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目を覚ます。手を伸ばしてスマホの画面をつけると明日香から、メッセージが届いていた。急いで支度をして、豊洲四丁目アパートを出た。
晴海通りを渡ってレジデンスタワー豊洲Ⅰに到着。人工の小さな川にかかる橋を渡って、玄関のオートロックの扉を合鍵であける。エントランスへ入ると、広々としたラウンジの床には大理石が敷かれていて、その中央にはベヒシュタインの黒く輝くグランドピアノが置いてあった。ホテルの受付のようなスペースにはコンシェルジュの女がいて、耳に真珠のリングをつけ、玉虫色のスカーフを首に巻き、わざとらしく貼り付けたような笑顔を振りまいていた。
このタワマンの公式サイトを覗いたことがある。「東京を、制する邸」というポエムとともに、ホテルライクな内装を自慢していた。
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