どうやら亮介おじさんが俺にするつもりだった話しは大きく展開を反れてしまったようだった。彼の当初の予定で言えば、俺を説得して大窪校に転勤させるつもりだったらしい。だが、説得の導入部で思いがけず俺が号泣してしまった所為で、その説得の言葉はやや趣を異にし、空転した。結果として俺は、あべこべに、津々井校に残ることを決意せざるを得なくなった。しかし本当のところ亮介おじさんは、俺を津々井校から遠ざけることで、佳穂ちゃんが自主的に退塾するのを促すという目論見でいたのである。
……そのことに気づいたのは、亮介おじさんの車に送られて自宅に到着した直後であった。部屋に入り、まず口にした水道水の味は、ピシャリと顔にぶっかけられた冷水にひとしかった。
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