浄罪、いいや 冠水。

arai

969文字

終わりを嘆いた。漂着した小さなひとみだ/ちいさく震えたけれど背負い切れるわけでもない/砂の器だ

永遠とはなんだろう
『銃槍 血痕 轍 焼跡の花だ。』
『夢幻の内にいる水平線には、
ひどくきたない月影は残存している。』

 

小枝をたたむ 河原になって
氷が覆う 心臓の周りを
何周でも血が循環する

 

もうすぐにみらいと手にかけるのに
億劫にも見送るような真似を施された

 

にごりのおとよ。

 

(キミではないな。)
足を投げ出して
/ただ酔わせて
/あわさった影が隠される。

 

あのてこのて(が)ちらちらとくるおしい(ので)

 

うしろからがくりと頷かせて
空いた口が閉まらないくせに
くちびらはこんなにも熱を銜えさせるのだから

 

肩から釘を打ちつけ
背に花束を拵えたまま
駆け上がることが
難しくもなく
恥ずべきことでもなく
靴紐が解けただけだよと

 

〈冠水の命日 置き去りにした一頁〉

 

積荷を降ろしたあと 焼失した夜光虫の
金色が 今を今を浮遊しつくす
/くぐもった声で
/濡れそぼった顔で
/火照った躰で

 

ふらふらと溢れ出るばかりの 無法地帯の雨が
ほんの刹那を台無しにしたけれど
水車は他意のない 異音を発してはいた

 

終わりを嘆いた。漂着した小さなひとみだ

 

ちいさく震えたけれど背負い切れるわけでもない

 

砂の器だ

 

幾多の山々を越えた少しの荷物が、更フけ
少しずつ輝きを喪っていく
零れていたのだと気付いたときには遅く
火は消えようとしていた。

 

(あきをみせたばかりの ひととせをころす)

 

・片足
・細腕
・碧眼
――戦慄くは口吻
すげ替えるように
片っ端から
罪もないヒトビトを
/鼻先に突きつける荒廃は膿んだ
/引き延ばせない鉄槌は波に餐まれてしまった
/胸懐を超えたしがらみは、大海原の半島に置き去りにした

 

〈いまごろキミは どうなって しまったか〉

 

無垢な躯のまま、
ボクは添い寝していたい。
足掻いた挙げ句、浮腫ムクれた外皮が剥がれ、
線虫で着せられた真っ白いはだかを晒して、
物言わぬ眼孔から はにかんだ緑児が生まれてくるのを
狂ったように見つめていたい

 

のぼせたような木の葉が反射的に降ってくる
千切れ雲から
それを飛び越えるような光が ちりちりと
瞳を焼いていくのを、なによりも
澄み切った 象牙色の骨が
怨めしげに広がっていた
不透明に羽ばたく、みどりにとけてみせて

2023年6月5日公開

© 2023 arai

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