この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第16話)

実琴

小説

1,146文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

「お疲れ様です。お先に失礼します」

という声に視線を送ると彼は私にアイコンタクトを送ってきた。

「お疲れ様です」

と私は軽く会釈して返した。

私の仕事も一段落したので

「よし、今日は帰るか」

と同僚に言って、仕事を終えた。

一応責任者の為最後まで帰れないのだ。

事務所の鍵閉めをしなくてはいけないからだ。

事務所の鍵を閉め、私は職場の外に出た。

辺りは真っ暗で少し目線を凝らすと、

あ、車あった!

周りに警戒しつつ見つけた車に乗り込んだ。

「お疲れ様」

と言ってくれたの大田さんだ。

「お疲れ~今日も疲れた」

と私は返した。

今日で仕事終わりに大田さんに会うのは3度目。

ファミレスでご飯、車の中で会話、そして今日。

「今日はどうするの?」

と私は彼に聞いた。

「今日はさ…」

と大田さんは言葉に詰まっている様に見えた。

「ん?どうかした?」

「実は話したい事あって…」

「うん」

「落ち着いて話したいから家でいいかな?」

ん?家?

私の頭の中は一瞬止まった。

「え!」

「コンビニで何か買って話したいんだ」

と大田さんに言われた。

彼は勿論一人暮らしだ。その家に付き合ってない女が行くのはいいのか?いや、良くないよね…

「あ、変な意味じゃなくて…大事な事だから家の方がいいかなって」

彼の自宅まで1時間位かかる。でもママに食事してくるって言ってしまったし、今から帰っても私のご飯はない。

「そんなに大事な事?」

「うん!凄く大事」

と彼は言い切った。

その勢いもあり、彼がどんなとこで生活してるのか気になっていた私は

「わかった。大丈夫」

「良かった~じゃ行こう」

と大田さんは車を出した。途中でコンビニにより惣菜や飲み物を買って、彼の自宅に着いた。

「そんなには綺麗にしてないけど上がって」

「お邪魔します」

私は恐る恐る彼の部屋に入った。

「適当に座っていいから」

と言われたので玄関に一番近い場所に何となく座った。

とりあえず内見。辺りを見渡すと洗濯物が干してあったり布団はそのままで、多分男の人の部屋とはだいたいこんな感じなのかなと思った。

私が物珍しいそうに家の中を見てる間、彼はテーブルの上を片付けていた。

「ごめんね、汚くて」

「いや、大丈夫。そんな気にしなくても」

「男の一人暮らしだからさ」

「彼女さんはここに来ないんですか?」

あ、思わず聞いてしまった。

「彼女、都内だから俺が行く感じだから。それにここに来てまだそんなに経ってないし」

ああ、そういえば言っていたなと思いながらも彼女が来てないという言葉にどこか安堵していた。

「とりあえず夕飯食べようか」

「ああ、うん。私はビール!」

コンビニで買ってきた物をレンジで温め、私は仕事終わりのビールを飲んだ。

「ああ、美味しい!」

「さくらさんって本当にビール好きだね」

「うん、この為に仕事してる」

と彼と笑いあった。

 

2022年3月1日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第16話 (全28話)

© 2022 実琴

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"この世で最愛で最低な君へ"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る