ちょうど薄花色の部屋に、縄で作った大天使の輪が降りる。輪の内側には手招きする温かな泥。それは居間のこたつであり、寝室の布団であるということをぼくは知っている。瞼をゆっくりと下ろすと、それまでの祈りの日々が映写機によって目の前に映し出された。
確信のない希望の祈り。
空虚であることを知った上での脱出の為の祈り。
無関心を装う静かなる祈り。
可視化された音のない言葉を拒絶する祈り。
倒壊寸前の隣人の祈り。
結局のところ他人でしかないことを受容する祈り。
「見えていないんじゃない、見ていないんだ。見ればわかるんだからね」
それは真実ではない!見えない祈りが意味を持たないのなら、見える祈りにどれほどの価値があるだろうか。見てもわからない者の祈りが意味を持たないのなら、見ればわかる者の祈りにどれほどの価値があるだろうか。岩肌に塗りつけた血の祈りを想像する。漆黒のインク溜まりに身を沈める祈りを想像する。
窓辺に小坊主を吊るした。
「明日天気になあれ」
来るはずのない明日の天気を案ずる祈り。祈りが終われば眠くなるので、ぼくは床につくことにした。
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