廊下

朔の日

393文字

君はどの君?

僕はもう君の知らない僕だよ

きっと

もう君も僕の知らない君なんだろうね

そういえば

憶えているかな

まだ僕らが中庭の窓から

頭がやっと出て

外の桜の木が

綺麗に咲いていた頃

君が「貸して」と言ったキーホルダー

僕は頑なに断っていたよね

ねえ

憶えている?

別に貸したくなかったわけじゃないんだ

まして

君のこと嫌いだったわけでもない

そうあれは君のせいじゃない

そんなの分かってるって顔だね

ごめん

あれは君といつも一緒にいたあの子に

理由があるんだ

気付いてないかも知れないけれど

僕はあの子が好きだった

そんなあの子が首を横にふるんだ

毎回

君が「貸して」と僕に言うたび

毎回だよ

僕は好きな子に嫌われたくなくて

君にひどいことをした

僕は僕がいちばん大事だったんだ

君を傷つけたって

僕は傷つきたくなかった

君が泣くまでそのことが正しいと

思っていた

もういないんだ

そんな僕は

だから教えてほしいんだ

君はいつの君?

 

 

2017年4月3日公開

© 2017 朔の日

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


3.0 (1件の評価)

破滅チャートとは

"廊下"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る