明日香の家へ行く。廊下には高さ五十センチほどの大きい花瓶があった。その花瓶に挿された葵の花はひどく赤く、不気味だった。ダイニングキッチンのテーブルで待っていると、明日香が紅茶を出してきた。
リビングからカラカラと乾いた音がした。
「ハムスターが起き出しちゃった。うるさくてごめんね。桜がどうしても買いたいっていうから」
明日香は申し訳なさそうに言うと、再び言葉を続けた。
「桜を特別支援学級に入れようと思ってるの」
「……は?」
突然すぎて話が分からなかった。
「担任の先生から行けって言われた。もう四年生なのに、九九が半分もできないのよ。これってなんかの病気だよ」
「明日香さ、それは違うでしょ。単に勉強の仕方が悪いとかじゃないの」
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