゃんよりママの方がよほど狂ってる。パパがユリと俺を抱いてた事実を知ったショックで頭が可笑しくなっちまったんだろうか。でもでもでもでもママは包容力のある人間だから、家庭内で近親相姦が繰り広げられてても平然としてる胆の据わった人物なのかもしれねぇな。ってことはもしかしたらパパよりユリより大物なのかな、うんそうに違いねぇ。俺の内心でママを虫けらから人間に格上げしちゃった。俺の脳内では虫、植物、動物、人間、って順番で格付けしてあるからママは凄まじい出世ぶりじゃん。んでもってママのおかげで家族会議はなごやかに進む。家族会議の内容はどうでも良かったし、発言してんのは主にママ、たまにパパだったけど結論は今度みんなで乱交パーティーをしようっていう事態に落ち着いたらしい。俺は一人で腹を抱えて爆笑しちまった、もちろん涙を流して床を叩きながら笑いに笑ったね。ここでいうみんなってのは勿論ここにいる四人のことだ。どうやったらそんなイカレた結論に華麗に着地するんだよ。提案したのはママでしぶしぶ承諾したのはパパでユリは終始無言で俯いてた、ってことは否定も肯定もしてないって解釈して良いんだろう。んで家族会議は終了となったって訳さ。各自部屋に帰っていくけどユリだけはその場に残って憂鬱そうな顔をしてた。しちゃってたんだ。そんな愛する妹を抱き締めて慰めても良いんだろうけど俺は何もしなかったし言葉すらかけてやらなかった。実際のとこ、この時点で俺はユリの存在なんてどうでも良くなっていたのかもしれねぇな。このまま放っておいたら自殺しそうな勢いを発揮してやがる、そんな重い雰囲気を漂わせてやがる、でも俺ちゃんは何もしてやらねぇもんね。これで俺の復讐は完了したみてぇなもんだ。まぁこんな展開になるなんて予想もしてなかったけどさ、ユリに精神的な打撃を与えただけで俺ちゃん満足満足愉快愉快爽快爽快。んでもって妹をリビングに残して、自室に向かう、途中でパパの部屋から激しいあえぎ声が聞こえてきた。響きっつぅか木霊っつぅか轟音ってかそんな感じの獣の咆哮にも似た声だ。そっと室内を覗くとパパとママが全裸で絡み合ってた。「久しぶりに愛されてママ嬉しそう……」何時の間に亡霊みてぇに俺ちゃんの背後に立ってたユリが静にそうつぶやく。神出鬼没な神秘的な存在から、神秘性ってか化けの皮が剥がれどこにでもいる女子校生に成り下がっちゃったユリちゃん。「俺らもヤルか?」「良いけど」即了承されて呆気に取られるマヌケな僕ちゃん、って訳じゃねぇ。何となくこのメスガキを抱けるって機会が波みてぇに迫ってるって予感はあった。「冗談だよ。お前みてぇなガキと寝るほどロリコンじゅねぇ」突き放すようなセリフを口にするとユリの表情が悲しみに歪んだ。誰でも良いから抱かれたい気分だったんだろうし、俺ちゃんが断るとも思ってなかったんだろう。でもでもでもでもでもでもでもでも俺はユリに対する興味が希薄になってた。これは一時的なものなのどうなのかは分かんねぇけど、平凡な女子校生に執着するほど俺は凡人じゃねぇ。俺がこの一家の、いやこの日本の、いやいやこの世界の、いやいやいやこの宇宙の王なんだ。もし創造主がいるとしたら俺こそがソレだ。まぁ創造主なんて存在はこれっぽっちも信じちゃいねぇんだけどさ。宇宙が出来たのもただの自然現象でそこに何者かの意思が働いてるだなんて到底思えねぇよ。俺はユリをその場に残すと自室に入った。バロが可愛らしい鳴き声を上げて俺ちゃんってう主人を迎え入れてくれる。愛してるぞバロ、なでなでしてやろう。そしてその日から隠しカメラで見るユリの姿はどこか空虚だった。心を無くしたみてぇな表情をしてやがるし、学校も休みがちだ。どうしちゃったのユリちゃん? 精神的に落ち込んでるの? 心に打撃を食らっちゃったの? 爆笑爆笑、も飽きて来たから俺ちゃんは鼻をほじりたい気分でモニターの映像をながめてた。兄妹のあいだの会話も一切ない、ってのはそもそも俺が昼夜逆転してるし会いたいとも思わねぇからだ。心にぽっかりと穴が開いて俺ちゃんもちょっと空虚。んでこういう時にはおしゃぶりかガラガラかオルゴールを堪能しながら浅い眠りに就きたいと思ってた。パパの部屋では毎日夫婦による行為がくり広げられてて兄妹とは対照的に激しく愛し合ってるってのがこの人形みてぇな美しいけど酷く人工的な手に取るように分かる。分かっちゃうんだ。