液晶画面に映っていたは、ワタシより幼い少女の全裸。
やはり母は正しかった。
PTAの会合で、見事な演技で生徒妊娠をかわした男性教師。
ワタシ今、その教師・山崎のアパートの部屋にいる。
姿は消して。
山崎は変態で、唾棄すべき男だ。
先程、部屋の中を探索した。
山崎は、少女のポスターを貼るような愚は犯さない。
誰がいつ部屋に来てもいいように、だ。
しかし、クローゼットの衣装ケースの奥には、まだ十才にも満たない少女達の全裸の写真集が整然と並んでいる。
ロフトのベット下には、山ほどのロリータもののDVD。
トイレの天井板を外せば、山崎が児童を犯している写真が何枚もコレクションされている。
山崎は悪知恵の働く男だ。
それら児童ポルノを、海外のサーバー経由・不正取得したIPアドレス・フリーメールのアドレスを使って、ネットで購入していた。
商品は全て、郵便局止め。
実際に少女を犯す時も、そうしたサイトを利用した。
売る側も買う側も、お互いに顔を合わせずに済む。
もしワタシがヤクザの手中に落ち、児童買春を行う羽目になっていたら……この醜悪な男に犯されていたかもしれない。
全身に鳥肌が立ち、腹の底からマグマより煮えたぎる怒りが込み上げる。
液晶画面で、虚ろな表情をした全裸の少女達。
それを山崎は狂気の眼差しで見ながら、マスターベーションしていた。
ワタシは吐き気を催した。
交番で六発撃たれた時より、気分が悪い。
必死になって、自分の醜い分身を擦り上げている山崎。
その後ろに立った。
山崎の頭上から、彼が少女を犯している写真の全てを、ヒラヒラと落とす。
ギョッとした山崎が振り返る。
片手は、醜く不潔な分身を握ったまま。
「ご無沙汰しています、山崎先生。PTAでは、母がご迷惑をおかけしたそうで」
冷たい目で見下ろすワタシ。
日本刀はステルスで消してある。
「と、藤堂……!」
驚愕する山崎。
ここにワタシがいることに。
そして報道で、ワタシが危険人物であることを知っているから。
「やっぱり、母の方が正しかったね。学校では紳士面しておいて。先生、理科の教師でしたよね。どうでした、実験準備室で、一二才の教え子を犯すのは? それはそれは、刺激的だったんでしょう?」
無表情になる山崎。
目に何の感情も宿っていない。
彼は狂気に取りつかれている。
この狂人に犯され続けた少女の気持ちに、思いを馳せた。
死後の世界にいる少女の魂を、ワタシの内側に呼び寄せた。
「……せ、先生、や、やめてくだ……さい。お願い……やめて。痛い……痛いよう……」
ワタシは泣いていた。
少女の恐怖と哀しみにリンクしたから。
無残な仕打ちを受ける少女の「イメージ」が、ワタシを支配したから。
少女は何度も犯された。
やがて、妊娠を悟った。
絶望した。
そして校舎の屋上から身を投げた。
家族と、お腹の子供に「ゴメンね……」と謝りながら。
そこで少女の魂は、ワタシから抜けていった。
行き先は地獄だ。
事情に関係無く、自ら命を絶った者は地獄に送られる。
母と同じ、絶望の岸壁にいる。
山崎は下半身を露出させたまま、息を荒くしていた。
目が血走っている。
狂気の炎を隠そうとしない。
「可愛がってやったんだ! アイツも幸せだったんだ! 俺は大事に大事に、大切に大切に愛した。あの 汚れの無い綺麗な体……透明な肌! 純粋な瞳! 俺に犯されることで、さらに増す輝きぃーっ!」
山崎が突然襲ってきた。
ワタシと、自分が犯した少女を重ね合わせている。
ワタシは日本刀を一振りした。
山崎の動きが止まる。
自分の身に何が起きたか、理解できないらしい。
山崎の視線が、ゆっくりと下がっていく。
そこにあるはずのモノが、無かった。
先程まで、自分が握り締めていたモノが。
それは床に無様に転がっていた。
山崎は絶叫した。
股間から迸る流血がそれに拍車をかける。
ワタシは刀をもう一度一閃させた。
それで、山崎は沈黙した。
高給アパートとはいえ、山崎の断末魔の叫びは全ての部屋に届いただろう。
時間が無い。
ワタシは、あらかじめ準備したデジカメを取り出した。
児童ポルノ関係者――変態ども。
今夜から、アイツらは全員震えて眠る。
ワタシはデジカメで撮った写真と動画を、ネットで流した。
流した映像――山崎が生徒を犯している写真。
そして山崎の汚らわしいモノと精巣。
さらに――ワタシの顔。
最後にメッセージ。
「全ての変態どもへ。今後も少女を汚せば、次にネットで流れるのは、お前達だ。山崎と同じくパーツ解体して」
それでも、児童ポルノは根絶されないだろう。
彼達のその趣向は、不治の病。
死の恐怖すらも、彼達を止められない。
性犯罪は「魂の殺人」。
なのに、彼達への量刑は軽過ぎる。
被害者の心の傷が癒えるよりも先に、加害者が社会に放たれる。
そして児童買春を行う者は皆、少女自身も喜んでいると信じて疑わない。
厄介で、そして「絶滅」すべき連中だ。
ネットで顔を流したのが決定打となった。
ワタシは、マスコミと警察に追われる。
メディアは連日、ワタシを取り上げた。
彼達はワタシの破壊を、凶悪な少年・少女犯罪の一環と見なしている。
“有識者”とかいう連中達がこぞって口にする「現代少女の心の闇」。
闇?
ワタシは明るい所にいた。
暗闇に引き込んだのは、お前達人間じゃないか。
遂に、本物の戦争が始まる。
これまでの破壊は容易だった。
だが、これからは違う。
まず、警察。
血眼で自分を追っている。
巡査は拳銃を全弾発砲した。
鑑識の結果、全弾ワタシに命中したことは把握しているだろう。
それでも巡査は、真っ二つにされた。
警察は警官殺しを絶対に許さない。
逃せば「警官を殺しても捕まらないのか」と思い込んだ悪党どもが、次々に警官を殺戮するから。
警察の包囲網と戦闘準備は整っている。
機動隊にある特殊部隊も臨戦態勢のはずだ。
ワタシが一二才の少女とはいえ、もう容赦はしないだろう。
警察以外の組織も侮れない。
すでに自分の顔は知れ渡っている。
関わりのあった者。
ワタシに復讐される覚えのある者。
全員が、迎撃の準備を終えているだろう。
だが、ワタシは戦う。
どんな重武装の相手でも、破壊し尽くす。
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