絶滅者 38

hongoumasato

小説

1,979文字

だが清彦は、絶句するほどの秘密を抱えていた・・・
そして清彦から聞かされる、絶滅者の秘密。

ついに物語は、クライマックスを迎える。

「アンタなんか父親じゃない! 遺伝子や血の繋がりだけで親子だと思っているのなら、大きな愚かな間違いよ! 親子の絆は、そんな目に見えるものじゃない! それは……」

 

「愛、か?」

 

薄ら笑いを浮かべる清彦。

「私は君のお母さんを愛しているよ。だが今の君には分かるはずだ、昔の彼女がどんな風だったか。でも私は感じていた。君の母が私を愛していることを。それを確かめるために、多少乱暴な行動に出たことは率直に謝るよ」

 

不愉快さが過ぎて、嘔吐しかけた。

 

「一族は、私達を離れ離れにした。でも、私は信じていた。彼女と、私達の愛の結晶である君が、きっといつか私の下へ帰ってくるって」

 

考えるより先に体が動いた。

 

背中に担いだ日本刀を抜刀。

 

清彦の額目掛けて、一刀する。

 

問答無用。

 

電光石火。

 

だがワタシの一撃は、清彦の額に届かない。

 

清彦が、ワタシと同じく日本刀を帯びていたから。

 

その刃で、ワタシの破壊を受け止めたから。

 

馬鹿な!

 

清彦は日本刀なんて持っていなかった。

 

少なくとも、ワタシには見えなかった……見えなかった?

 

清彦のステルスは、ワタシのそれを上回っている?

 

「オイッ、小娘! 貴様、清彦様に刃を向けるとは!」

 

いつの間にか、本家の初老管理人が立っていた。

 

徳田とかいう名だったはず。

 

相変わらず駆けつけるのが早い。

 

初老管理人の手には散弾銃。

 

その照準は、ワタシの頭部をロックオン。

 

「徳田、手出しは無用だ」

 

「はっ、清彦様」

 

尊大な態度の清彦に、傅く初老管理人。

 

「驚いた顔をしてるね。ステルスなどの能力は、君だけの専売特許ではない」

 

ニヤリと笑う清彦。

 

蒼白になるワタシ。

 

続く言葉の予想はついたから。

 

「君の指摘通り、私も『絶滅者』だよ。異形のモノと融合もした。君のとは違う異形のモノだけどね。もう一つ、君は気付いてるね? 絶滅者としての能力が、私の方が強いことに」

 

なぜ、ワタシ以外にも絶滅者が?

 

異形のモノは一匹だけじゃない?

 

「星の管理者達――異形のモノのことだ――は狡猾だ。保険をかけたんだよ。一人だけでは、人類を絶滅できないかもしれない。ならば複数人揃えて、人類絶滅を開始させる。それでも絶滅者側が不利になったら、我々がまだ持っていない、凄まじい破壊力を秘めた能力を与えられる算段だ。『私担当』の星の管理者が、教えてくれたよ」

 

ワタシは、黙って清彦の話を聞くしかなかった。

 

すでに刀は下ろしている。

 

「そして人類が絶滅したら、絶滅者も消す。それは簡単なことさ。内側にいる星の管理者が自爆すればいい。そうだ、一つ教えてあげる。星の管理者は、万能じゃない。万能なら自分達で、人類を絶滅させればいいからね。でも彼等には、いくつか特技がある。その一つが、人間の記憶操作なんだ。なぜか星の管理者は、私にはご丁寧に教えてくれたよ。……君は後で、ビックリする」

 

記憶操作。

 

異形のモノとの融合後、隠していると感じた能力がそれか。

 

ワタシは家族の救出にばかり、時間と頭を割いていた。

 

異形のモノが出し惜しみした能力など、考えたことすらない。

 

ワタシは絶滅者や異形のモノに、興味はない。

 

その能力を得られれば良かった。

 

人類を皆殺しにするのではなく、家族救出のための力があればいい。

 

ふと、疑問が湧いた。

 

それはおぞましい疑問だった。

 

「アンタは……アンタは絶滅者としての能力を使ったの?」

 

清彦に問うた。

 

答えは分かり切っていたけど。

 

「無論、使用したよ」

 

涼しげに答える清彦。

 

けれどその目がスッと細くなったのを、見逃さなかった。

 

誰に?

 

どんな風に?

 

その問いは口にできなかった。

 

「君は家族に苦痛を与えた者達に、絶望と死を与えた。私は世間の幸福な家族どもに、同じことをしたよ」

 

ワタシの心中を見透かした清彦の言葉。

 

「幸福な家族? アンタと関係のある人間達なの?」

 

「無い」

 

「な! アンタ、全く自分と無関係な人達を!」

 

「説明するより、見た方が早い。『イメージ』を送るよ」

 

清彦はイメージ流入までできるのか。

 

ワタシの異形のモノは、ケチか無能だ。

2019年2月22日公開

© 2019 hongoumasato

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