トイプードル

小林TKG

小説

2,873文字

その機能がないから、こういうのしか思いつかないのかなあ。

言わずと知れた、小説とかの投稿サイト『小説家になろう』では、例年の夏ホ冬童に加えて今年は春の推理と秋の歴史っていうのもやるそうです。

 

で、なろうと言えば、毎年夏ホ冬童だけは参加したいと思っていて、

「とりあえず夏ホ冬童だけやってたら、なろうも維持できるなあ」

なんて考えていた私からしてみたら、

 

「余計な事してんじゃねえーーー!」

という感じでした。この春推秋歴の発表に関しては。ですから、これはここだけの秘密にしてほしいんですけど、この春推秋歴に関しては今年だけにしてほしいなって思います。正直なところ。出来たら。出来ましたら。だって新しいことをしたらいいっていうもんでもないでしょう。んで、作品数が増えなかったら、その可能性もあるんじゃないかなって。企画倒れというか。ねえ?そういう可能性もあるにはあるでしょう。多分。

 

ただまあ、毎年夏ホ冬童は一応やってるし、で、それをやってる理由というのも、

「なろうの公式の企画だから」

っていうのがあって。そういう所で一応何かしら書いておいたら、私の気が済むんですね。私の。

「なろうもやってるなあ」

感。

 

破滅派で言えば合評会に話を投げるみたいなもんで。

 

あとはまあ、その、なろうっていうのが私にとって一番最初に登録した所だから、その恩義というかな。いや特になろう側から何かしてもらったわけじゃないけども。でも、ここ、破滅派で言うとスピリタスを投稿させてもらったみたいな。ある日ふとスピリタスっていう話を思いついたものの、なろうにあげるのはちょっとなあ。なんて思って悶々としていたところに破滅派っていうのを見つけて、ここだったら大丈夫じゃないか?破滅派だし。

 

という。

 

っていうのの最初がなろうだったんです。私の場合。最初の最初、しょっぱなのしょっぱな。

「なんか思いついたけど、どうしたらいいんだろうなあ」

なんて思っていたあの頃、なろうが無かったら形にならなかった私の頭の中の色々。それを文字列にして、一応形に出来たのはなろうのおかげ。

 

だから、

「公式っていうんだったら」

一個だけでもなんとか。

 

なんとか、粗末なものでもなんとか。それで私の気が済むなら。

「とりあえずまあ、公式企画に参加したし」

って想えれば。

 

ただ、

 

でも、今まで推理的なものを考えたことがありません。私。

 

あんなもの考えられるわけねえって思ってます。

 

どうやったら思いつくんだって思ってます。

 

そもそもが、

 

興味が無いんです。

 

そもそも。

 

犯人を特定して、犯行の経緯とか、トリックとかを露見させて、犯人に然るべき処罰を与えてやろうとか。

 

探偵じゃないし私。警察じゃないし私。

 

それに推理小説とかを読んでる時も、別に推理しながら読んでるわけじゃないし。

 

ただ、驚きのトリックとか。驚愕の犯行理由とか。驚嘆の犯人とか。驚天動地の結末とか。

 

そう言うのをただ、側で説明されて驚いてる登場人物と同じように、

「ええええ!」

って驚いてるだけ。面白ーいって思ってるだけ。それだけで十分に、適当にストレス解消になるんで。

 

だから、どうしたもんかなあって。

 

春推。

 

で、そんな事を考えながら散歩していますと、駅前のコンビニの前に到着していました。考え事を、春推の事を考えながら歩いていたからいつの間に駅前まで来たのかもよく思い出せませんでした。

 

んで、コンビニの前に立ってそこのコンビニで買ったマウントレーニアを飲んでいますと、

 

「モモ、止まって」

と犬を連れた中年女性がやってきました。犬はトイプードルでしょうか。犬種も興味がないから知りません。

 

「ちょっと待っててね」

んで、女性がそう言うと掴んでいた犬のリードをコンビニの前の車止めのポールに結び付けてコンビニの中に入っていきました。

 

その間も私は春推の事を考えていました。どうしたもんかなあって。

 

するとどこからか、全く見てない、目は開いているけど何も見えてない状態の私の視界の中に、男の人が現れました。

 

男の人は犬の側で何かをやっていました。

 

それからしゃがんで犬を持ち上げたんです。

 

その辺りで、ようやく私はその現象を視界にとらえることが出来ました。私の世界の中で起こってることにピントが合ったというか。意識がそっちに向いたというか。

 

犬のリードはいつの間にかほどけていました。おとなしい犬でした。知らない男、いや知ってる男の人なのかな。

 

だからおとなしいのか。

 

次の瞬間、その男の人が持っていた犬を車道に放り投げました。

 

ワンワンとか、キャインとか、

 

なんか、言ったかもしれません。

 

「ぎゃ」

犬がその時たまたま走っていたワゴンかな。のフロントガラスの所にぶつかってそのワゴンがスピンして後続車がそれにぶつかってワゴンが横転して反対車線の車がまたそれに突っ込んで更にそれに後続車がぶつかって。

 

「モモ!モモちゃん!モモちゃん!」

気が付くとコンビニの袋を持った中年女性が車道に出て叫んでいました。男の人はもういなくなっていました。

 

帰り道、相変わらず春推の事を考えていました。

 

トリックを用いて、密室とかを作って、自分が犯人だとバレないように、工作をして。すごく準備して。万全を期して。決行当日のトラブルにもうまく対応して、立ち回って。犯人じゃないという顔をして。素知らぬ顔で協力したりして。

 

でも、

 

それでも、

 

それでもバレたりするんでしょう?

 

お前が犯人だ!

 

って言われたりするんでしょう?

 

恥ずかしいだろうなあ。

 

その後の言い逃れも恥ずかしいだろうなあ。

 

恥ずかしいって思いながら言い逃れたりするんだろうかなあ。

 

それに比べると、さっきの男の人はどうだろう?

 

もう別にどうでもいいとかそういう感じなのかな。

 

だったらそっちの方がまだ、恥ずかしくないかなあ。

 

警察に聞かれました。

「男はどんな格好でしたか?身長はどれくらい?年齢はいくつくらい?」

 

全く覚えていませんでした。

 

ずっと春推の事を考えていたし、あと、

 

「急にそんな事になるとは思わなかったから」

 

急にあんな。

 

あんなことが起こるなんて。

 

しかし幸いにもコンビニに防犯カメラがあったので、それを確認するそうです。

 

私は解放されました。

 

家に帰る事にしました。

 

帰り道もずっと春推の事を考えていました。

 

 

2022年2月11日公開

© 2022 小林TKG

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

この作者の他の作品

この作者の人気作

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"トイプードル"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る