托卵師

サティスファクションセンター(第1話)

眞山大知

小説

22,914文字

托卵――妻が不倫相手ともうけた子を夫の子と騙して生み育てること。その手伝いをする職業が托卵師だ。
医学部を中退した夏樹は、生まれ育った豊洲で友人の佐田に誘われ、「クックーエッグ」という托卵師グループのメンバーになった。タワマンの林立する豊洲で夏樹は憎しみに燃える――幸福で金のあるタワマンの住人が許せない。不幸のどん底に叩き落としたい。
令和日本の階級社会を描く社会派暴力小説!

なぜ綺羅が佐田のアイコスを持っていたのか。なぜ綺羅は答えをはぐらかしたのか。桜の誘拐計画の詳細を考えている間、ずっと心にひっかかっていた。

大門駅の出口をのぼり、浜松町を歩く。白河のジムへ行くと今日は月に一度の休館日だった。扉は鍵があいていた。中に入る。薄明かりのジムで、白河はベンチプレスに横たわり、バーベルを上げていた。

「おお、来たか。座れ」

白河に促され、隣のベンチプレスに座る。

「彼女は元気か?」

「ええ」

2024年6月11日公開

作品集『サティスファクションセンター』第1話 (全2話)

サティスファクションセンター

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© 2024 眞山大知

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