神さまになりたいの

飯田正也

1,283文字

あのね、ぼく、神さまになれるんだ。

せんせい、あのね、ぼく神さまになりたいの。あのね、ぼく、神さまになって、いっぱいすきなことしたいんだ。

うんん。ちがうよ、学校はすきだよ。ぼく、おかしくなんかないよ。ママもパパも、おまえはなれるよっていってくれるもの。ぜったいなれるんだよ。でも、せんせいにおしえてもらいなさいって、いうんだ。ひどいや、おとなって、こどもだから、おしえてくれないなんて。ね、せんせいどうしたらなれるの?

え、せんせいしらないの? 神さまだよ。ほら、どんなケガやビョウキもなおしてくれるんだよ。それに、どこでもいけるんだ。それに、みんながお金をいっぱいくれたり、おいしいたべものだってくれるんだ。なぜだかしらないけど。うん、いっぱいくれるの。

えっ、いえでもいっぱいたべてるよ。うちのママはせかい一のりょうりにんなんだ。でも、ぼくまだせかいじゅうのりょうりたべてないけどね。

えええと、ええとね。ぼくね、そう、かみさまになってせんせいをぼくのおよめさんにしてあげるの。わらわないでよ。できるんだよ。神さまなんだから。ええと、ぼくは神さまなんだ。

神さまになった、あとにどうするのって?

わかんない、神さまになるとね。わるい人をみんな月にとばして、せかいをみんな、こどものせかいにかえてあげるの。それでね、みんなに、いっぱいおもちゃもあげるの。いっぱいだよ。せんせいはぼくのおよめさんだから、とくべついっぱいあげる。

えっ、そうなの? ふしぎなことばでかかれたおまじないをいうと神さまになれるの。

ほんとう?

ぼくねいちどでいいんだ、ほんとうに神さまになって、空をとんでみたいの、くもよりたかくたべるんだよ。神さまなんだから。

なんだ、せんせい、ふしぎなことばよめないんだ、じゃ、どうして神さまになれるほうほうしってるの?

え、せんせいが神さまなの、うそだよ。せんせい、神さまなんかじゃないよ。みんなしってるよ。もう、うそばっかりなんだから、えっほうとうなの。せんせいは、うそはつかないでしょ。それならみせてよ。ぼくに、いいでしょ? せんせい、ぼく、ひみつにしてあげる。ぜったいだよ。だれにもいわない、もちろんパパもママにもないしょだよ。

せんせい、さっきいったじゃないか、神さまだって、ひどいよ。ぼくにうそつくなんて、ぼくね、せんせいをしんじてたのに、そういえば、きのう、まさゆきくんがぼくのあたまたたいたんだ。ぼくなにもしてないのに。それなのに、きゅうにたたいたんだ。ひどいよ。せんせい、せんせいもまさゆきくんとおなじくらいひどいよ。ぼくをだまして。

いちどだけおねがいきいてくれるの? ほんとう、きょうだよ。いまみせてよ。せんせい、だからぼくすきなんだ。

じゃね、せんせいとぼくでこどものせかいにつれてってよ。できるんでしょ。

えっそうなの、やっぱりできないんだ。せんせい、こまったかおしてる。できないんでしょ。せんせいは、神さまじゃないもの。

いきたいよ。ずっとずっとこどものくにだよ。いっぱい、おもちゃがあって、まいにち、あそべて、だれにもおこられないの。

おまじない、いうの? こえにだしちゃだめなの、へんなおまじない。

2009年5月6日公開

© 2009 飯田正也

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