そういや乱交パーティーは何時やるのかな、ちょっと期待してる自分が愚かしく思えてくる。だってあれほど抱きたいと切望してたユリの存在が微塵も魅力的に感じねぇんだもん。俺ってこんなに薄情で冷淡で冷酷な奴だったっけ。カフェオレはもはや必要じゃねぇけどなんとなく惰性で飲んでる。刺激だ、刺激が足りねぇ。退屈だ、退屈で気が狂いそうだ。この世の中の刺激は堪能しつくしたハズなのに、俺はまだ刺激を求めてる。それが人間ってもんだろうし、日々の小さな幸せを見つけて満足するほど悟りを開いちゃいない。快感だ快楽だ悦楽だ。あれは素晴らしい、セロトニンとドーパミンが同時に噴出して頭蓋っていうコップの中で混ざり合ったみてぇな強烈な快感が欲しい。どうしたらそれが手に入るんだ、酒やタバコなんてなるべくもやりたくねぇ俺だけど脳は麻薬的な快楽すら超える刺激を求めちゃってる。この世で一番刺激的なことってい一体なんだ、乱交パーティーもそれに近いかもしれねぇが、まだまだそれだけじゃ足りねぇハズだ。獣じみた俺の欲望を満たす獲物獲物獲物、道具道具道具、オモチャオモチャオモチャ。俺は大きなガキの一種なのかもねん。刺激的な快楽は俺っていう膜に包まれてるけど、その透明なビニールを破って飛び出たくて疼いてやがんの。とりあえず俺は暇を潰すためにゲームをやったりアニメを鑑賞したりしたけどこんなの子供騙しだ。セックスの快感には及ばねぇって分かっちゃいるんだけど、何せ俺ちゃん暇中の暇でね。脳天を突き抜けるような快楽、マグマじみた熱が俺の内部に宿ってて寄生虫みてぇに蠢いてて、でも出口を探してるってわけ。あれー俺ちゃんが覚える快感って寄生虫の一種だったのぉー? そういやソシャゲで課金してたらお目当てのキャラがあっけなく出た。あれほど欲しいと思ってた時は手に入らなかったけど、どうでもよくなったら手に入る。この世界の仕組みは一体どうなってんだ、ってただの確率の問題か。ママみてぇにスピリチュアルなんてまったく信じてねぇけど、パパみてぇに仕事人間じゃねぇけど、ユリみてぇに芸術に傾倒してるわけじゃねけど、俺の血管の中には紛れもなくあいつらと同種の血が流れてる。その血液の色は決して汚れてなくて、美しく澄んだ色をしてるハズなんだ。だって俺ちゃんって奴は純粋な精神性を己のうちに保持しちゃってるんだぜ、透明な血が流れてるに違いねぇよ。手の甲を見ると青黒い血管が皮膚に浮かんでた。なんだ、結局のところ俺の血の色彩はそこらの凡人のものと変わらねぇんじゃんって落胆しちゃいそうになるものの全力を尽くして気力を上昇させて今夜起きるであろう乱交パーティーの模様を思い浮かべるけど上手く想像できねぇ。俺が辛うじて想像できたのはこの前直視したユリの裸体だ。あれほどの神秘性を備えていた雰囲気も今じゃ霧散して透明な空気に溶けて無くなってしまってる。それほど活力の衰退した妹は抜け殻じみた日々を送っちゃってる、ってのが隠しカメラの映像を通して分かる。分かっちゃうんだ。隠しカメラに関してまったく文句は言ってこないし、取り外そうともしねぇからあいつが何を考えてんのかまったく分からねぇってのは相変わらずだけどねん。でもでもでもでもでもでもでもでも俺ちゃんってばユリに復讐出来てハッピーな気分っていう光に心が包まれちゃってるのさ。垢のつまった爪の先端で光の表皮を破って様々な感情が蛆虫みてぇに出てくるわ出てくるわ。俺の感受性は決して損なわれていね。だけど他人の痛みに鈍感なのかもしれねぇ、そこは直した方が良いのかもしれねぇと一瞬だけ思ったが、そんなわずらわしい思考すぐに脳から拭い去っちゃう。俺はユリの部屋からくすねた辞書をケースに入れて妹の部屋に向かった。ご機嫌に鼻歌をうたいながらだ。もちろんお気に入りのアニソンのメロディーだ。この曲はオリコン一位になったオタクだけじゃない、一般人にも認知されてる超有名な曲。んでっもって俺はこの曲のCDを持ってるし歌詞をすべて暗記してるから歌っても良いんだけど何せ音痴だからね。ユリの美声なら上手く口ずさむことが出来るんだけど、もちろんユリの声質が俺ちゃんのノドに宿るだなんてバカげた事態にはならねぇ。俺ちゃんの声は濁声ってわけじゃねぇけど美声ってわけじゃねぇしワイルドな声でもない、クソつまらない平凡な声質だって自覚が多少なくもないのよねん。んでユリの部屋の前に舞い降りた俺ちゃんはノックもせずにドアを開けた。