この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第17話)

実琴

小説

1,464文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

「そういえば大事な話って何?」

と私は彼に聞いた。

彼はゴミを捨てにキッチンにいた。

「えっと…」

と言いながらこちらに戻って来ると、突然私の身体を後ろから抱きしめた。

え!何?私は混乱していたが、彼は

「彼女と別れるから、俺と付き合って欲しい」

と言った。

ああ、大事な話ってこういう事か。

しばらく黙っていると

「ダメかな?」

と彼は聞いてきた。

彼の言葉は嬉しかった。今のまま会うことにやはり抵抗はあったからだ。

きちんとして彼に会いたい。そう思った。

「ううん、私も別れるから。お願いします」

と私が言うと

「良かったー」

と更に力を入れて抱きしめられた。

「今はここまでで我慢する」

そう言って彼は私から離れた。

そしてお互い見つめ合い、私はどこか気恥ずかしく笑った。

「今日はもう送るよ」

「うん、お願い」

「今の彼とはいつ別れる?」

「向こうが土日休みだし、次の土曜の夜に話す。やっぱちゃんと会ってケジメつける」

「うん、俺も土曜に会って別れてくるよ」

「うん」

私達はお互いの相手と別れる事を約束してその日は送ってもらい別れた。

でも私には今の彼と別れる前にやらなくてはいけない事がある。

ママにこの事を報告する事だ。

25歳になっても門限はあり、男性とのお泊まりは絶対ダメだと言われている。

自宅の玄関の前で深呼吸をして家に入った。

「ただいま」

「おかえりなさい。今日も遅かったのね」

ママの言葉に萎縮する。私に取ってママの存在は恐怖でしかない。逆らえば怒られる。

それが染み付いて25歳になっても反抗出来ないでいた。でも話さなきゃ。大事な事だ。

「ママ、話があるんだけど」

言ってママの前で正座をした。

「何?」

「実は好きな人が出来て、今の子と別れる。実は今までその人と会ってた」

勇気出してママに言った、すると

「あら、いいんじゃない」

と呆気ない言葉が返ってきた。

でも、それは今の子を気に入っていないからだ。会わせた事があるがママは気に入ることはなかった。

「どんな人?歳はいくつ?」

と色々聞いてきた。

「同じ会社の人で、歳は3つ上」

「いつ挨拶に来るの?」

と、ママは言った。会わせる事が絶対条件だからである。

「いや、お互いに相手いるから別れてからだし…ママに会わせる事言ってないし」

「絶対会わせなきゃダメよ。許さないから」

と釘を刺された。付き合うだけなのに会わせるって…と思いながら私は逆らえないでいた。

「ちゃんとしてから会わすから」

「わかった」

と一応納得してくれたらしい。とりあえずママの件はクリア…次は…

別れ話か…いざ言うとなると結構勇気いるな…でも大田さんと一緒に居るには今の子とちゃんと別れないと。

『今週の土曜、私が仕事終わった後会えないかな?』

とメールを送った。

『会えるよ!』

とすぐに返信がきた。

私が別れ話をするとは思っていないだろうな。

『じゃ、仕事終わる頃に連絡するからこっちに来て』

『わかった!』

彼も片道1時間以上かかる所に住んでいる。

最近の私は大田さんの事で浮かれ彼とは仕事が忙しいと言ってあまり会わないでいた。

彼と付き合いだして1年も経っていない。

人として嫌いではない。趣味も合うし話しやすい。でも男して最初から最後まで恋愛感情を抱く事はなかった。恋愛感情がどういうものかもわかっていなかった。

しかし大田さんに会って、私は人を異性を好きになる事を知った。

彼には申し訳ないがちゃんと向き合って話をしよう。

でも別れ話ってどういう風にするんだ?

25歳まで恋愛経験のなかった私は別れ話をどう伝えるか悩む事になった。

 

 

 

2022年3月4日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第17話 (全28話)

© 2022 実琴

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