勝ったのは――生き残ったのはワタシだった。
勝因はただ一つ。
実戦経験。
知識と戦術、初期能力では及ばなかった。
でも、これまで破壊してきた人間達のレベルがモノを言った。
清彦は、無力な人間達。
ワタシは、警官・カルト集団・ヤクザ……。
強敵との死闘で、ワタシの破壊の練度は格段に上がっていた。
清彦は荒い息遣いで、床に仰臥している。
お互い、血まみれ。
ワタシも、立っているのがやっと。
それでも、清彦に歩み寄った。
止めを刺すために。
忌まわしい過去に、決着をつけるために。
「アンタ、クレジットカード会社の社長よね。『ご利用は計画的に』ってやつ? 本当は無計画に、ジャンジャン借りてほしいんでしょ」
倒れている清彦が、それでも薄笑いを浮かべ、ワタシを見上げる。
「親殺しは大罪だけど……君なら本望かな。愛する我が娘に、ね」
ワタシは清彦の下腹部で、日本刀を一閃させた。
清彦の生殖器が切断される。
これで「無計画」に、性交・妊娠させることは不可能。
清彦は口から泡を吹き、体を痙攣させている。
ようやく醜い爬虫類男から、卑しい笑みが消えた。
それは、母とワタシの解放の証。
苦しみながら、死なせる。
それでも母が受けた苦痛には、遠く及ばないけれど。
初老管理人が、散弾銃を構えていた。
「貴様! 清彦様を! いずれは藤堂を背負って立つお方を! お前ら母子は――っ!」
このチンケな管理人に興味は無い。
無視してワタシは尋ねた。
「教えてよ。なぜ急に一族は、母を爆弾扱いしなくなったの?」
「お前の母親のことなんて、どうでもよくなったからだ。清彦様のご尊父も、公共事業の発注激減で権力を失った。それに世界でビジネスを行っている藤堂グループにとって、過去の痴話話など、遺物もいいとこだ」
彼はワタシの戦いぶりを、見たばかり。
死ぬ覚悟はOKだろう。
北関東の奥地で、一日も休むことなく藤堂一族の本家を守ってきた初老管理人。
彼は今日を持って、その任を解かれる。
そして永遠の休息を得る。
形見に、散弾銃だけ貰っておこう。
納屋を出ようとした時、等身大の姿見の鏡にワタシが映っていた。
そこに映っていたのは、一二才の少女ではなかった。
醜く邪悪な異形のモノだった。
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