ユリはソファーに身を沈めてぼんやりと空中を眺めてる。俺は彼女が存在しねぇかのようにスルーして、ってかお互いに存在をスルーしてる気がしちゃうけど、とにかく本棚に向かってくと隙間に辞書を収めた。これでこの本棚は完璧になったってわけさ。んでもって隠しカメラはまだ取り外さなくて良いか、って思ってそれには手を付けずにユリの部屋を見まわした。ゴミが散乱してる荒れ放題の情景に俺は冷笑をした。どんな感情が自分の中で渦巻いてんのか、自分にも分からねぇ。何て言ったらいいかこの感情にぴったりとフィットする名前が思い浮かばねぇのさ。喜びも同情も悲しみも憐憫も怒りも憎しみもなくて、何だか経験したことのねぇ未知の感情が胸から全身に波紋みてぇに広がってくのを感じちゃう。俺は確かに、確かに冷笑してたハズなんだけど、それが自分の感情と上手く連結してた表情なのかは今一確信がもてねぇ。興味本位でユリの隣に腰かけた。けどけどユリは何の反応も示さねぇ。つまらねぇメスガキに成り下がっちゃったらしいのよねん。これじゃ植物と変わらねぇじゃん、からかい甲斐ってもんがガラスの欠片ほどもねぇじゃん、無反応きわまりねぇじゃん。俺は背筋を伸ばして欠伸をするっていう猫ちゃんみてぇな仕草をした瞬間、鼻孔に臭気が直撃する。どうやらどうやらどうやらどうやらこの植物人間は風呂にも入ってないく、その身体から生ゴミみてぇな臭いを放ってやがる。夏なんだからちゃんと入浴しようね、ユリちゃん、って注意しようと思ったけどこんな抜け殻に何を言っても無駄だろう。半透明な茶褐色のセミの抜け殻に成り果てちゃったんだね。お前の人生が行き着くところ、ってのはがらんどうな場所なんだ。お前は空虚なんだよユリ、お前は死体とさほど変わらねぇんだよユリ、お前のお前のお前のお前の人生は何の意味もなかったんだよ可愛い可愛いユリちゃん。いや、可愛って形容は世の中の可愛らしいものに対する冒涜か。髪型は乱れてて目は虚ろ、んでもって独り言を終始つぶやいちゃってる妹にかける言葉なんて一切ねぇ。とりあえずこの悪臭から解放されたいから、妹から距離を取る。たっぷり三メートルの距離を置いてから、開け放った窓の奥に吊り下げられてる太陽に目をやった。眩しくて美しいプリズムじみた陽光、何て詩的な言葉が思い浮かんじゃうけど、我ながら下らねぇ表現だなって思っちゃう。詩人になんてなりたくねぇ、ってか世の芸術家には吐き気がするね。お芸術がなんだって? そんなもん俺ちゃんの概念的な銃弾で粉々にしてやるよ、って息まいてみたところで世界中に溢れかえるお芸術は消えねぇ。人間が生き続けるかぎり芸術ってのは消えねぇ、ってのはお勉強なんてしてこなかった俺でも分かる真理だ。なぜ人間共はあれほど芸術っていう化石となった文化に魅了されるんだろうか、俺には到底理解できねぇよ。でもでもでもでもアニメや漫画やゲームといった娯楽が絵画やクラシックや小説に取って代わる時が来るんだろう、そんな気がしてならねぇ。まぁ少数派の懐古趣味の奴らがお芸術を楽しむことはあるだろうけど、芸術なんて破滅だ破滅。んでもって俺ちゃんは室内にただよう臭気を綺麗にするために窓を開けようと足を動かした。んで爪先になにかが当たる。それは家族写真の貼られたアルバムだった。びっしりと所狭しと窮屈に写真が貼られてる。映ってるのは俺とユリが幼少の頃のものだった。兄と妹がビニールプールの中ではしゃいでる、って映像が俺の眼球にぶちこまれる。懐かしさも切なさもない。んでユリちゃんは何を思って家族写真なんか引っ張り出して鑑賞してたんだろうか、って疑問が頭ん中で寿命の尽きかけた豆電球みてぇに明滅しちゃう。鑑賞して感傷に浸るだなてこのメスガキには似合わねぇのさ、って今俺ちゃんって脳内で韻を踏んじゃってたんじゃね? 「お前、今夜セックスする前に風呂に入っとけよ」俺がご丁寧にご親切にご忠告してもやっぱり無反応。物体に話しかけてる気分だよ、まったく。まぁ俺ちゃんの計画の最終工程ってのはさユリと恋人関係になってこいつの身体を堪能し尽くしたあとポイ捨てするってものだったけど、今更ユリと寝るなんてどうでも良い。こんな骸みてぇな状態になるだなんて想像もしてなかったけど、俺ちゃんの復讐は成し遂げられた。成し遂げられちゃったんだ。
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