この世で最愛で最近な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第15話)

実琴

小説

797文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

「お待たせ!」

私は暗闇の中、車に乗り込んだ。

「大丈夫。お疲れ様」

そう返したの大田さんだった。

「お疲れ様」

そう私達は仕事終わった後、会っていた。

職場の前に釣り堀がありそこは夜になると真っ暗なのだ。車のエンジンを止めていたらよく見ないとわからないぐらい位場所だった。

その後、場所を離れて車の中での会話を楽しんでいた。

ふと大田さんが

「俺、結婚はしないって決めてるんだ」

と言い出した。

「なぜ?」

私はだいぶ大田さんに慣れたおかげか敬語を使わなくなっていた。

「子供の頃、目の前でおふくろが自殺未遂したの見たんだ」

「えっ」

「原因が親父の親族が関係してて、自分が結婚して相手に同じようになって欲しくないのもあるし、幸せな結婚生活を送らせてあげる自信がないんだ」

と少し寂しそうに彼は言った。

「そうなんだ。私もね、ママ見てて結婚に夢は持ってないだよね。ママは2回離婚してるんだけど…これまた複雑で私は自分の父親の顔知らなくて、私が赤ちゃんの頃、父親の暴力で別れたんだけど、父親の方には顔の知らない私のお姉ちゃんとお兄ちゃんが居るんだって。その後、再婚して弟出来たんだけど、義理の父親が騙されて借金抱えて結局離婚。紙でのやりとりだけど別れるなら結婚しない方がいいなと思ってる」

この時の私は本当にそう思っていた。特に嫌だったのが苗字が変わって慣れるまでに苦労したからだ。だからまた結婚で苗字が変わる事もあまり良いとは思っていなかった。

「俺達似てるかもね?」

「かもね」

お互い顔を見て笑った。

ただ会話して家に送ってもらう。

ただそれだけ。でも罪悪感はある。

携帯電話のメール着信が鳴ったので見てみると

『今度いつ会えるの?』

彼氏という関係性の彼からだ。私はその文面を見て溜息をついていた。

ちゃんとしなきゃと頭ではわかっていた。

でも先延ばしにしていた。

大田さんの車が見えなくなって、私はポケットに携帯電話をしまい、家に帰った。

2022年2月27日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第15話 (全28話)

© 2022 実琴

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