超短編小説「猫角家の人々」その22(怖)

moonkaguya

小説

1,727文字

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実は、米国では、同性愛者は、ストレートに比べて薬物中毒者の割合が2倍以上になるという調査結果が出ている。米薬物乱用・精神衛生管理庁が2015年に行った調査によると、ゲイ・レズビアン・バイセクシャルと自ら認めている人たちの39.1%が、その前年に不法薬物を使用したと明らかにしている。一方、ストレートの場合、17.1%だった、

ストレートの17.1%でも、とんでもなく恐ろしい数字だが、米国の同性愛者の5人に2人が「薬中」だということだ。米国の薬物汚染の深刻さがうかがえる数字だ。残念ながら、日本では、この類の調査は行われていないようだが。

しかしながら、恐らく、日本のレズビアンのシャブ中率は、無視できない高さであろう。なぜ、そう考えるか?レズビアンを大量に養成する機関がある。女子刑務所というところだ。女子刑務所に入所している受刑者のうち、29歳以下では、52.4%、30歳代では53.9%が、40歳代では44.4%が…..覚せい剤取締法違反者なのである。つまり、受刑者の二人に一人はシャブ中ということだ。

女子刑務所の受刑者の「罪状」で、覚醒剤犯の次に多いのが「窃盗」だ。年代によって違うが20-30%を占めている。風俗店の従業員控室で、同僚の鞄の中の財布から現金を抜き取る。財布から銀行カードを盗んで、預金を引き出す。普通に毎日起きている窃盗行為だ。何故、そこまでして金を手に入れたいのか?多くの場合、「シャブを買う金欲しさ」の犯行なのだ。シャブを手にするためなら、何でもやる。もはや、人間ではなくなっているのだ。そんなジャンキーであっても、収監時に覚せい剤反応が出なければ、ただの窃盗犯として収監される。尿検査では、最後の注射から少し時間がたっていれば、覚せい剤反応が出ないことがあるのだ。特に、利尿剤で強制的に排出してしまえば、2-3日で反応は検出されなくなるのだ。ただの窃盗だけでなく、覚醒剤事犯まで加算されれば刑期は長くなる。だから、誰もが黙っている。つまり、覚醒剤犯と覚醒剤欲しさによる窃盗犯を合計すれば、女子刑務所のシャブ中率は、さらに高くなるということなのだ。

そのシャブ中だらけの女子刑務所では、何年もの間、女だけの生活が続く。性欲の処理は、女同士で行うしかない。看守の目を盗んでのレズビアン行為が横行する。ボーイッシュな、宝塚の男役のような受刑者が、受刑者の間で人気を博す。

女子刑務所で同性愛をたっぷり学んだ元シャブ中が、刑期を終えて娑婆に出てくる。また、シャブに手を出す。シャブ中に逆戻りだ。(再犯率は65%程度か。)同時にレズビアンにもなっている。「レズでシャブ中」が増えていく。刑務所が、レズシャブを養成しているわけである。養成されたレズシャブは、市中で知り合ったレズ相手をシャブ中に変えていく。性交渉を飛躍的に魅力的なものに変えるシャブ抜きには、充分に楽しめなくなっているのだ。

覚醒剤を打って性交渉をすると、快感が倍増する。「すぐに逝きやすくなる」ということらしい。だから、新宿歌舞伎町のラブホテルの清掃係の大事な仕事は、ベッドの下に投げ捨てられた覚醒剤用注射器の回収なのだ。とても危険な仕事だ。分厚いゴムの手袋でもしないと、ラブホの掃除などできないのだ。

ちなみに、覚醒剤を摂取する方法は、注射以外に「炙り」もある。アルミ箔の上に覚醒剤結晶を置いて、ライターで炙って煙を吸う。この方法なら、注射痕が残らない。野球の喜代原は、この方法を用いていたようだ。だが、誰もがこの方法を採用するわけではない。静脈注射で、打った瞬間、「シャブシャブ」と来る快感がたまらないというジャンキーもいる。だが、最大の理由は、「炙り」だと、覚醒剤の消費量が倍になってしまうという点だ。1パケ2万円の高額商品だ。金持ちでなければ、「炙り」は継続できないのだ。

猫角姉妹の周囲には男の臭いがしない。それには事情がある。男の臭いはしないが、その代わりに甘いバラの香りが漂っている。女同士の…..。蜜子のお相手は誰であろうか?思いにもかけない「お相手」がいたかもしれない。例えば、肉親とかである。姉妹の周囲には、バラの香り以外に薬物の臭いも漂っているのだ。(続く)

2023年7月10日公開

© 2023 moonkaguya

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